2019.3.22【合意なき離脱の可能性浮上、離脱期限延期は4月12日迄】

2019-03-22 18:44[ 松田康生

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Review

ほぼ横這い

今週のBTC相場は底堅い展開。43万円近辺で揉み合った前週と比べ1万円レンジを切り上げた形で、45万円手前で上値の重い展開が続いた。先週末に金商法・資金決済法改正案が閣議決定、国会提出され、いよいよ規制整備に向けた議論が動き始めたが、そうした中、BCHなどアルトコイン主導で先週高値を抜けると44万円台後半まで上昇した。その後、コインチェックがBCH保有者にハードフォークしたBSVを日本円で払出すると再び上値トライするも、既にBCHは上昇していたことやBakktの承認が後倒しとなるとの報道もあり値を戻す展開。Binanceのトークンセールが活況を呈すと何度となく45万円台をトライするも、麻生大臣が仮想通貨税制変更を否定、米ETFのパブリックコメントにネガティな意見が多いとの報道もあり上値を重く推移すると、アルトコインの急落に43万円台に値を下げたが、すぐさま44万円台を回復している。

Outlook

高水準の出来高

来週のBTC相場は底堅い展開を予想する。先週は「市場はじりじりと値を上げ年初来高値となる46万円台をトライする展開」と申し上げた。実際には、先週の43万円の水準から44万円台にレンジを切り上げたが、45万円台トライに失敗していた形となっている。しかし、上値トライの根拠の一つであるBTC相場の出来高は引き続き100億ドル近辺で推移しており、騰勢は続くと考えている。

機関投資家参入向けの動きは後退

今週はBakkt承認後倒し、ETFパブリックコメントでネガティブな意見が続いたといった報道もあり、上値の重さと関係した可能性がある。しかし、機関投資家の参入は後倒しになるというのは市場のほぼコンセンサスと考えており、影響は限定的だろう。

仮想通貨税制は変わらず

金商法・資金決済法案が国会に提出されたが、同時に藤巻議員が提唱する仮想通貨税制の見直しに関する議論にも注目している。まずは、雑所得から損益通算可能な譲渡所得に移行し、最終的には他の金融商品と整合的な源泉分離課税を目指すというものだ。2013年からの下落局面から上昇に転じたきっかけは、中国勢の逃避資金とEUが物品税非課税としたことであり、時間はかかりそうだが、この税制が変われば大きな相場の節目となろう。そういう意味で麻生大臣の現時点では税制変更の予定はないとの発言の意味は重いが、現時点では期待する向きも少なく相場への影響は限定的か。

意外なユースケース

Coinpostが北朝鮮の反体制派が仮想通貨で資金調達を計画していると報じた。北朝鮮に反体制派が存在する事を初めて知ったが、何でも彼らが支配する地区へのVISAをERC721で発行、同企画で初めてのユースケースだそうだ。コインチェック流出事件の主犯として国連から名指しされるなど何かとお騒がせな北朝鮮だが、その反体制派とやらがこうした高い技術を有している事にも驚かされる。いずれにせよ、ユースケースというのはこうした思いもよらないところから発生し、ブロックチェーンで出来る事というより、ブロックチェーンで達成して欲しい事でこそ威力を発すると考える。

景気減速の影響

足元で中国経済の減速や仮想通貨取引の活況が報告されている。今年の大きなテーマは景気減速が到来するか否かであるが、以前、申し上げた様に、仮想通貨市場はまだ本格的な不況を経験していない。しかし、米景気後退はニクソンショックやリーマンショックなどの危機を引き起こしやすいので、結果的に仮想通貨需要を引き上げる可能性が高い。シカゴ市長が経済危機で仮想通貨が利用される日が必ず到来するとコメントしたのは、そうした意識もあったのかもしれない。

逃避買い

いよいよBREXITの混迷の度合いを増してきた。英議会がメイ首相がEUと合意した離脱案を否決。合意なき離脱案も否決し、6月末までの離脱期限の暫定離脱を可決した。これに対し、EU首脳は英議会の6月末までの延長を一蹴。無条件での延期を4月12日までしか認めず、もし2度否決した離脱案を再可決するならば、準備のために5月22日までの延期を容認すると、いわば最後通知を行った。メイ首相の瀬戸際戦略にEUも(さらに厳しい形で)乗った形だが、これで合意なき離脱の可能性も再浮上した。以前申し上げた様に、不戦協定的な意味合いを持ち域内の結束を守りたいEUからすれば離脱を決め潜在的な仮想敵国となった英国の困惑はメリットだからだ。こうした中、来週は流石に逃避買いが出るのではないかと見ている。

