JPMコインの出現とXRPの可能性

2019-02-18 22:38[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 リップル

先週木曜日にCNBCがJPモルガン(JPM)によるステーブルコインを発行を報道して話題となった。同社のHPによれば、JPMの顧客はドル資金を同社の口座に入金して、それをJPMコインに交換して瞬時に送金し、JPMを受け取った受取人はJPMコインを自動的にドル資金に交換される模様。この時の条件は、送金人・受取人ともにJPMにドル口座を保有していることで、テスト段階に入った様だ。

先週のWeekly Reportでもご説明したが、SWIFTに替わる次世代送金システムはリップル社とIBM・ハイパーレッジャー、そしてイーサリアムベースのJPモルガン連合の三つ巴とご紹介した。その中で、送金には伝達機能と決済機能が必要で、xRapidの登場によってリップルが一足先に決済機能をデジタルトークンで代用することに成功したとご紹介した。今回はJPモルガン連合がようやく伝達だけでなく、コルレス決済に代わる決済ツールのテストを始めた段階で、商用利用を開始したリップルと比べて1年は遅れている。

それだけではなく、今回の仕組みはJPMのドル口座間の送金に限られている。法定通貨とJPMコインを交換できるのはJPMだけだからだ。このことが意味することを、例えばJPMの東京支店の顧客のドル口座からJPMのバンコク支店の顧客のドル口座の顧客にドルを送金する場合を考えてみよう。JPM東京支店の顧客のドル口座とは、JPM東京支店がJPM NY支店に保有するドル口座を間借りしているに過ぎない。JPMバンコク支店の顧客のドル口座も同様だ。従って、このドル決済は、JPM NY支店にある東京支店とバンコク支店間の店内付け替えで完了する。従って、実は決済的にはわざわざ、JPMコインを仲介させる必要はほぼ無い。デジタルトークンを利用すれば、24時間365日対応可能だと言うならば、JPM NY支店に数人その振替を担当する人がいれば事足りるし、自動化だっていくらでも可能だ。もっと言えば、HP上でJPMはサイバーセキュリティーに年間数百万ドル費やしているとしているが、このコストはJPMのシステム利用者が何らかの形で負担すべきものだ。

では、何故、JPMがこうした事を開発したのか。CNBCの記事では実用例として①海外送金②証券決済③トレジャリーサービスを挙げている。この最終段階のトレジャリーサービスとは世界を股にかける大企業のキャッシュマネージメントおよびプーリングのこと(トレードファイナンスを含んでいる可能性あり)を指している。企業は支払いに準備するためにある程度手元資金を持っている。しかし、国内外に子会社を数百、数千保有する大企業の場合、各子会社が手元資金を保有すると連結ベースでは巨額な手元資金を保有することになる。これではバランスシートが膨らんで自己資本比率も下がってしまうし、資本効率が悪いと株主に責められてしまう。そこで、親会社や金融子会社が社内銀行の様な形となって、資金余剰の子会社から現金を吸い上げ、不足している子会社に現金を融通し、その過不足だけを銀行から調達・運用する仕組みだ。国内であれば名の知れた大企業なら広く普及している取引だが、これがグローバルとなると容易ではない。例えばドル決済はNY時間にしか行われないので時差があってアジアのドル資金の過不足をバランスするのが難しくなる。ところがJPMコインなどデジタルトークンを使えば、世界各地の過不足を瞬時にバランスする事が出来る。例えばアジア各国に散らばる子会社の過不足はアジア時間に行い、ロンドン時間に欧州、中東からアフリカまでネットアウトし、NY時間に南北米大陸のバランスをするといった管理も可能になる。これは画期的かもしれない。

JPMがこの取引で年間90億ドルの収益を上げているとしている。勿論、これらの多くはキャッシュマネージメント、資金の支払いや入金に伴う手数料が多く含まれており、それぞれにかかる人件費などのコストも多く費やしているだろう。しかし、企業の財務担当の多くは、このコストをどう抑えるべきか常に考えている事だろう。更に、上記のトレジャリーサービスには決定的な問題が2つある。1つは、JPMコインを用いたグローバル・プーリングを利用するにはドル口座をJPMに集中する必要がある事。この点は、必ずしも利用する企業の口座はJPMで無くても構わないが、JPMが牽引する送金指図伝達ネットワークIINに加盟してノストロ口座をJPMに持つ銀行であれば理論的に可能だが、システム的な制約からJPMにドル口座を開設するのが一般的だ。すなわち、この仕組みは世界中のドル口座をJPMに集中させる事が最終目的で、どこまで加盟銀行が本気になるのかは若干疑問が残る。為替売買益などを考えてxRapidへの移行に銀行が2の足を踏んでいるのと似た構造だ。

もう1つは、企業の手元資金の多くは現地通貨であり、グローバル・プーリングがなかなか成功しないのは、こうした多通貨対応が出来ないからだ。この問題はXRPの様なメジャーな仮想通貨を使用すれば解決する。世界各地に現地の法定通貨に交換するマーケットが存在するからだ。厳密に言えば、スワップ市場があれば、なお良い。このケースでは、親会社はXRPの手元資金かコミットメントラインを準備しておき、子会社は余剰な現地資金をXRPに交換して親会社に預け、不足した子会社はXRPを借り受け現地通貨に交換すればいい。銀行を通す必要もなくなる。JPMコインの出現でデジタルトークンによるトレジャリーサービスが実現すれば、その次に大企業の財務担当は銀行を通さないこの方法に気付くだろう。そうすれば、JPMに支払っていた年間90億ドルのいくらかを支払わなくて済むことになるからだ。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通
twitterアカウント:@FXcoin_matsuda

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