2019.3.1【アルトコイン主導で連続下落記録ストップ】

2019-03-01 09:59[ 松田康生

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Review

アルトコイン主導

2月のBTC相場はアルトコイン主導で反発。政府閉鎖解除でCBOE分のETFが再提出されるもカナダの交換所の創業者の死去でコールドウォレットから引き出せなくなったとの報もあり上値を重くしていたが、一般教書演説でトランプ大統領が壁建設に拘る姿勢を見せた事もあり再閉鎖の懸念から安値余地を探る展開となった。しかし昨年の安値水準でサポートされるとLTCの上昇に連れ高で40万円台に反発した。壁費用を非常事態宣言でねん出したものの予算案には署名し米政府再閉鎖は回避され、また英議会の離脱協定案否決から仮想通貨への逃避買いが期待されていたところ、ETHが上昇を始めるとBTCも連れ高となり43万円台に乗せた。その後もETFの審査開始やTwitterの投げ銭機能など好材料が続き46万円台まで急伸したが、この過程でロングが溜まったせいかフラッシュクラッシュで41万円近辺までの急落を見せた。

Outlook

確定申告売り

先月は「35万円ではサポートされ、反発するが上値も限定的」と申し上げた。まさにその通りの展開となった。今から見ると非常に無難な予想だが、BTCが36万円台だった時に大胆な予想をしたものだ。その際に、過去最長となった6か月連続低下に歯止めがかかるだろうし、アノマリー的にも2月は上昇しやすいと申し上げた。では、3月はどうか?見事に、1年の中で最も下がりやすい月となっている。これは仮想通貨取引で得た利益の税金が通常は年末で締めて、翌年の日本であれば3月15日、米国であれば4月15日までに確定申告をする必要がある。因みに納税日は日本が4月22日(2019年)、米国は4月15日で、その前に納税資金の換金売りが出やすいとされている。2017年に相場が急騰した翌年3月には月間で35%も下落している。ただ、今年の場合は昨年の相場で利益を得た人がどれだけいるのか疑問だ。証拠金取引のショートで大儲けしたツワモノも多いかもしれないが、そうした人が現物を保有していれば、12月時点で損出しをしているだろうし、現物が無ければ利益を現金でプールしているケースが多いだろう。それでも、2016年以前に購入した仮想通貨を売却して利益を得た人もいるだろうから、昨年ほどでは無いにせよやはり3月のBTC相場は上値を重くせざるを得ないと考える。

実需売りの後退

先週のWeekly Reportでバウンドワゴン効果といって現時点では実需の裏付けの少ない仮想通貨市場では相場が上がれば買いが出て、下がれば売りが出ることによって値動きが増幅され易い性質を持つと申し上げた。この説明は正確では無く、仮想通貨市場にも実需フローは存在する。マイナーの売りだ。詳しくは別稿に譲るが、半減期になると価格が上昇しやすいのは、別にマイナーが結託して買い上げている訳でもなく、将来の売り圧力が後退するからだと考えている。Cointelegraphでは大手マイナーのBitmainが昨年保有BTC・BCHを大量に売却したとのSNSが紹介されている。本件の真偽はともかく、確かに昨年下旬の下落過程でコストすれすれとなったマイナーが先物で売りヘッジをしていたとの報道も見られた。その結果、一時的ではあるが、BTCへの売り圧力が後退しているのではないかと考えている。先週申し上げた様に、まだ需給を動かすほどで無いにせよ、インターネット上のマネーとして利用も着々と進んでいる。そうした中、3月のBTC相場は上値は重いが、下値も堅い、揉み合い推移を予想する。

