BitMEX規約改定について

2019-03-05 16:07[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

先日、セイシェルに本拠地を置いている交換所BitMEXが規約を改定して話題となった。というのは米国・カナダに加えて「キューバ、クリミア自治共和国とセヴァストポリ特別市、イラン、シリア、北朝鮮、スーダン、または BitMEX の提供サービスが制限されるほかの法域の居住者も、BitMEX でポジションを保有または契約を締結することができません。」とされており、「BitMEX の提供サービスが制限されるほかの法域」に日本が含まれているのではないかと不安が広がった。というのはBitMEXといえばレバレッジ100倍まで認める証拠金取引最大手で、日本でもサロンなどで推奨されるなどファンが多く、もしそうしたポジションがアンワインドされるならば相場にも影響が出るのではないかと注目された。幸い、同社に直接問い合わせた利用者などから日本は制限対象に入っていないとの複数の回答がSNS上で紹介され事なきを得ている。

なぜ、日本で話題となったのかといえば、国内で仮想通貨交換業を営業するには登録が必要だからだ。日経新聞によれば、金融庁は昨年3月香港の大手交換業者バイナンスに無登録で日本で営業しているとして警告を発している。また今年2月にもジブラルタルにあるSB101という業者に対しAtomic Coinの売買の媒介などの交換業を登録なしに行ったとして警告した旨、発表している。そうした動きを受け、日本での登録取得を目指す香港の大手交換所Huobiは昨年6月に日本語のページを削除、日本居住者へのサービス提供を停止する方針を打ち出し、12月末を以ってHuobi本体による日本居住者向けサービスを終了する一方で、国内の登録業者であるビットトレードを買収、今年1月よりHuobi Japanとしての運営を開始している。ではBitMEXに日本進出の意図はあるのかと言えば、Cointelegraphによれば同社の親会社を通じて間接的に本邦の登録業者BITOCEANの株式67.2%を取得したと報じられている。そうした中、今回の規約改定がBitMEXのグループとして日本進出の準備かと心配されたが、同社からの回答に利用者は安堵しているのかもしれない。

但し、ここで注意が必要なのは、BitMEXが提供しているのは仮想通貨の証拠金取引だということだ。即ち、現在のところ仮想通貨の証拠金取引に対する規制は本邦には存在せず、その営業に登録は必要ない。従って「BitMEX の提供サービスが制限されるほかの法域」に日本が含まれる余地はない。しかし、今国会に提出が予定されているとされる金融商品取引法改正案では、同商品取扱に金融商品取扱業者第1種の取得を義務付けようとしていると報道されている。実際、金融庁の仮想通貨交換業研究会の報告書でも「多くの主要国が仮想通貨デリバティブ取引を金融規制の対象としている中、現状、我が国においては金融規制の対象とはされていない。一方で、現行の金融商品取引法においても、原資産の如何を問わず、デリバティブ取引を金融規制の対象とし得る枠組みは存在している。」とされている。今後、日本における証拠金取引が規制対象になる可能性があるので注意が必要だ。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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