【CEO発言から垣間見える大手外資系銀行の仮想通貨へのスタンス】

2018-08-14 16:17[ 松田康生

仮想通貨 暗号資産 トピック

CEO発言から垣間見える大手外資系銀行の仮想通貨へのスタンス】

 

先日、米大手投資銀行のゴールドマンサックスが仮想通貨のカストディー業務への参入を企図しているというニュースが注目を集めました。一方でJPモルガンのジェミー・ダイモンCEOの発言も度々話題となります。両極端の例としてこの両社ばかりが報道されることが多いのですが、以下ではそれ以外の大手銀行のスタンスはどうなのか比べてみました。すると、それぞれの銀行の立場によるスタンスの違いが垣間見えて来るようです。

 

1.米投資銀行系

1)ゴールドマンサックス(GS

GSのブランクファインCEOは昨年から仮想通貨に対する発言が幾度となく報道されており、現在使用されている紙(のお金)にも本質的価値は無いとしてデジタル情報である仮想通貨に関しても「コンセンサスに裏付けされた通貨があってもいい」のではと一定の理解を示していました。今年10月から同氏を引き継ぐ予定のデビット・ソロモン次期CEOは慎重に進めるとしながらも「ビットコインの先物取引を開始すべく準備を進めているほか、他の業務に関しても社内で話している」と市場参加者からは仮想通貨推進派と認識されています。実際、1月に始めた先物の清算業務に加え、トレーディングデスクの立ち上げ、先物市場への参加、やカストディーへの参入(観測)などが報道されており、同社は大手行の中で仮想通貨ビジネスの先頭を走っていると言えるでしょう。




2)モルガンスタンレー(MS


MSの動きはGSと比べてみると興味深いところです。ジェームス・ゴーマンCEOは昨年9月にはビットコインを「投機的だが、そんなに悪くない」と全否定はしない一方で、11月には「それほど注意を払うに値しない」とするなど昨年の時点では明確な態度は読み取れませんでしたが、今年1月にGSが先物市場の清算業務に参入すると、すぐさま同社も追随していました。トレーディングデスクについても、GS5月に立ち上げると、8月に仮想通貨担当を採用し、整備を進めていると伝えられています。トレーディングに関してはMS内でも4月時点で立ち上げを議論しているとの観測記事(ICO Journal)も出ており、GSに追随しているというより歩調を合わせているとも言えるかもしれません。背景には顧客であるヘッジファンド等のニーズの高まりがあるのかもしれませんが、GSを意識している様子は当時の記事からも伺えます。



2.米商業銀行系

1)JPモルガン(JPM

JPMの立場は対照的で、昨年ジェミー・ダイモンCEOがビットコインは「詐欺で」「チューリップバブルより悪質で」もし仮想通貨をトレードしたら「即刻、解雇する」と激しい言葉で嫌悪感を示しました。今年1月にはこれらの発言を「後悔している」としながらも、先日再びビットコインを「仮想通貨には価値がない」とコメントしています。GSのトップとは対照的な同氏のスタンスは銀行の営業方針にも反映されており、2月には同社の発行するクレジットカードでの仮想通貨購入を禁止しました。一方で、同氏もブロックチェーン技術には肯定的で「これは本物だ」とし様々な分野に応用していく姿勢を見せています。

 

2)Bank of America(BOA) 

一方でBOAはもう少し正直な様です。JPMと同調し2月に同社発行のクレジットカードでの仮想通貨購入を禁止したほか、同じく2月にSECに提出した書類で「技術革新により金融機関以外が伝統的な銀行業務に進出し、金融機関がIT企業と競争する状況が産まれており、顧客が投機的でリスクの高い仮想通貨などの提供するサービスを選ぶかもしれない。そうした競争激化が我々の収益を圧迫する可能性がある」と、仮想通貨に対する警戒感を露わにしています。

 

3)CITI

マイケル・コーバットCEOは昨年11月にブロックチェーン技術は素晴らしいとしつつ、中央銀行など中央集権的通貨に対する支持を示し、自らもCiticoinを作成しているとしました。また、上記2行と同様、今年2月には同社発行によるクレジットカードによる仮想通貨購入を禁止しています。

 