予想レンジ:35万円~50万円

Topic

白旗を挙げた?SWIFTとR3の接続の意味
SWIFTの決済システムGPIとR3のCordaブロックチェーン上で発生した債権債務の決済システムCorda Settlerとの接続が発表され、XRPがSWIFTネットワーク上でも使用されるのではとの思惑もあってかXRPが急上昇したが、SWIFTの意図はLCの電子化はR3によるブロックチェーン化に白旗を上げるが決済機能をXRPから守ろうとする動きか。
米一般教書演説と英離脱期限延期報道
一般教書演説でトランプ大統領は壁建設にこだわる姿勢を見せ、2月15日の政府閉鎖解除の暫定期限に向け不安要因が浮上した。再閉鎖(結局は回避されたが、非常事態発令により今後の再閉鎖の可能性が残った)となればETFやBakktの審査に影響しかねない。またBREXITでは3月29日の離脱期限を延期する可能性が浮上、逃避資金流入の期待が後退し相場の重しとなろう。
ライトコインの急騰に思う
非接触式デジタルマネーやQR決済がしのぎを削り、現状ではLTCが付け入る隙が見当たらず、また自主規制ルールなどでAML/CFT対策が先行している日本の常識に捕らわれた結果、ライトニングネットワークの決済利用への期待や匿名性の海外での人気を過小評価し、LTC急騰を見逃した。日本では分散投資対象やクロスボーダー決済が注目されがちだが、小口決済や匿名性の向上に魅力を感じる国もある。
ビットコインキャッシュはどこへ向かう~5月再ハードフォークへ向けて
BCHだが、コミュニティーでは今年5月のハードフォークに関する議論が始まっている。キャッシュシャッフル、ライトニングネットワークやステルスアドレスなどが紹介されている。11月のHFでBCHの方向性が曖昧になっており、今度の5月のアップデートでは、前回の様な勢力争いを起こさない事は最低限の要求として、新生BCHとしてどのような将来性を打ち出せるかに注目している。
JPMコインの出現とXRPの可能性
JPMコインの利用はJPモルガンに口座を保有している事が前提で、送金だけならばデジタルトークンを使う必要は無い。本命は大企業のグローバルキャッシュプーリングで、これが実現すれば画期的だが、JPMコインの出現でデジタルトークンによるトレジャリーサービスが実現すれば、その次に大企業の財務担当はXRP等を用いた銀行を通さない多通貨対応のプーリングスキームに気付くだろう。
ビットコインはどこまで上昇する~アルトコイン主導の上昇
今回の相場上昇はLTCやETHなどアルトコイン主導だった。LTCはライトニングネットワークや匿名性への期待、ETHはアップデートへの期待に加え、ICO絡みの売り圧力の後退という材料があった。そうした材料でなく循環物色で買われたBTCの上値は重い。当面の戻り高値は45万円か(実際は46万円)。出遅れているXRPには上昇余地があろう。
新たなビジネスの種~短期金融市場でXRP決済
短期金融市場向けのプラットフォームにR3のCorda Settlerを実装し、決済にXRPを利用する試みが始まった。この市場は巨大だが、国内決済ではXRPの出る幕はない。ポイントはXRPの決済の速さにより従来不可能だった中銀に口座を保有していない投資家が当日スタート市場参入可能となった事。インターネット登場時と同様に取引コストの低下を活用した、我々がまだ気付いていないビジネスチャンスが眠っているに違いない。


Altcoin

ETH:ASICによるハッシュパワーの寡占化への対抗策としてProgPoWの実装が延期されたこともあり11000円台で上値の重い展開が続いていたが、イーサリアム2.0の進捗状況が週次で公表され、またLTCが急騰すると13000円近辺へ値を上げた。その後、2度延期されていたコンスタンチノープルが月末に実施されるとされ、NasdaqにETH指数が追加されるとじりじりと値を上げ始め、話題となったJPMコインがイーサリアムベースと伝わり、創始者ヴィタリック・ブテリン氏が今回のアップデートに太鼓判を押し、またETH先物に関するCFTCからのコメント要求に新興交換所ErisXに回答したことなどをきっかけに急上昇、16000円台を付けた。ところが、ここでコミュニティー内の不和により著名なクライアント・パリティーの開発者シェーデン氏のイーサリアム・プロジェクトからの脱退が伝わると上値を重くした。しかし、アップデートが近付き、またBinanceのトークンセールへの期待もあり18000円まで急上昇する局面もあったが、その後は15000円近辺まで値を戻している。最終的に反落はあったものの月を通してETHは3割程度上昇した。この背景にはアップデートへの期待感もあったが、その期待感とはゴールであるPOSとスケーリングの解決に向かってプロジェクトが一歩前進したこともあるが、マイニング報酬の減額も影響している可能性がある。詳しくは別稿に譲りたいが、報酬の減額は売り圧力の低減につながるからだ。過去のBTCのパターンで行けば半減期に向けて上昇した相場はその後、しばらく横ばいとなっている。BinanceのトークンセールでのICO人気の復活傾向やJPMコインなどイーサリアムを用いた開発は進んでおり、基本的に底堅い展開を予想するが、3月に関しては上値も重い揉み合い推移となる可能性が高いと考える。

