2019.2.1【米政府閉鎖解除・ETF再申請】

2019-02-01 17:58[ 松田康生

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Review

米政府解除で上伸できず

今週のBTC相場は軟調な推移。先週金曜日(日本時間土曜日)に米政府閉鎖が暫定解除となり40万円をトライするも失敗。すると目立った材料も無い中、売り安心感からか値を下げ始め、年初来安値となる36万円台を付ける。Bitpointの親会社が証券子会社を設立してSTO業務を目指す事や米交換所Geminiがデロイトからセキュリティーテストで合格、また米運用大手フィデリティ―がカストディー業務を3月から開始するとの報道など好材料が続き下げ止まると、Line子会社LVCへの野村證券の出資やXRP、BCHの上昇などもありBTCも上昇するもハマスがBTCで寄付を募っているとの報もあり、上値を重くした。しかし、前日上昇したXRPやBCHが反落、BTCも軟調な展開となる。その後、政府閉鎖期間中の否認を嫌い取り下げられていたCBOE分のETFが再申請されたと伝わり値を戻すが、その後も上値の重い展開が続いている。

Outlook

35万円トライか

来週のBTC相場は底値を固める展開を予想する。先週は底堅いものの上値の重い展開を予想しつつ、どちらかと言えば上方向と申し上げた。実際は、昨年の安値35万円を前に底堅く、上値も重いものの、下方向の展開となった。米閉鎖解除で上伸できなかった失望感が勝った形だ。そうした中、ETFの再申請にもあまり反応せず、市場は昨年の最安値を伺う展開となっている。大西知生のテクニカル分析でも下方向という結論となっている。暫定的に再開した米政府のつなぎ予算も2月15日までだ。それでも、35万円のサポートは守られると考えている。

なぜBTCを持っているのか

そもそも、今ロングで持ちこたえている投資家や今年もしくは来年の仮想通貨市場の反発を予想していた向きは何に期待していたのか。それは、ETFの承認であり、Bakktの開始であり、結局は個人中心の仮想通貨市場に機関投資家の資金が流入することを期待している。人によっては、BTCでコーヒーが買える日をイメージしている人もいるだろう。即ち、機関投資家の参入と実用面の拡大だ。

機関投資家の参入は遅れているだけ

では、その点が揺らいでいる、もしくは後退しているだろうか。取り下げられたETFは再申請され、Bakktの審査も再開されている。今週はそれ以上に問題とされていたカストディー面で進捗があった。ウィンクルボス兄弟が運営するGemini大手会計事務所デロイトのセキュリティーテストに交換所としては初めて合格した。また大手運用会社フィデリティ―がカストディーサービスを3月に開始予定とし、一部で試験的に顧客に提供し始めていると報道されている。仮想通貨と法定通貨の同時決済の実証実験が日本で始まり、またコールドウォレットから直接取引をする研究も進んでいると聞く。要は機関投資家の参入が無くなった訳ではなく、市場参加者が期待しているよりも遅れているという話で、更にやるべきことは着々と進んでいる。

規制も準備中

もう一つの機関投資家参入のための準備として規制の整備が問題とされるが、これに関しても報道によれば日本で法改正の準備が進んでいると伝えられている。ただ、常々申し上げている様に、これも日本の法改正が予算成立後の4月から6月。その実績を世界に紹介するG20が6月。FATFの報告書もこの頃には出ている筈だ。それから各国が持ち帰って国内法制を整備すると考えると、気の早い機関投資家が入り始めるのが早くても年後半か。このタイムスケジュールも市場参加者と若干ずれているのかもしれない。

XRPの実用化は始まっている

また実用面では、xRapidの利用はまだ13社といえども実際に仮想通貨を用いた送金が始まっている。この方向性は既にFASBや世銀からもお墨付きを得ており、拡大していく方向性は変わらないだろう。ただ、今年中に街中でコーヒー代をBTCで支払うようになるかと言えばやや疑問だ。ここでもせっかちな市場参加者と現実との間にギャップがあるのかもしれない。

昨年12月とは状況が異なる

この様に市場参加者の求める方向に一歩ずつ進んでおり、BCH分裂騒動やテザー問題で仮想通貨への信用が揺るがされた昨年12月とは状況が異なり、相場の底割れは無いと考える。しかし、市場参加者の期待に現実が追い付くには時間がかかり、今年1年はそうした冴えない相場が続くものと考える。

