【ETF 承認は「いずれ」か「2020 年以降」か】

2019-02-08 18:05[ 松田康生

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Review

一般教書演説・EU離脱期限延期の可能性

今週のBTC相場は軟調な推移。週前半はカナダの交換所QuadrigaCXが創業者の死去によりコールドウォレットから多額の仮想通貨の引出が出来なくなった事件もあり上値を重くしたが、Twitter CEOの応援コメント等もあり底堅く推移した。注目の米一般教書演説で非常事態宣言により壁建設資金は確保されるも与野党対立により政府閉鎖に再突入する最悪の事態は避けられたとの見方もあり堅調に推移するも、壁建設は道義的責務と譲らない姿勢を見せたことで暫定期限の15日までの解決は難しいとの見方もあり値を崩し年初来安値を更新。また、英EU離脱交渉で期限を3月29日から5月24日に延期する案が密かに閣僚間で話し合われたことで、合意なき離脱で逃避資金が殺到する事態には至らないとの見方で売られ、年初来安値を付けた。その後、一旦は反発したが、CNBCコメンテイターのブライアン・ケリー氏のETF承認は2020年とのコメントもあり値を下げている。

Outlook

米政府再閉鎖次第だが

来週のBTC相場は15日に期限を迎える米政府再閉鎖の有無次第だが、上値の重い展開を予想する。先週は「底値を固める展開」を予想した。即ち、政府閉鎖解除とETF再申請で上抜け出来なかったので、今度は35万円をトライする展開となるが、35万円はサポートされると考えた訳だ。予想通り、年初来安値を更新したが35万円を割れていないのだが、まだ底を固めたとは言えない状況が続いている。

米政府閉鎖が痛い理由

今週の展開で意外だったのは、実はトランプ大統領の一般教書演説前に下値をトライして、逆に演説を契機に与野党の歩み寄りが見られ、2月15日以降も米政府は閉鎖されずETFもBakktの審査も継続されるという見方から反発する展開をイメージしていた。実際は、その前にSECのロバート・ジャクソン理事のインタビューのリーク記事でいずれETFは承認されると伝わり期待感が高まったが、QuandrigaCXの話もあり上値は重く推移していたところ、演説を聞いてみたら、15日までの歩み寄りは難しく政府再閉鎖の可能性が高まってしまい、加えてVanEck社関係者とCNBCに出演したブライアン・ケリー氏がETFの承認は2020年以降だとし、期待感が吹き飛ばされた形となっている。この2019年中にETF承認は無いというのは弊社の見通し通りだが、市場参加者はもう少し前を期待していたのではないか。

何故、米政府閉鎖に注目するのか

ここで少し寄り道をして、相場の分析とは何か考えてみたい。一般に相場の分析はテクニカル分析とファンダメンタルズ分析に大別される。前者は全ての材料は価格に織り込まれている、歴史は繰り返すの2点を前提に様々なアプローチがある。弊社では為替のテクニカルアナリストランキングで長年1位を続けた大西がマトリクス投資法による分析を提供しており、また他でも様々な分析が出回っている。一方でこの市場においてファンダメンタルズ分析はあまり目にしない。まず株や債券の様に理論価格(のようなもの)が存在して割安割高を判断することは難しく、一方で為替の様に各国の経済状況や金融政策に左右されることも少ない。即ち、何が材料となり、何で動いているのか、教科書的な定説が存在しない訳だ。そこで弊社ではその材料による分析に挑んでいる。何故ならば、それがこの市場に欠けているものの一つだと考えるからだ。

仮想通貨市場に欠けているもの

究極的には相場は需給で動いている。誰かが大きく買えば上がるし、売れば下がる。但し、売りと買いの数は必ず同じになるので、その均衡点を目指して上下する。では、勘に任せて売ってみて、ダメなら買い戻せば良いかと言えば、そうではない。ボードディーラーや短期のトレーダーの場合はそれでいいのだろう。言い訳不要、PLが全てだ。しかし、長期ポジションを取る投資家の場合は、それではうまく行かない。自分なりにシナリオを定めて、そのシナリオの実現まで我慢も必要だし、シナリオの前提が崩れればポジションを再考する必要がある。また、本格的な機関投資家、すなわち人のお金を預かって運用するプロの投資家であれば、説明責任もある。そこで、何が需給を決めているのか、ひとりひとりの参加者の考えはバラバラかもしれないが、全体としては市場の注目しているのはこの材料で、その材料がどうなっていくのかといった分析が必要となる。一目の雲がどうだからと年金に説明するファンドマネージャーはあまりいないだろう。こうした分析が為替や株式市場と比べて仮想通貨市場には不足しており、言い換えればこの市場の発展に不可欠だと弊社では考えている。

