2019.3.1【XRPがコインベースに上場しても上値が重い理由】

2019-03-01 19:02[ 松田康生

Weekly Report 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン ビットコインキャッシュ リップル イーサリアム ライトコイン



Review

アルトコイン主導

今週のBTC相場は、急騰後、急落する、荒っぽい展開となった。週末にアップグレードを控えたETHが上昇すると46万円台まで連れ高となるが、レンジを上抜けたとしてロングポジションが増加するも上値を重くすると、日本時間の月曜早朝の取引が薄い時間帯にフラッシュクラッシュを引き起こした。しかし41万円台でサポートされると、念願の米Coinbaseへの上場に寄るXRPの上昇やBinanceのトークンセールの22秒での完売、更に英議会で離脱案採決が延期されると合意なき離脱による混乱を恐れた逃避買い期待が高まり一時43万円近くに値を戻したが、結局3月29日の離脱期限を延期する公算が高まったこともあり40万円台を付ける局面もあった。しかし、その水準からは切り返し底値の堅さを確認すると、シンガポールの外貨準備を運用するGICがCoinbaseに投資していたと伝わったこともあり、一時43万円台に値を戻している。

Outlook

アルトコイン主導の相場だったが

来週のBTC相場は上値の重い展開を予想する。先週はロングの減少から底堅い展開を予想した。実際、46万円台まで上昇したが、その過程でロングポジションが再び増加、その後、ほんの数分で相場が急落するフラッシュクラッシュを引き起こした。しかし、その後、相場は回復を見せ一時43万円台を回復。週を通してみればほぼ横ばい推移となった。

ETHは上値が重い

まず、この前半の上昇を牽引したのはアップデートへの期待によるETHの上昇だ。このアップデートはスケーリングやPoSへの一里塚という側面もあるが、短期的な相場への影響ではマイニング報酬の減額の方が大きいかもしれない。ETH欄で詳しく述べているが、マイニング報酬減による相場の上昇は減額後に止まってしまう傾向があり、来週以降はこうしたETHによる牽引は期待しにくい。

XRPのCoinbaseへの上場

次にフラッシュクラッシュ後の戻りをサポートしたのがXRPのCoinbaseへの上場だ。この米大手Coinbase上場はコミュニティー念願だったと述べたが、実際、昨年10月にCoinbaseのカストディーに加えられただけで49円台から52円台へ3円近く上昇、12月に同交換所への上場が検討された際にも32円台から35円台へ上昇した。今回は実際に上場を実現したのに33円台から36円台への上昇と同じく3円の上昇にとどまっている。一つには当初、上場はCoinbase Proという大口専門で取り扱いが開始されたことが挙げられる。即ち、これまでCoinbaseで上場が成し遂げられなかった一因にリップル社の大量保有と証券問題に終止符が打たれていない事が指摘されてきた。それ故、今回の上場もプロ向け市場に限られているという見方もあった。しかし、その後、一般にも取引が解放されたことで、同社が一定の判断を行っていたことが伺えるようになった。

リップル社の売り圧力

それでも上値が重い一因として断続的なリップル社の売りと出来高の低迷が挙げられる。多くがロックアップされているとはいえ、リップル社は断続的にXRPを売却、開発費等に充当している。この売却は月上限を10億XRPとされているが、実際は市場に影響が出ない様に売却していくとされ第4四半期の市中放出額は89百万ドルだった。1日あたり約1百万ドルだ。同時期の1日あたりのXRP出来高は617百万ドル(CoinMarketCap)なので約600分の1。このインパクトがどの程度か判断するのは難しいが、外為市場と比較すると同市場の1日の出来高が1.7兆ドル、その600分の1は約25億ドル。毎日2500百万ドル、1時間に100百万ドルの売り圧力がどの程度かというと微妙なところだ。元為替ディーラーの肌感覚としてこれが1日10000百万ドルなら相当なインパクトだし、1000百万ドルなら大したことは無い。

出来高は回復傾向

従って、この売りを跳ね返すだけの出来高があるか否かがポイントとなるだろう。実際、この1年のXRP相場は出来高と相関している。出来高が1000百万ドルを超えれば相場は上昇するし、500百万ドルを割れば相場は下がっている。その出来高が足元で回復基調にある。これはCoinbase上場の一時的な効果かもしれないが、もしかするとこれまでのリップル社を中心とした実用化への努力が実を結び始めてきた可能性もある。結局、開発費として1日1百万ドルの売却をしている以上の期待も含めたXRPの有用性を創造できるかがカギとなってくる。この傾向が本物か否か判断するのは時期尚早だが、今回の相場の回復で出遅れているXRPの上昇余地は大きいと考えている。