4)ウェルス・ファーゴ

少し面白いのは4大商業銀行の一つ、ウェルスファーゴです。CCNの報道によれば彼らは2013年頃から仮想通貨の交換所を自ら立ち上げようと計画していた模様で、しかしマウントゴックス事件で相場が暴落し立ち消えになったと記事は伝えています。それでも2014年に仮想通貨業界にコンプライアンス的な視点を導入しようとする会合を開くなど先進的な動きをしており、彼らの努力が実っていれば世界は変わっていたのかもしれません。そうしたDNAがあったせいかは不明ですが、4大商業銀行のうち上記3行が今年2月にはクレジットカードでの仮想通貨売買を禁じたのに対し、同行が禁じたのは6月に入ってからでした。



3.欧州系ユニバーサルバンク

1)バークレーズ(BCL

欧州系はどうでしょうか。この分野ではバークレーズ(BCL)が進んでいる様です。公式には否定されていますが、GSに続いてトレーディングデスクを立ち上げる準備をしているとの観測が絶えません。ジェス・スターリーCEOは今年5月に仮想通貨は金融革新の最先端技術という側面がある一方で、銀行が関わりたくないような活動に利用される可能性もあると指摘しています。銀行・証券を分けるグラススティーガル法が廃止されたとはいえ、歴史的経緯からアメリカの銀行は投資銀行と商業銀行と色分けされますが、欧州はユニバーサルバンクとして、両者の垣根がないことが特徴で、投資銀行として投資家の高まる仮想通貨関連サービスに応えたい一方で、商業銀行として技術革新を脅威に感じる気持ちも現れています。

BCLは大手交換所Binanceに口座を提供するなど仮想通貨業界寄りの姿勢を見せています。大手の商業銀行は仮想通貨交換業者への決済サービスの提供にネガティブで、ウェルスファーゴに取引解消を迫られた大手交換所Bitfinexが今年の2月にオランダのINGで口座開設に至ったという報道がありましたが、これまでの流れから十分理解できる動きです。

 

2)HSBC

次に別の意味で進んでいる同じ欧州系のHSBCの動きをご紹介したいと思います。同行は欧州系のユニバーサルバンクとして投資銀行・商業銀行の二つの顔に加えて、香港における発券銀行、いわば中央銀行の代理のような顔も持ち合わせています。そのHSBCは今年5月に世界初のブロックチェーン技術を用いたトレードファイナンスを行ったと発表しました。詳細は不明ですが、穀物メジャーであるカーギル社がアルゼンチンからマレーシアに大豆に輸出する取引で、マレーシアの輸入者の取引銀行が発行した電子LC付輸出手形をカーギル社の取引銀行が買取ったものと思われます。この発行銀行と買取銀行のいずれか、おそらくは両方がHSBCだったと推察されます。XRPを利用した海外送金の実証実験が進んでいますが、ブロックチェーン技術が普及した世界では単純な海外送金に銀行が仲介しなければならない必然性はあまり感じられません。ただ、今でも多く行われている信用状付き貿易取引では船荷証券やInvoiceなど複雑で書類がかさむだけでなく、銀行による信用創造によって成り立つ世界なので、同じ外為取引でも単純な送金とは性質が異なります。こうした先進的な取り組みに成功した背景として、シンガポール通貨庁と香港金融管理庁との連携があり、両者と密接な関係を持つ同行ならではの取組だったのかもしれません。



4.最後に

このように、仮想通貨に対するスタンスはアメリカの投資銀行と商業銀行、欧州のユニバーサルバンクといった歴史的経緯や抱えている顧客層によって温度差があるようです。機関投資家を顧客として抱える投資銀行は、顧客のニーズの高まりに合わせて仮想通貨業務に参入の準備を進めている様です。一方で、仮想通貨が提供する決済機能が潜在的競争相手となる商業銀行は、ブロックチェーン技術も、できれば非中央集権的でない利用法を目指したいという思惑が見え隠れします。両者を抱える欧州のユニバーサルバンクはその中間でバランスを取った取り組みを目指している様です。

仮想通貨の決済機能と機関投資家の参入が大きなテーマである市場参加者としては、機関投資家を顧客として抱える投資銀行の動きに目を光らせていけば良いのだと思われます。但し、商業銀行といえども投資銀行部門を抱えており、彼らのスタンスも微妙に変化していくことが予想されます。






 

 

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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