大地震とATMボーイ

2019-03-11 20:02[ にく

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先日、ホールインワンを達成しました。人生2度目です。アマチュアの場合、ホールインワンする確率は凡そ1万回に1回と言われています。1ラウンドでパ-3は4ホールあるので2500ラウンドに1回という計算で、年間100ラウンドでも25年に1回、2回なら50年かかります(確率的には正しくはありませんが)。小職の場合、年間30~40回程度なので、2回ホールインワンを達成するには100年以上かかりそうな計算です550万人とも890万人とも言われる日本のゴルファーの中で、ほんの一握りのホールインワン複数回経験者の仲間入りです。

2度目でもやはり嬉しいものですが、残念ながらカップインの瞬間は見ていなかったので実感が湧かなかったこと以外に、素直に喜べない事情がありました。実は、この日は平日で仕事を休んでゴルフに行っていました。勿論、家族にも内緒です。最近、ゴルフに行き難い家庭環境下、特別休暇なるものを貰えたので、普段通りに出勤する格好で家を出て、友人にピックアップしてもらい、適当に時間を潰して、何食わぬ顔をして帰宅するつもりでした。勿論、その日はその様にそうっと帰ったのですが、それでもホールインワン保険の申請書類やゴルフ場からの記念品などが家に送られてきます。幸い保険の書類は開封されておらず、記念品も小職が自宅にいる時間に届き事なきを得ました。

実は前回のホールインワンも似た状況でした。当時はバンコクに赴任していて、カンボジアに観光に行った際にアンコールゴルフクラブで達成しました。問題はそのタイミングで、2011年の3月19日、まさに震災の直後での達成でした。遠くバンコクといえども日本人社会で震災のショックは大きく、国内での宴会やゴルフはキャンセルが相次いだのですが、こちらはもう航空券もホテルも手配していて、もうキャンセルできないと、周囲に告げずにそうっと行ってみたら、ホールインワン。今更、会社では言い難く、2か月ほどその話題に触れず、5月の店内コンペの際に水面下で用意していた記念品を配ることで事なきを得ました。

今日はその震災からちょうど8年目を迎えましたが、当時、バンコクにいたせいもあってか、小職にとって震災と言えば阪神淡路の方が強い印象に残っています。当時、メガバンクの大阪支店の新人だったのですが、その日はちょうど3連休明けで当時、土日はATMが開いておらず、同期に千円を借りて出勤した事を覚えています。先に寮を出た先輩は阪急高槻駅で足止めを食らって午前中は出社できなかったのですが、遅れて駅に着いた小職は咄嗟の判断でバスに乗って高槻から枚方まで移動し、京阪で淀屋橋に出て、何とか開店時間ギリギリに間に合いました。ただ、当時の新人はATMボーイと言って、朝一番にATMを立ち上げる業務があり、これではもう開店には間に合わないと営業室のドアを開けるなり、すいません、遅れました、大声で謝ったところ、普段は50人いる筈の営業室に数人しかいませんでした。携帯電話が普及していなかった当時は、震災当日は西宮地区に固まって住んでいた支店長・副支店長クラスと連絡がつかないまま関西常駐の役員が陣頭指揮をして、11時頃に店を開けた覚えがあります。実は震災当初はまだ状況が全くつかめず、淡路島で大きな地震があったくらいの情報しか伝わってこなかったのですが、時間が経つにつれてフロア内のTVで横倒しになった阪神高速などヘリからの映像が伝わり、皆無口になっていきます。1週間ほどして支店の全員の無事が確認された時は盛り上がりましたが、全支店がそうだった訳でもなく、関西地区では暗い雰囲気が漂っていました。

そんな中、支店が救援物資の中継センターとして利用され、救援活動に忙殺されることで支店にも活気が戻ってきました。全国の支店や本部から送られてくる物資を一旦大阪支店で受取り、それを西宮近辺の独身寮にトラックをチャーターして配送し、周囲の行員家族や関係者がそこに取りに行く体制でした。若手の先輩は往復10時間以上かけて配送に同行し、新人の小職は支店で在庫管理をしていました。さすが大企業だと物資も大量に集まりますが、やはり現地のニーズと若干合わなくなるのですが、それを伝えるとその指定した物資がまた大量に届いて、支店中が物資だらけになっていました。震災の翌日に名古屋支店からフライドチキンが100人前届いたときはどうしたものか頭を悩ませたものです。

あれから24年も経過し、防災体制も随分と進化したものと思われます。当時800万円から1200万円していたATMも、今では1台300万円程度で買えるそうです。小職が新人時代に担っていたATMの現金補填やエラー対応などは現在では現金輸送も含めて警備会社に委託することが一般的になっている様ですが、2017年12月の日経の記事によれば、そうした警備費や監視システムだけで1台毎月30万円の費用がかかるそうです。記事ではATMだけで年間7600億円、金融界全体で年間2兆円もの取扱コストがかかっているとされています。一方で、経産省委託で野村総研が発表した(我が国におけるFinTech普及に向けた環境整備に関する調査検討)調査報告書によれば、現金決済による現在の社会コスト年間約1.6兆円で、うち約7000億円がATM関連費用とされています。

よくキャッシュレス化による社会的コストの削減などと言われ、例として日銀券などの発行コストなどが挙げられますが、日銀のコストは年間650億円(紙幣500億円、硬貨150億円)に過ぎません。実は、現金社会のコストの大半は、ATM関連費用という形で年間7000億円程度、銀行が負担している訳です。利用者からすれば、自分の預けた金を出し入れするのに、人件費を削減したいからと窓口からATMを利用しろと言われて利用しているのに、そのコストが負担だというのはムシが良すぎるように聞こえるかもしれませんが、実際に結構なコストがかかっているのも事実です。銀行からすれば、この費用を何とかしたいと考えるのは自然でしょう。そこで、MUFGはコイン、みずほはJコインを発行する訳です。

これは、預金は預かるが、その入出金に来店してほしくもないし、ATMも撤去したい。その代わり、使いたい時は、スマホから直接、お店に支払ってくれという訳です。いわばDebitカードから手数料の高いカード会社のブランドを外した様なものです。そんな都合のいい考えが通用するのか見ものですが、それに関する考え方は「メガバンクがデジタル通貨を発行する意味」でご紹介していますが、要はそうした決済ビジネスというマーケティングに長けた他の業者が2020年の東京オリンピックを目指して破格の販促費をかけてしのぎを削っている市場に、自行のコスト削減を主目的とした殿様商売がどの程度通用するのか、その本気度が試されているのだと考えています。

今思い出すと、阪神大震災の頃は会社にPCも携帯もありませんでした。勿論、インターネットも。営業車も半分は重ステで、パワーウィンドウもありませんでした。それが今では軽でも自動運転機能が付いてきて、技術の力で死亡事故ゼロを目指すメーカーまで現れました。かつては江戸の華と言われた火事ですが、江戸城の天守閣を焼失させた明暦の大火では10万人以上が犠牲となったそうですが、その後、街づくりや素材の進化など技術の進歩により、今時は延焼することもあまり耳にしなくなりました。いずれ来る大地震についても技術の進歩で少しでも被害を抑えられるようになって欲しいと思います。阪神淡路および東日本大震災で犠牲になられた方のご冥福をお祈りします。

にく

前職は外資系金融機関外国為替営業。国内だけでなく海外を仕事(?)で飛び回る日々を送っていた。自らライオンと称しているが、他の動物に例えられることが多い。 好きなものは東南アジア諸国。趣味は早朝ゴルフ。特技はタイ語。

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