上値は重いが底堅い

Monthly Reportで述べた様に3月は過去5年連続で下落している。この背景にあると思われる確定申告の売りに関しては、然程でもないと考えられるが、来週に関してはそうした売りが意識され、上値が重い展開を予想している。アップデートを終えたETHも上値を重くするだろう。但し、XRPに関してはこのまま1000百万ドル近辺の出来高を維持できれば、もう一段の上値追いも可能で、相場全体の下支えになるのではないかと考えている。BTC相場は、上値は重いが下値は堅い展開が続こう。

予想レンジ BTC 40万円~50万円

Altcoin

ETH:今週のETH相場は急騰後、急落する展開。アップデートを巡る期待感から買いが先行していたが、成功を見届ける前にピークアウトした形。既に2回延期されているコンスタンチノープルのアップデートが今度こそ成功するとの期待感から16000円台へ上昇していたが、コミュニティーでの内紛もあり上値を重くしていた。ところが米CME・CBOEと並び世界3大取引所運営会社に数えられるドイツ取引所がEUREXにETH先物の上場を検討しているとし、アップデートもいよいよ週末に迫ると18000円台まで一段の上昇を見せた。しかし、BTCがフラッシュクラッシュを引き起こすと15000円近辺まで値を下げた。その後は、この水準で揉み合ったが、注目のアップデートは日本時間の本日午前5時前に分岐などの問題を引き起こす事無く成功裏に完了し、各交換所も取引を再開している。好評を博したBinanceのトークンセールで売り出されたFETもイーサリアムベース、話題のJPMコインに用いられるQuorumもイーサリアムベースだ。今年に入り従来から開発が進んできたブロックチェーン関連の開発がローンチされるケースが目立ってきており、その多くが利用しているイーサリアムのプラットフォームとしての重要性は増すばかりだ。それ故、スケーリング対策や将来的なPoSへの移行などアップデートを進めていく事が重要とされている。そういう意味で今回の成功は一歩前進と言えよう。ただ、詳しくは別稿で述べるが、今回の上昇はマイニング報酬の減額(3ETH→2ETH)によるものという側面もあり、BTCの例で見るとそうした報酬の減額に伴う価格の上昇は、減額前に発生し、減額後は若干上値を重くする傾向も観察されている。市場金利が利上げ前に上昇し、利上げをすると低下する動きに似ている。為替で言えば、米利上げ期待はドル買いだが、実際の利上げはドル売り要因となる、いわゆるSell on the Factだ。ETH相場は今夕に反落を経験している事から更なる価格下落は予想しないが、今週に関しては上値の重い展開が続くか。

XRP:今週のXRP相場は行って来いの展開。但し、念願のCoinbaseへの上場を果たした割には上値が重い展開が続いている。EUREXによるXRP先物上場検討との報道もあり35円近辺で底堅く推移していたが、ETH上昇に連れ高で37円台へ上昇、BTCのフラッシュクラッシュで33円台へ急落した。その後、念願だったCoinbaseのXRPが発表され36円台を回復するが、その後は上値を重くし35円近辺での取引に終始した。国際送金でライバル関係にあるJPMコインが消費者に拡大する可能性をダイモンCEOが述べた事も影響したか(見通しに関してはOutlook欄ご参照)。

BCH:今週のBCH相場は目立った材料もなく、BTCに連れて上下する展開。OKexへの上場もあり15000円台で底堅く推移していたが、ETHの上昇に連れ17000円台に値を上げた。しかし、BTCの急落に14000円台へ下落。BSVがリトアニアのCoinGateで取扱開始されたことで大きく上昇すると連れ高となり15000円台を回復も、その後は14000円台での取引が続いている。5月のアップデートでデータサイズを縮小できるシュノア署名の採用がBitcoin ABCから提案されている。この採用はデータ圧縮かブロック拡張かでBTCから独立したBCHのイデオロギーに反することとなるが、市場参加者は節操が無く今後の方向性も見えなくなったと見るか、それでも実利を取りに行くというコミュニティーの覚悟の現れと見るか、今後に注目したい。

LTC:今週のLTC相場は目立った材料も無く、ほぼ他通貨と同様の値動き。ライトコインファンデーションがキックボクシング団体Gloryのスポンサーとなったが、前回の急騰が奇しくもスポンサーとなっていたマンモス映画祭の時期と重なっていたことも関係するか。確かに小口利用を目指すならば、こうしたPR活動も重要なのかもしれない。次回リングは3月9日に開催されるので注目したい。


FXcoin Weekly Report 2019.03.01.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

アーカイブ