予想レンジ BTC 35万円~45万円

Altcoin

ETH:今週のETH相場は軟調な展開。前週の流れを受け13000円近辺での取引が続いたが、米政府解除後の冴えない値動きにBTCが下落を始めると連れ安となる展開。スケーリング問題を早期に解決しないとプラットフォームとしての役割を他通貨に代替されかねないとの指摘が続いていたが、TRONベースのICOが成功するにあたり、ETHの存在意義が危ぶまれるとの心理も影響したかもしれない。JPモルガンがブロックチェーン技術の応用分野としてトレードファイナンスを挙げたという報道の中でイーサリアムベースのシンジケーションローンが紹介され、またBTCにペッグしたERC20ベースのWBTCがローンチされるなどイーサリアムの有用性が再確認される局面もあり、またBinanceでクレジットカードによるETH購入が可能となったという発表もあり、その後は比較的堅調な推移を続けている。年初来の弊社の見立て通り、2019年に入りイーサリアムのプラットフォームとしての有用性が再確認される場面が増えてきている。ここ2年間のICOブームの様なバブル相場は期待できないが、底堅い推移が予想される。また、Bitpointの親会社が証券子会社を設立するなどSTOを視野に入れた動きも散見される。これでETHが急騰する訳では無いが、こうした期待感もあり堅調に推移すると考える。

XRP:今週のXRP相場は乱高下。HuobiのXRP先物取引開始は近いとのコメントや先日CEOがXRPに恋をしたと発言して話題となった英MercuryFXがxRapidを用いた数百万ドルの送金を計画しているとの発表もあり比較的堅調に推移していたが、仮想通貨が全面安となる中大きく値を崩す展開。リップル社の決算発表で昨年第4四半期にXRPの市場売却分が65百万ドルから88百万ドルに増えていたことも嫌気されたか。その後は31円近辺に低迷していたが、SWIFTがR3と提携するというニュースにSWIFT決済にR3の決済通貨とされたXRPが使用されるとの発想もあってかXRPは急騰した。しかし、SWIFTのコメントを見ると、R3が提供する電子商取引プラットフォームにSWIFTを接続することで、そこで生じた資金決済をSWIFTを通じて行おうとするもので、実はR3とリップル社の接近に焦りを感じ、むしろXRPを排除もしくは既得権延期を守ろうとするものと推測される。実は現在のLCの発行や通知はSWIFTを通じて行われ、またその決済もSWIFTがコルレス間の連絡を担っている。従って、従来はLC電子化の点ではSWIFTとR3はライバル関係のはずだが、そこはR3に譲って、コルレス決済をXRPに代替されるところだけは死守しようとする、いわば肉を切らせて骨を断つ戦略が垣間見える。そうした意味で、SBIの決算発表におけるR3とリップルを融合させるとのコメントにSWIFTはさぞ震えた事だろう。市場はこうした状況をうまく呑み込んでいるとは思われず、今回の提携で急騰し、冷静になって売り戻しているが、今回の提携はSWIFTがR3には白旗を挙げたという意味であり、長い目で見ればXRPにプラスと考える。

BCH:今週のBCH相場は軟調な展開。14000円近辺で推移していたが、米政府閉鎖解除後のBTC下落に連れ安。SV派のクレイグ・ライト氏がBTCはゼロになると発言したことも嫌気されたせいか12000円近辺までの値を下げた。その後は、一進一退を続けたが、5月のアップデートの内容が革新的でBTCやBSVと一線を画す内容とコミュニティーで評価され13000円近辺まで値を戻した。しかし、SBIの決算発表で下らないスプリットで投資家離れを起こしたとされると12000円近辺まで再び値を下げている。昨年の騒動を受け、スケーラビリティーなどBTCの弱点をカバーするだけでは投資家を呼び込むことは難しくなった。分裂による1か月近くの機能不全や51%攻撃リスクというブロックサイズ程度のメリットでは補いきれない弱点を晒してしまったからだ。そうした中、もう一度、BTCと全く異なる通貨を目指すしか生き残る道は無いのかもしれない。そうした方向性が見えるまでは淘汰候補のひとつとして上値の重い展開が続こう。

LTC:今週のLTC相場は軟調な展開。ライトニングネットワークへの期待やHuobiでLTC先物が開始された事もあり比較的底堅く推移していたが、BTCの下落に連れ安する展開。その後は、創始者チャーリー・リーが年内に代替性と匿名性を追加するとしたこともあり下げ止まりを見せた。BTCと似た仕様のLTCはチェーン上に全ての履歴が記録されており、自分が買った通貨のそれまでの履歴が全てついて回る。これを見えなくするのが代替性で匿名性と結びつく。ロゴを変更し独自性を打出す方向に舵を切った故の動きは理解できるが、これは両刃の剣で、匿名性が強まると自主規制ルール上、日本の交換所では取り扱いが禁止される。この点を運営がどこまで理解しているかが心配だ。



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松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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