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仮想通貨取引所?交換所?ビットコインFX? 知って損はない違いに隠された意味

2019-03-12 16:40[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

(要約)
・取引所とは東証など法律に定められた言葉で仮想通貨の場合は交換所が正しい。

・仮想通貨で取引所という言葉が使われていたのは、販売所方式との対比で板形式を取引所方式と呼んでいた影響か。自主規制団体は前者をマーケットメーク方式、後者を競争売買方式と呼び、取引所という言葉の誤認防止を求めている。

・仮想通貨証拠金取引をFX取引と呼ぶ事も外国為替証拠金取引との誤認防止を求められている。この両者が誤認され易いのは取引形態が似ているから。

・しかし誤認防止が求められている背景を掘り下げると、外国為替と異なり仮想通貨の証拠金には現物との紐づけが無いという大きな違いに気づく。

・先物市場には現物のヘッジニーズに応えるという社会経済的目的がある点でギャンブルと峻別されている。ただ、現物での受渡や期日での清算が無い証拠金取引は交換業者による現物との乖離防止措置がより求められる。

・また、原資産である仮想通貨の有用性が定まっておらず「取引所」に上場させるまでには至らないと仮想通貨交換業研究会では指摘されている。

・尚、証拠金倍率が4倍に引き下げられるのは差入証拠金以上の損失を防ぐための利用者保護策。交換所から異議が出ず、一部の利用者から不満が聞こえるのは不思議。


取引所と交換所

いきなりですが、仮想通貨を売買するのは、取引所でしょうか、交換所でしょうか?大手取引所/交換所のHPを見てみると、bitbankは仮想通貨取引所、bitFlyerは購入/販売/取引所とうまい表現をしています。一方でBitpointは仮想通貨交換所としています。正解です。日本が世界に先駆けて仮想通貨の法的性格を定めた改正資金決済法では「仮想通貨交換業」と明記されていますし、金融商品取引法で「金融商品取引所」を名乗るには内閣総理大臣の免許が必要で、現在、東証・大証*・名古屋・札幌・福岡の5大証券取引所とジャスダック、東京金融取引所の7つです(東京と大阪は合併したので6つと言ったほうが正確かもしれません)。これ以外に商品先物取引法で定める商品取引所が東京と大阪の堂島の2か所あり、こちらは経済産業大臣の許可が必要となっています。言葉の問題ですが、交換業者が取扱通貨を増やすときに「XXXが上場」と報じられることがありますが、本来「上場」とは金融商品取引所で取引されることを示すので、法的には正確ではない使い方です。

取引所形式と販売所形式

では、各交換業者はそれを分かっていて何故、取引所という言葉を使うのでしょうか。ひとつは改正資金決済法が施行される前から使用していたからという理由が挙げられるかもしれません。ただ、それだけでは理由として弱い気がします。おそらくは彼らの取引形態に理由があるのではないかと考えています。仮想通貨交換所では主に、業者側が売りと買いの価格を提示するケースと、参加者を中心とした売りと買いの注文を板の形で晒して売買を促すケースの2パターンを提供しています。前者を販売所、後者を取引所として区別することが多いようです。おそらく、東証などの金融商品取引所での取引に似た形態だからそう名付けたのでしょう。JVCEAの自主規制ルールでは、前者をマーケットメーク方式、後者を競争売買方式と呼んでいます。また「取引所」という用語の使い方も金商品取引法等の概念と誤認されないように防止措置を講じる必要があるとガイドラインで指摘しています。

FX取引と証拠金取引

上記のガイドラインではFX取引という呼び名についても誤認防止措置が必要としています。単純にFXはForeign Exchangeの略で、仮想通貨の証拠金取引に使うのはおかしいからと言ってしまえば、それまでですが、少し掘り下げてみると様々なことが見えて来ます。まず、仮想通貨のFX取引とレバレッジ取引、証拠金取引はほぼ同じものと思っていいでしょう。いわばFXとは商品名で外国為替証拠金取引と商品内容が似ているので使用されているのだと考えています。これに対し自主規制団体は、FXとは Foreign Exchange、すなわち外国為替証拠金取引の略称として定着しており、仮想通貨は法定通貨との誤認防止を義務付けられてもいるFX という名称を用いる場合には少なくとも、利用者の誤認を生ぜしめないよう、外国為替証拠金取引とは異なるものであることを説明するなど誤認防止のための措置が必要としています。

外国為替証拠金と仮想通貨証拠金

これはどういう事かと言えば、仮想通貨の現物取引の場合は、買ったり、売ったりすれば、法定通貨と仮想通貨現物との決済が発生します。これに対し、例えば外国為替証拠金取引でドル円を買っても反対売買をするまで決済は発生しません。何故、決済しなくていいのかというと、本来であれば現物市場(スポット市場)でドル円を買った時点で2営業日後に決済する必要があるのですが、その決済期日をスワップ市場で1日ずつ伸ばしているからです。証拠金取引とは、こうした一連の取引をパッケージにして提供したデリバティブ取引で、反対売買を行った時点で即時に差額決済を行う商品が多い様です。これと同じ様に仮想通貨証拠金取引ではBTC/JPYでBTCロングポジションを作成しても決済せずロールオーバーさせていき、反対売買をして差額決済するデリバティブ取引で、外為証拠金取引に似た形態であるためFXという名称を使いたくなる気持ちも分からなくはありません。