XRP:2月のXRP相場は堅調な推移となったが、他通貨の上昇に遅れがちで対BTCでは上値の重い展開が続いた。前月末にSWIFTがR3と提携との報道に34円近辺まで値を上げて始まったが、別稿で申し上げた様にこの提携はXRPへの危機感の現れという面もあることが認識も広まったのかじりじりと値を下げる展開。サウジとUAEの送金用の新たな仮想通貨開発プロジェクトに6行が参加すると伝わるとライバル出現とばかりに31円台へ値を下げるもBinance CEOが将来的なリップル社との提携の可能性をコメントすると下げ止まり、LTCの上昇もあり反発を見せた。その後、リップル社の広告塔として機能していたコリー・ジョンソン最高戦略担当者の退職や次世代送金システムでライバル関係にあるJPモルガンがJPMコインを発表した事もあり33円近辺で上値を重くしていたが、同じく決済面でライバル関係にあるVISAやMasterの手数料値上げ報道やSMBCと三井物産とのR3を用いた貿易取引の実験報道などもありETHの上昇をきっかけに38円近辺まで値を上げた。自主規制団体JVCEAが今月から開始した国内交換業者の統計発表でXRPの保有額がBTCを上回ったことで売り圧力が多いと嫌気されたせいか35万円近辺まで値を下げた。その後のBTCのフラッシュクラッシュで33万円台まで値を下げていたが、米大手交換所Coinbaseでの取扱い開始が伝わると37万円近辺まで値を上げるも失速、35万円近辺での取引が続いている。JVCEAの統計で日本におけるXRP人気の高さが確認された。これは交換所に預けている総額で自前のウォレットで保管している額を加えれば、更に大きな額となろうが、それでも1000億円に満たない。別稿で述べたようにXRPの決済の早さが当日スタートの短期金融資金取引の新たな形態を可能とさせてた様に我々がまだ知らない新たなビジネスチャンスが生まれる可能性が高く、そうしたアイデアも出始めている。こうした中、出遅れているXRPには上昇余地があると考えている。

BCH:昨年のハードフォークを受けたSBIの決算発表でBCHに失望したとのコメントもあり12000円近辺での軟調な取引が続いたがLTCの上昇で13000円台に連れ高となった。その後、VISA・Masterの手数料値上げ報道やETHの上昇もあり16000円近辺に急上昇。更にリトアニアの決済サービスCoinGateでサポートされたBSVが急騰するとBCHも連れ高で17000円台に乗せるが、BTCの反落に14000円近辺まで値を下げている。他の通貨の動きに翻弄された1か月だったが、SNS上の噂ベースだがBitmain社が保有BCHの多くを昨年売却したと伝わった。確かに同社のIPOの中断、CEOの退任、巨額損失報道と辻褄が合う。もし事実であれば大きな売り材料の後退であり、当面底堅い動きを見せるか。

LTC:創始者チャーリー・リーがミンブル・ウィンブルを実装し匿名性を高める計画を好感してか上昇を開始、CoinGateがLTCのライトニングネットワークの対応を発表すると急騰。更にVISA・Masterの手数料値上げやETH上昇もあり5000円台半ばまで上昇、その後反落も5000円近辺での取引が続いている。中国メディアでは今回の上昇を8月の半減期を控えたマイナーの買い仕掛けと報じている。時価総額3000億円の相場が一部の仕掛けで5割以上も値上がりをするとは思わないが、その影響に関しては別稿にて考察したい。


FXcoin Monthly Report 2019.03.01.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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