ライトコインの急騰に思う

2019-02-12 20:10[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン ライトコイン

先週金曜日にLTC相場が急騰、仮想通貨相場も全面高となり、BTCも一時40万円台に乗せた。弊社は2月1日付のMonthly Reportで1月の相場の低迷に際し、信用問題が相場を揺さぶった12月と比べれば売り材料も強くないので、「今月も35万円ではサポートされ、反発するが上値も限定的」と予想した通りの展開となっている。しかし、8日付のWeekly Reportでは米政府再閉鎖への懸念から上値の重い展開が続くという予想を出した直後に相場は急反発した。今朝のDaily Reportではこの反発は、LTCの急騰がきっかけとなったが、クリプトブルで有名な人気アナリスト、トム・リー氏が率いるファンドストラットが弱気な予想を出したというCCNの報道や同じくクリプトブルのヘッジファンドCEOでCNBCコメンテイターのブライアン・ケリー氏がETFの承認は2020年にずれ込むとのコメント、また新たな挑戦で大規模投資を行ったとされたもののBakktの開始が2019年後半への大幅遅延などから下値をトライしたものの失敗した結果、上記のファンドストラットの記事のニュアンスが違うと否定されたことも相まってショートカバーを引き起こしたものと考えている。因みに米政府閉鎖に関しては、直近のWSJ等の報道では与野党が再閉鎖解除に向け有力議員が大筋合意との報道もあり懸念は後退しており、相場も若干買いで反応しているが、ETF・Bakkt共に早期承認への期待が遠のいた状況下、この材料に対する関心も低下しつつあろう。

この様にBTC相場の見方に関しては大枠は外していないが、いずれ到来すると見ていた反発のタイミングがずれてしまったいう認識だが、同じWeekly ReportのLTCの見通しは見誤ってしまった。ひとつはライトニングネットワークの決済利用への期待感を過小評価した点だ。ライトニングネットワークとはBTCなどの取引速度や手数料を軽減するためにオフチェーンでマイクロペイメントを行い、最初と最後だけブロックチェーンに記録する技術だ。小口決済利用を目指すLTCではチャーリー・リーを中心に早くから開発に携わってきていたが、非接触式デジタルマネーが主流で、QR式決済の拡大を各社が莫大な販促費をかけてしのぎを削っている日本では、今一つLTCが流通で使用されるイメージがわかないし、BTCと異なり、決済に利用されている姿を見ることが殆ど無い。

もう一つの上昇の背景に挙げられる匿名性の向上はどうだろうか。BTCやLTCなどブロックチェーン上の通貨ではマイニングされてから現在に至るまでの取引履歴がブロックチェーン上に記録されている。現金を受け取る場合、どこで印刷されて、誰を通って、自分の手元にやってきたのかは分からないが、BTC受け取る場合、それまでの経緯を遡ることが出来る訳だ。金融に詳しい方ならば、手形を受け取る事に似ている。この経緯を分からなくしてしまうこと、これが匿名性を上げる技術だ。流通過程で事件に遭遇した通貨が嫌われるとか、人気アイドルが保有した通貨はプレミアムが付くとか、そうしたことを排除する目的とやはり取引の内容を皆に晒したくないというプライバシーの観点もあるだろう。ただ、これも日本に住んでいると、AML/CFTの観点から仮想通貨取引の透明性が求められており、自主規制ルールにより匿名性の高い通貨の取扱いは禁止されている。これだけAML/CFTの重要性が叫ばれ、ほんの一部の犯罪取引のために仮想通貨が市民権を得られない状況を歯がゆく思っている人が多い中、プライバシーの多少の犠牲は仕方ないという考え方が日本では多数派なのではと考える。一時は議論を呼んだが繁華街の警備カメラに異論を唱える日本人は少なくなっている。

実はこうした日本の常識に捕らわれた印象がLTCの変調を見逃した原因なのではないかと反省している。上はCrypto Compareによる各通貨の取引法定通貨の抜粋だ。仮想通貨の取引国シェアを類推するのによく利用されるもので、米ドルは様々な国で取引されている可能性があるが、日本円、韓国ウォンなど各通貨と取引国はほぼ一致すると考えられる。取引シェアは各通貨とも対USDTやBTCの取引が多いので合計しても100%にはならない。上記は24時間の取引Volumeを示しているが、日本で9交換所で取扱があるのにゼロというのは考えにくく、データはかなり不十分であるが、おおまかな目安としてご覧いただきたい。すると、BTCに関しては米ドルに日本円が肉薄、XRPは日米韓が三つ巴となっているが、ETHは欧米に対し日本ではあまり人気が無い模様だ。そしてLTCは米ドルが圧倒的で続いて欧州。日韓ではあり人気が無い模様だ。アルトコイン投資は未来への人気投票のようなものと紹介したことがあったが、日本に住んでいると、あまりLTCに魅力を感じにくく、逆にXRPに魅力を感じやすい、そういう傾向があるのかもしれない。

すなわち、日本にいる感覚だと、仮想通貨の将来性は、分散投資アセットとしての機関投資家の参入と、クロスボーダー決済での実用性に目が行きがちだが、国によってはBTCやLTCによる小口決済や非中央集権と匿名性の向上に魅力を感じる人が多いこともあるということだ。仮想通貨市場は真の意味でグローバルなのだ。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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