機関投資家の参入が遅れるから

そうした前提に立てば、いま仮想通貨を買い持ちしている人、もしくはこれから買おうという人が何に最も期待しているかといえば、B to C中心の市場に機関投資家が参入してくることだろう。そういう意味で、やはりあの演説で与野党の妥協は難しくなり、15日閉鎖が再開されるとすれば、仮想通貨市場は更に悲観すると考えられるし、それまでは上値は重い展開が続こう。ただ、以前申し上げた様に大統領はインフラ整備など民主党各議員の要望を聞く姿勢を見せ造反者を待つ構えだが、それにより事態が打開されれば相場は反転するか。一方で昨年の安値は分裂騒動やテザー疑惑など仮想通貨の拠り所である信用が傷つけられ上でついており、現時点の材料では下抜けは無いと考えている。

予想レンジ BTC 35万円~45万円

Altcoin

ETH:今週のETH相場は揉み合い推移。週初はPOSへの移行を含むイーサリアム2.0の進捗を週次での公表が始まるとじりじりと値を上げるも12000円台では失速。ASIC対策として導入が検討されていたProgPoWの実装が後倒しとなったことも影響したか。その後は11000台後半での揉み合い推移が続いたが、一般教書演説に絡むBTCの下落に連れ安となった。その後、バイナンスコインの堅調さやアルトコインの戻しもあり11500円近辺での取引となっている。2018年第4四半期のICOは前期比25%ダウンの14億ドルとされた。需要の先食い的要素を孕むICOの減少はETH相場の重しとなるが、70億ドル近く減少した第2四半期と第3四半期と比べ減少幅は5億ドル程度と売り圧力は緩和されつつある。一方で、ゲーム上でRPGのアイテムや土地を売買するなどETH関連の開発や需要は高まりつつある。こうした中、ETHは当面底堅い推移を続けると考えるが、重要なのはそうした開発に耐えうるスケール問題をクリアする事だと考える。今月末のコンスタンチノープルのアップデートや、POSへの移行を目指すイーサリアム2.0の進捗報告もさることながら、イーサリアム1xとされるスケーリングへの前倒し対応が求められていると言えよう。

XRP:今週のXRP相場は軟調な展開。決済サービスのCoingateが決済手段としてXRPを追加、同通貨での小売店決済を始めたほか、Forbesがフィンテック企業50社に5年連続でリップル社を選定、またBinanceのCEOがxRapidを念頭に、将来的にはリップル社と提携したいとしている。この提携の意味は、自社の顧客に対する支払にxRapidを使用する事とxRapidのリクィデティープロバイダーとして参加する事を含んでいるのかもしれない。今後は、こうしたxRapidへのプライス提供を申し出る交換所が次々と現れる可能性がある。しかし、こうした好材料の割にXRP相場は冴えない値動きを続けている。理由の一つは、今週ブラジルの送金業者が指摘したXRPの法的問題がクリアになるまで銀行を選好するとし、またサウジとUAEとのデジタルトークン開発に6銀行が参加するなど、送金に関する競争が激化している事が挙げられる。確かにリップル社は先行しているが、まだxRapidの利用は非常に限定されていて、参加者の期待との間にギャップがあるという事だろう。証券問題も普及や相場の重しとなっていると言えるかもしれない。一方で、リップル社はシンガポール国立大を含む新たに11の大学と提携したと発表した。既に提携済の精華大と加え、アジアのTOP2とブロックチェーン研究で提携した形。同社はこの研究に総額5000万ドル以上の出費を表明している。リップル社のXRP大量保有と一部売却が「終わらないICO」と非難されがちで相場の重しともなっているが、こうした研究開発費も捻出されていることが伝われば、肯定的な見方も広がろうか。XRPに関しては、引き続き上目線で見ている。

BCH:今週のBCH相場は横ばい推移。週前半はBTCに連れ、比較的堅調に推移したが、Bitcoin.orgのCobra氏がBCHは終わったとすると上値を重くし、BTCが急落すると連れ安となった。その後も同氏はロジャー・バーらBCH支援者も今年中にBTCに戻ってくるだろうと続けたがBCHの決済ツールがプレ・リリースされ、また新たなBCHエクスプローラーがローンチされたこともあってか、ショートカバー気味に反発を見せ、週全体で見れば概ね横ばい推移となった。Cobra氏の指摘は難しい問題提起を孕んでいる。すなわち、そもそもBTCの決済利用を目指しスケーリング問題で分岐したBCHだが、その後のBSVとの分裂騒動による1か月前後の空白の時間と信用の失墜で決済利用の芽は遠のいてしまった。これを受けてか5月のアップデートに向けて様々な機能の追加が議論され始め、新BCHとして再出発するかという期待もある一方で、BTCとは懸け離れたBCHとは何なのかという問題だ。結局、BCHを購入する投資家はどういった将来に期待しているのか見えにくくなってしまっている。

LTC:今週のLTC相場は比較的堅調な推移。ライトニングネットワークへの期待やドイツ第2位の証券取引所がLTCの取引アプリを開発したこともあり堅調に推移。BTCの急落に連れ安となるも、LTC財団がスポンサーするMommoth Film Festivalが開幕、賞金の一部がLTCで支払われるなど普及と認知が進むとの期待もあり値を戻している。ただ、今週も匿名性向上に向けた議論が運営側で進んでいると伝わるが、本邦の自主規制ルールをどこまで認識した上でのものかやや疑問で、先行きに不安が残る。



FXcoin Weekly Report 2019.02.08.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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