FATFの仮想通貨規制草案の気になる部分

2019-03-07 15:28[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産

先週木曜日(28日)FATFが仮想通貨に対する規制の草案を公表した。22日の総会を受けたもので、ほぼ以前から想定された内容だった。FATFとは金融活動作業部会と訳されているが、マネーロンダリングやテロ資金対策(AML/CFT)における国際基準を策定し加盟国への勧告や指導を行う国際機関だ。今年10月に第4次対日相互審査が予定されていることでも注目されている。日本は前回2008年の第3次審査では40項目のうち4段階の最高評価が4項目だったのに対し最低評価が10項目に上る散々な結果で、2014年には必要な法整備が遅れているとして早期の対応を求める声明を出された経緯にある。この評価が低い状態が続けばAML/CFTにおいてリスクが高い国と見做され、国際取引において不利な扱いを受ける可能性が無いとは言えず、いわば、今回は挽回のチャンスとも言える位置づけだ。

因みに仮想通貨への規制に関して日本は先行しており、20156月に出されたFATFのガイダンスで仮想通貨交換所を登録制にすべきとされたのを受けて、20166月には資金決済法を改正、いち早く登録制度を法制化している。20174月より施行している。更に昨年10月には自主規制団体が発足、自主規制ルールで仮想通貨市場における不公正取引を禁止した事は世界に先駆けた画期的な出来事だった。BTCETFの可否が議論となるが、一番問題とされているのは、この株や為替で当然規制されている相場操縦手法が日本以外では野放しになっている事だろう。この点はFATFがいうAML/CFTと別に議論されるべき問題だ。

そのFATF20187月のG20で仮想通貨に対する規制をガイダンスでは無く、もう一段上の勧告に格上げする様に指示され、10月にFATFが加盟国に遵守を勧告するRecommendationの第15条に仮想通貨への記載が加えられ、更に規制対象が、交換所だけでなく、ウォレット提供業者とICOに関わるサービス提供者、まとめてVASP(仮想通貨サービスプロバイダー)という概念を作り出した。今回出された草案は、この勧告15条に対する解釈指針だ。自主規制ルールをご覧になると規制本文とその各条に対応する説明書きであるガイダンスで構成されているが、このFATF勧告も似た構成となっており、昨年10月に勧告の本文が改正され、今回その説明書き部分の草案が出て来たという訳だ。細かい部分もあるが内容はほぼ昨年10月に認識されていた内容と大きな相違はない。

ただ、少し気になった部分がある。” Countries should take action to identify natural or legal persons that carry out VASP activities without the requisite license or registration, and apply appropriate sanctions.(各国は、必要な免許または登録なしにVASP活動を行う自然人または法人を特定し、適切な制裁を適用すべきだ。)という記載だ。勿論、資金決済法では登録を受けないで仮想通貨交換業を行った場合の罰則規定があるし、詐欺のようなケースを除けば国内でそうした業者が出てくることは想定しにくい。問題は外国にある交換業者だ。金融庁のHPによれば証券取引の場合「登録を受けない外国証券業者であっても、(中略)証券業者が「勧誘」及び「勧誘に類する行為」をすることなく国内居住者から注文を受ける場合は、国内居住者との取引をすることができるとされている。ただ、ここで定められている法益は利用者保護だと考えられる。一方で、上記FATFの要請はAML/CFTの観点からなので、たとえ日本の居住者が主体的にFATF加盟国以外の交換所にアクセスして、それがAML/CFTの抜け穴となる事を防ぐ措置を取る様に勧告している様にも読める。本草案が正式に規定とされるのは6月を予定されるが、それを受けて国内で何らかの対応策が講じられるのか少し気になるところだ。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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