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仮想通貨市場と外国為替市場の比較(2)流動性と安定性のために

2019-02-12 11:55[ れんぶらんと

金融リテラシーのお話 仮想通貨 暗号資産


仮想通貨市場が外国為替市場と同様の流動性と安定性をもつには、
1.多種多様な市場参加者を呼び込む。
2.スポット以外の種類の取引市場をつくる。
3.世界共通の規制と行動規範を整備する。

前回は仮想通貨市場と伝統的な外国為替市場においてそれぞれの特徴を細かく指摘しました。それらを要約すると「仮想通貨市場は外国為替市場に比べて流動性と安定性において改善の余地がある」ということでした。
今回は仮想通貨市場発展のための提言を行います。

1.多種多様な市場参加者を呼び込む

前回は仮想通貨市場は外国為替市場に比べて300分の1の取引額しかないことを説明しました。これは市場参加者の種類が個人投資家に偏っていることに原因の一つがあります。
東京外国為替市場を見た場合、銀行等が行う取引額が1日に3,991億ドルであるのに対し、個人投資家が行う取引は1,267億ドルです(*1)。つまり個人取引の3倍が企業間取引です。この企業間取引には、銀行顧客である機関投資家,輸出入企業などに加えて銀行同士の取引(インターバンク取引)が含まれます。
一方で、仮想通貨市場は特に国内の場合は99%が個人投資家の取引だと考えられます。

金融市場において多種多様な市場参加者を呼び込むことは大切です。それは多くの市場参加によって取引額が拡大し流動性が向上することももちろんですが、多種多様の参加者がそれぞれ異なる目的をもって取引することで市場に安定性が生まれるのからです。
例えば外国為替市場の場合、投機による短期売買によって利益を得ようとする個人投資家であれば米国の経済指標において良いものが発表されればドルを買うでしょうが、決済を目的として市場参加する輸出企業であればチャンスとみてドルを売ると考えられます。アービトラージを行うヘッジファンドであれば、相場が買われ過ぎの時は売り、売られ過ぎの時は買いのアクションを取る可能性があります。
仮想通貨市場が外国為替市場のように流動性と安定性をもつには、多種多様な市場参加者を呼び込むことが不可欠なのです。

2.スポット以外の種類の取引市場をつくる

では、仮想通貨市場に種多様な市場参加者を呼び込むにはどうすればよいでしょうか。
答えは取引の種類を増やすことです。
前回も書きましたが外国為替市場においては、スポット,フォワード,スワップ,オプションなど多様な種類の取引がなされています。これらの比率は下の円グラフの通りです。



スポット取引は外国為替の売買契約の成立と同時もしくは2業日後に、通貨の受け渡し(決済)が行われる取引です。スポット取引は外国為替取引の中でもっとも基本的なものです。ニュースなどで「本日の円相場は108円15銭です」などと報道されますが、この数値がスポット取引のレートとなります。
フォワード取引は期日において通貨の買いまたは売りのみを行う取引です。輸出入企業が外貨で支払われる売上債権債務の為替相場変動リスクのヘッジのためなどに使われます。
スワップ取引は同金額の売買が逆方向のスポット取引とフォワード取引を組み合わせて行う取引です。つまり、スポット取引の買い(または売り)とフォワード取引の売り(または買い)を同時に行う取引です。スワップ取引は機関投資家が外貨資産に投資する場合などによく使われます。
オプション取引は将来の決められた日にあらかじめ決められた価格で買う(売る)「権利」を売買する取引です。
このように外国為替市場には参加者のニーズに合わせて多様な取引手段があるのです。
一方で仮想通貨市場にはスポット取引にあたる短期決済の取引しかありません。これでは輸出入企業や機関投資家のニーズを満たすことはできません。結果として投機目的の個人投資家がほとんどの市場になっているのです。
仮想通貨市場に多種多様な市場参加者を呼び込むにはスポット以外の種類の取引市場をつくることが重要であることをおわかりいただけたでしょうか。

3.世界共通の規制と行動規範を整備する

多様な種類の取引市場をつくって、多くの市場参加者を呼び込むことを目指したとしてもそれで十分とは言えません。もうひとつ大切なことがあります。それは世界共通の規制と行動規範を整備することです。
仮想通貨市場はその歴史が浅いため、国によっては法令や規制の整備が十分になされていないところもあります。また法令や規制が施行されている場合でも厳しさの度合いは国によってさまざまです。これでは輸出入企業は仮想通貨をヘッジ手段としては使いにくいし、他人の資産を預かる機関投資家は安心して取引できません。

一方で外国為替市場は各国で法令や規制の整備ができていいます。金融安定理事会(FSB:Financial Stability Board)のような公的機関で、共通のルール作りがなされています。また、世界16か国・地域の中央銀行と民間市場参加者が協力し「グローバル外為行動規範」が策定され、市場の健全な発展と拡大が図られていることは前回書いた通りです。また、わが国を例にとると民間金融機関が中心となって東京外国為替市場委員会(*2)が組織されており、市場の健全な発展と拡大のために深い議論と実践がなされています。

わが国の仮想通貨市場においては昨年10月に一般社団法人日本仮想通貨交換業協会が認定自主規制団体となり、自主規制ルールを公表しその運用と会員に対する検査や指導を行うこととなっています。
今後はこの協会と市場参加者、そして当局が協力することにより、日本の仮想通貨市場が健全に発展すれば、流動性と安定性も達成されるものと考えます。

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脚注
(*1) 東京外国為替市場の取引額
東京外国為替市場委員会の調査によると、銀行等による1日平均取引額は3,991億ドル。一般社団法人金融先物取引業協会のデータから計算すると、個人のFX取引は1,267億ドル。(いずれも2018年10月のデータ)
(*2) 東京外国為替市場委員会
1971年8月ニクソン・ショックを受けた1米ドル=360円の固定相場制の解消にともない、同年10月に発足した東京外国為替市場慣行委員会を前身とする。金融市場における諸問題や行動規範について議論し内外の市場参加者・当局者に対して積極的な提言を行っている。市場委員会の委員は総数15人程度で、委員の出身母体は東京外国為替市場における主要参加者である銀行,証券会社,ブローカー,情報提供会社、および日本銀行で、財務省がオブザーバーとして参加している。

れんぶらんと

17世紀に活躍したオランダの画家レンブラント・ファン・レインの作品をこよなく愛する自称アーチスト。 1980年代後半のバブル期に株式および外貨資産投資を始め、いい思いをしてから投資の世界にどっぷりつかっている。

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