白旗を挙げた?SWIFTとR3の接続の意味

2019-02-05 18:26[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 リップル

1月30日SWIFTのCEOを務めるGottfried Leibbrandt氏はParis Fintech ForumでSWIFTの決済システムGPIとR3のCordaブロックチェーン上で発生した債権債務の決済システムCorda Settlerとの接続を発表した。これを受けて市場では、Corda Settlerの決済通貨として採用されたXRPがSWIFTネットワーク上でも使用されるのではとの思惑もあってかXRPが急上昇。しかし、その後、SWIFTの意図はXRPの使用というより、R3のXRP採用によりSWIFTが担っていた領域が侵されると考え、それを守るためにR3と提携したという意図が明らかになるにつけ、XRPは反落を見せた。その根拠とされるのはSWIFTのサイト上で紹介された同社の営業責任者Luc Meurant氏のコメントで「分散台帳ベースの取引が開始されても、仮想通貨での決済ニーズはまだ小さく、より早く、安全な法定通貨での決済へのニーズが高い」としている。この様に、弊社が予告した様にR3とリップル提携のインパクトを恐れて、SWIFTはR3に擦り寄った形だ。

取消不能な電文

ただ、この提携の意味はもう少し掘り下げると面白い。まず、この話は、トレードファイナンス(L/C付貿易決済など)の話なのか一見分かり難い。しかし、上記の発言を見れば、SWIFTがXRPに代替されて困るものの話をしていることが分かる。現在、SWIFTが担っている決済は、クリーン送金、トレードファイナンス、為替決済の3つで、そのうちR3が代替しようとしているのはトレードファイナンスだ。しかし、SWIFTが担っている役割はもう一つある。それはLCやLGの発行・伝達だ。銀行が保証書を発行する場合、例えば国内では関税保証や高速料金の後払い、裁判の供託金など、保証書に銀行が支店長印をついて原本が渡される。厳格に代表取締役印が求められる場合には本部の秘書室などに依頼する。ところが、海外で公共工事の入札をする場合などに必要な入札保証や履行保証、または貿易の信用状などを送る場合はどうするか。日本語で書かれた頭取印が押された紙を外国人は相手にはしてくれないし、海外では有効性すら疑問だ。多くの場合は、現地にある支店や指定された銀行に裏保証を行い、現地で有効な保証書を発行してもらう。こうした銀行間での保証書などの発行にSWIFTは使用されている。すなわち、送金に於ける支払い指図と同様、取消しが出来ない電文という役割を担っており、SWIFTとは日本でいう判子をつく行為に似ている。トレードファイナンスにおけるL/CでもIrrevocal Letter of Creditという取り消し不能文言が必須とされている。

LCの電子化は譲るが

即ち、SWIFTがR3と提携したという事は、R3によるトレードファイナンスの電子化に関しては半ば白旗を挙げ、その代わりXRPに決済を代替されることは防ぐ、肉を切らせて骨を断つ作戦に出た訳だ。正確には、送金におけるXRPの使用でさえ始まったばかりで銀行での実績はほぼゼロな状況で、先手を打とうとしているとも言える。R3のDavid Rutter CEOはSWIFT GPIと接続するのは論理的延長だ。国際間決済のスタンダードとなっているSWIFT GPIに接続する事により、コルダ上のブロックチェーン・アプリケーションはSWIFTの銀行ネットワークの恩恵を受けることになろうと上機嫌だ。

ささやかな抵抗

一方で、SWIFTはささやかな抵抗も試みている。サイトではR3のプラットフォームを利用している企業は銀行との決済指示をSWIFT GPIを通じて行うことが可能となる(少なくとも日本で銀行とのやりとりをSWIFT経由で行っている企業は殆ど無い)上に、credit confirmationを受けることが出来るとしている。これは、発行銀行からLCを受け取った銀行が輸出者に通知することをAdviceと呼ぶのだが、そこでconfirmationを付けると言って、通知銀行に保証を付けてもらう場合がある。名前の知らない海外の銀行に代わって、良く知っている国内の銀行に信用を裏付けしてもらう形だ。これをcredit confirmationを受けると呼ぶのだが、そうであるならばSWIFTはR3によるLCは様々な貿易書類の電子化は認めるが、銀行間の通知や保証行為はSWIFTを使用すべしと考えているのかもしれない。したたかというべきか。ただ、仮想通貨に否定的な意見の多いJPモルガンもブロックチェーンが最も採用されるべき分野としてトレードファイナンスを挙げていたが、この分野がブロックチェーン化していく流れだけは、SWIFTも認めている模様だ。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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