米一般教書演説と英離脱期限延期報道

2019-02-06 19:26[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

本日、日本時間11時にトランプ大統領の一般教書演説が行われた。この演説は仮想通貨市場だけでなく、世界の為替や株式市場の注目を集めたが、小職の約20年に渡る相場人生の中で、米大統領の一般教書演説がこれほど材料視された事はあまり記憶にない。その理由は言うまでもなく、過去最長を記録した米政府閉鎖が15日の暫定期限後に再開されるか否かが金融市場だけでなく世界経済の懸念となっているからであろう。

政府閉鎖に係る焦点を簡単におさらいすると、トランプ大統領はメキシコとの国境に壁を建設する費用を予算に計上しようとしたのに対し、民主党はこれに反対、結局、2月15日までの暫定予算を通すことで閉鎖は一旦解除された。これに伴い、取り下げられていたVanEck分のETFが再申請された事は記憶に新しい。また、大統領には緊急事態を宣言して議会の承認を得ずとも壁建設費用を捻出することは可能とされている。但し、この場合は、野党と深刻な対立を残す形となり、壁は建設できるが政府閉鎖は再開・長期化するおそれがあった。

これを受けての今回の市場の反応だが、まず日本時間の早朝にBloomberg等から緊急事態宣言は見送られるとの観測記事が出回り、与野党の対立が深刻化する事態は避けられるとの安堵感もあってドルは買われ、BTCも底堅く推移した。しかし、演説直前になってホワイトハウスから演説の抜粋が公表され、壁建設に対する道義的責務(moral duty)と国境の壁をモラルに反していると批判した民主党のペロシ下院議長に反論している事が伝わると演説開始となる11時を待たずBTCは37.5万円近辺から36万円台へ下落した。その後、相場は落ち着いている。結局、2月15日以降どうなるかは分からない、元の状態に戻っただけだ、そう解釈したのかもしれない。

さはさりながら、この一般教書演説から読み取れるものはないだろうか。第一にトランプ政権は壁建設に関して妥協するつもりが無さそうだということだ。当初は外交問題が主だと言われていたこの演説の2割以上(筆者調べ)が国境問題に費やされており、この問題を相当重要視していることが伺える。中国に関するコメントはその半分以下だ。次に注目しているのが、インフラ投資に触れている部分だ。「議会がインフラ法案を通したいのは知っているし、私も協力したいと思っている」この明かに国民に対して発せられたもので無いメッセージの意図するところは、民主党議員に寝返ってくれれば選挙区に橋でも道路でも作るという呼びかけではないかと小職は考える。すなわち、マンハッタンの不動産王である交渉上手のトランプはこう呼びかけていれば、最後は野党から寝返りが出てくると踏んでいるのではないか。そうであれば、今のところトランプサイドが折れる様子は無く、しばらく睨み合いが続くものと考える。それが、残り10日間で決着するかは不透明だが、もう暫くは仮想通貨相場において上値の重しとして機能しそうだ。ただ、解決時の相場の反発にも要注意だろう。

なお、英テレグラフ紙によれば、イギリスのEU離脱期限を3月29日から5月24日まで8週間延期する案が閣僚間で密かに協議されているとされた。事実であれば時間稼ぎに過ぎないといえども合意なき離脱の可能性が減ることで、仮想通貨の逃避買い需要の減退となるかもしれず、あわせて相場の重しとなっていることを付け加えたい。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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