予想レンジ BTC 40万円~50万円

Altcoin

ETH:今週のETH相場は上値の重い展開。ASIC耐性のProgPoW実装が内定したこともあり堅調にスタート。しかし、その後は15000円台で上値の重い展開が続いた。その後、Binanceのトークンセール第3弾も17分で完売、更にHuobiも新たなトークンセールを企画しているとの報道もあったが反応薄。一方、CCNで創始者ヴィタリック・ブテリン氏は2017年から2018年にかけてETHを40百万ドル換金していたとの報道もあり急落、15000円を割り込む展開となったが、同氏より高値で売った事実はなく、また慈善団体への寄付の分も含まれているとの反論もあり下げ止まっている。結局、冴えない展開となった今週のETH相場だが、コンスタンチノープルのアップデートに向け、2月に11000円台から17000円近辺まで上昇、その後、反落したといえども15000円近辺の水準を維持している。アップデート等でマイニング報酬が減額される場合、減額前に相場が上昇して、その後は横ばいないし反落するというパターンからすると、比較的堅調に推移しているという見方もある。トークンセールスの活況によりICOへの注目が戻りつつあることが一因と考えられる。本邦の金商法の改正も、一見規制強化にも見えるが、これによりセキュリティー・トークンのSTOという形での復活が見込まれる事となった。この改正に規制が過剰と指摘する向きは、安易なICOが市場を混乱させ、信用を失墜させた事に対する反省が足りない。そうした参加者は往々にして急激な上昇を望みがちだが、ETHも一進一退を続けながらじりじりと2万円を目指していく展開と考える。ただ、来週に関しては底堅いが上値も重い展開か。

XRP:今週のXRP相場は軟調に推移。当初は35万円を挟んで揉み合い推移したが、週末にかけて値を崩す展開となった。IBMステラ連合がxRapidに対応するWorld Wireを発表、一方CITIはJPMコイン類似のトークン発行を中止するなど次世代送金システムを巡る他陣営に動きが見られる中、上値を重く推移したが、スイスのeコマースサイトがXRP決済を開始、またGMOコインのアンケートで今年1番期待する通貨としてXRPが断然1番とされると、下げ止まる展開。Mercury FXが週次で数百万円規模でのxRapid利用を行っていることを明らかにすると35万円台半ばまで上昇した。しかし、この水準で上値を重くすると、ETHなどアルトコインの下落もあり34円近辺まで下落した。

今回、次世代送金システムの役者が出揃ったが、今回発表されたIBMステラ連合も、当初ハイパーレッジャーの利用を模索していたIBMがステラの助けを借りたのは多分にxRapidを意識してのもの。昨年9月の発表から突貫工事で今回の発表に間に合わせた印象が強いが、決済トークンに汎用性があるなどとしているが、結局、定まっていないとも言える。ようやく実証実験に入る段階でXRPに1年は遅れている。一方、CITIがトークン開発を諦めたのはJPMコインの弱点、すなわちJPMのコルレス間でのみ利用するならばトークンを用いる必要性はない事に気付いたからか。一方で、JPM幹部は仮想通貨の革新者達は結局、銀行を使うとコメントした。例えば、ステーブルコインで国際送金を行った場合、送金側・受取側でそれぞれの国の通貨に交換するのが通常だが、このドルと現地通貨の交換の際に為替が発生し、その決済には突き詰めれば銀行を経由したコルレス決済が必要となるという事を指摘している可能性がある。ただXRPの様にメジャーな仮想通貨の場合は送金側・受取側でそれぞれ現地通貨との相場が立っており、銀行を経由する必要は無い。

しかしリップル社は常に銀行と共に歩む姿勢を強調している。では、なぜJPMと競合するのかと言えば、同行がドルのコルレス決済を守ろうとするからだと考える。本来はグローバル・キャッシュマネージメントで非常にポテンシャルの高い筈のJPMコインの限界はそこにあり、それ故、サンフランシスコの新興企業がウォールストリートの巨人と対等に渡り合えているのだろう。少なくとも現時点ではxRapidが先行しており優位な立場にあると考える。今回上抜けに失敗したが、悲観的になる必要は無いと考える。

BCH:今週のBCH相場は大きく上昇。コインチェックが昨年のハードフォーク時のBCH保有者にBSVを現金で支払う方針を示したことで18000円台まで上昇したが、発表の前からBCHは上昇していた事、今からBCHを購入しても当然のことながらキャッシュバックは得られない事から上値を重くした。その後、アルトコインの下落で17000円を割り込んだが、Bitmain社が夏季の電力料金値下げを見越して20万台のマイニングマシーンを導入するとの報道もあり底堅さを見せている。

LTC:今週のLTC相場は目立った材料の無い中、上値の重い展開。ForbesがLTCが今年2倍に上昇した理由として①商用利用の拡大②ライトニングネットワーク③取引手数料の低下、特にLitecoin Core0.17.1により1/10に引き下げられるとの予想④8月の半減期⑤秘匿性向上などを挙げている。③④⑤などは今後も作用する可能性があり中長期的な上値余地はありそうだ。ただ、来週に関しては引き続き上値は重いか。


FXcoin Weekly Report 2019.03.22.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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