現物市場との紐づけ

しかし、為替のFX取引の場合は現物市場と紐づいているのですが、仮想通貨の証拠金取引の場合はスワップ市場がなく現物と紐づいていないという問題があります。その結果、現物取引と証拠金取引との価格が乖離しても裁定取引が行われません。そこで自主規制ルールでは交換所が両者の乖離防止に努めるものとし、乖離が大きくならない様に注文値幅を制限する方法や取引を一時中断する方法などが例として挙げられています。ガイドラインでは更に踏み込んで、「証拠金取引は社会経済的目的をもって行われるものであり、偶然性に依るゲームとの一線を画するためには、証拠金取引価格が現物取引価格から不合理に乖離することのないように、その取引環境を整備する必要があります」としています。

先物市場の意義はヘッジ

仮想通貨現物と無関係に動く証拠金取引は偶然性によるゲーム、ギャンブルと区別がつかなくなるという訳です。では、証拠金取引をギャンブルと区別している社会経済的目的とは何でしょうか。先物市場は堂島の米相場から始まったことは有名ですが、当時から賭博的要素があると指摘されていた様です。しかし当時の大名は北回船などで年貢米を大阪に輸送して換金していましたが、今年は豊作だからとあてにして江戸屋敷で豪遊していたら、年貢米が大坂に着くまでに暴落してしまっていたら大変です。そこで、予め先物を売り建ててヘッジするという役割も持っていました。すなわちオッズメーカーなどと異なり、先物市場とは原資産価格をヘッジするという機能があるので賭博的な性格があっても認められている、少し突っ込んで言えば、投機的なリスクテイカーが存在するから市場として成り立っているのだと考えています。ただ、同じ先物市場でも原油や債券など現渡しといって期日に現物で決済できるものならば現物との紐づけは確保されているのですが、金利先物や日経225の様に現渡しが出来ない物の場合は期日の市場実勢などにより決められた清算値との差額で決済をするので、この清算値がいかに公正かが重要となります。これらに対し仮想通貨証拠金の場合はそうした紐づけが無い事が不安視されている訳です。

取引所に上場する必要はない

ならば、東証や大証などの法律で規制された金融商品取引所できちんと価格を見張っていくことも考えられるのですが、これに対し金融庁の仮想通貨交換業の研究会の報告書ではその必要は無いとしています。理由は、原資産である仮想通貨の有用性が定まっていないこと、現時点では専ら投機を助長しているとの指摘もある中、積極的な社会的意義を見出せないからとされています。即ち、仮想通貨デリバティブは原資産のヘッジという意味もあるから禁止はしないが、取引所がコストをかけてまで監視する必要は無いという訳です。金融商品取引法の金融商品の定義に「取引所金融商品市場において当該商品に係る市場デリバティブ取引が行われることが国民経済上有益であるもの」とあることも影響しているのかもしれません。

レバレッジ規制は利用者保護のため

最後に仮想通貨の証拠金取引のレバレッジ比率について少し触れておきたいと思います。従来は差入証拠金に対し25倍までのポジションを許容している交換所が多かったのですが、自主規制によって上限が4倍に定められ、各交換所は移行期に入っています。これは従来は外国為替証拠金の上限25倍を参考に定められていたのが、外国為替と比べて何倍もボラティリティーが高いことを勘案した措置でしょう。ここで注意したいのはレバレッジ比率が4倍だからと言って、差し入れた資金の4倍ポジションが取れる訳では無い事です。証拠金は相場が急変して交換所が強制的に損切りする場合のバッファーで、最低証拠金維持率と言って各交換所は100%ないし80%などと定めていて、その水準を割り込むと強制的に損切りを行います。中には追加証拠金を入れてくださいと連絡して損切りを待ってくれる交換所もあるでしょうが、その間に相場が悪い方向に触れたら更に損失の大きな水準で損切られてしまうかもしれません。従って、許容倍率ぎりぎりまでポジションを取る事は可能ですが、少しアゲインストに行っただけですぐ損切りという事になりかねません。あえて言えば、倍率を低くしたのは、交換所がその間で損切りしきれなくて、当初、差入れた金額以上の損失を被ることが無いように利用者保護の観点から定められたものです。この件に関して交換所の方からの異論はあまり聞かれないのに、利用者の方から異論が聞こえるのは若干違和感があります。海外には100倍までレバレッジがかけられる交換所もある様ですが、1%価格が動いただけで証拠金が無くなる可能性がある訳ですから、1日中相場を見続けている専業トレーダーのような方を除けば、サラリーマントレーダー様な場合はあまりメリットが無い気もします。

最後に

この様に、言葉の意味を掘り下げ見ると、仮想通貨取引、特に証拠金取引を巡る問題点や当局や自主規制団体の考え方が透けて見えます。こうした事を踏まえて相場に立ち向かった方がより頭が整理され、相場に集中できると考えますが、如何だったでしょうか?

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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