マイナーの売り圧力と半減期~XRPとの比較付

2019-03-04 20:44[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン イーサリアム ライトコイン リップル

2月のBTC相場は半年ぶりに月足でプラスになった。この上昇を支えていたのがLTCやETHの上昇だ。2月単月でLTCは約45%、ETCは約35%の上昇を見せた。この背景としてマイニング報酬の減少を挙げる向きもある。LTCは8月7日頃にマイニング報酬が25LTCから12.5LTCに半減し、ETHは3月1日のアップデートでマイニング報酬が3ETHから2ETHと2/3に減額された。これに際し、中国の一部メディアはLTCの上昇は報酬半減後もマイニング収支を維持するためにマイナーが買い上げたものだとする観測記事を紹介したりもした。本稿では、遅ればせながら、マイニング報酬の減額が仮想通貨価格に与える影響を過去2回のBTC半減期を例に推測したい。

まず、弊社はマイニング報酬が仮想通貨の根源的価値だという立場は取っていない。これは突き詰めれば仮想通貨をコモデティー、すなわち実物(商品)貨幣と考える考え方で、貨幣として選好される歴史を振り返れば、小麦から貴金属、そして紙幣からデジタルデータという過程を考えると信用に基づいていると考える方が自然だからだ。従って、マイニングコストが価格を決めるのではなく、価格がマイニングコストに影響を与えると考えている。しかし、マイニングコストが相場に無関係化というと、そんなことは無い。現時点での仮想通貨市場におけるほぼ唯一(ではないが)の実需はマイナーの売りと言える。従って、例えば相場が急落してコストを割ってしまえば、その水準が戻り売りのポイントとして意識されるであろう。ただ、コストはマイナーによってまちまちで、マイナーもどこまで忠実にコストを意識して行動しているかも不明で、ドル円相場でよく話題となる企業の社内レートに近いものかと考えている。ストーリーとして分かり易いので、その水準が意識されるが、実際にトライするとあっさり抜けたりもする。

ただ、今回のテーマである半減期の場合は事情が異なる。即ち、半減期でマイナーが受け取る仮想通貨は半減する結果、マイナーからの売り圧力も半減する。ただ、効率的市場仮説と言って理論的にはそうした予め分かっている情報は価格に織り込まれている筈だが、仮想通貨市場ではしばしばそうはならない。例えが正しいか分からないが、新駅ができると予め分かっていても、実際の土地価格上昇は新駅ができる直前であったり、出来た後だったりする。実際に住民が引っ越してくるのは益が出来た後だからだ。仮想通貨市場は不動産市場よりは遥かに流動性があるのでこうした事態には陥らないが為替市場の様に効率的かというと疑問がある。そこで、かつてのBTCの半減期である2012年11月28日(50→25BTC)と2016年7月8日(25→12.5BTC)前後3か月間の相場推移を調べてみた。そうすると相場は半減期の1か月前頃に上昇し半減後は1か月程度横這い推移をしている。2013年の上昇も無関係とは言い難いが、キプロスショックによるものが大きい。たった2回の例で全てを説明できるとは言えないが、ETHはしばらく上値が重そうだし、LTCの今回の上昇を半減期との関連で説明するのは少し時期尚早か。

因みに、XRPの売却は管理コストという面でBTCなどPoWを採用する通貨のマイナーの売りに類似しており、そうした断続的な売り圧力がある中、相場が上昇を保てるか否かは、それらの売りと市場出来高との関係があるとWeekly Reportで述べた。そこで、こうしたマイナーの売りと比較してみると、直近での手計算による概算だが、BTC相場ではマイナーの報酬が1日の出来高の約1100分の1、ETHで約2400分の1、LTCは約1800分の1となり、前回レポート時点でのXRPの売り圧力が約600分の1となっているのよりコストが格安であることが分かる。この差は、非中央集権的通貨の場合、コストは安いが、その分、XRPはリップル社が実用に向けた開発や実社会への働きかけをするコストの違いと考えられるのかもしれない。従って、XRP相場はそうしたコストを捻出できるだけの出来高が必要で、それだけの価値をリップル社が生み出し続けられるかにかかっていよう。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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