日経社説に見る日本の仮想通貨業界の再出発

2019-03-26 15:50[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

昨日は日本の仮想通貨業界にとって記念すべき日だったかもしれない。Yahoo傘下のTAOTAO(旧ビットアルゴ取引所東京)が5月開業に向け口座受付を開始、マネーパートナーズが大和証券と提携し交換所子会社設立を決定した。金融庁はみなし業者だった楽天ウォレットに仮想通貨交換業登録を認可、更に新規登録申請中だったディーカレットも認可を受けた。もう一つのみなし業者LastRootsは既に持ち分法適用となっていたオウケイウェイブに第3者割当増資を決議、連結子会社となった。これだけの動きが同じ日に起こるとは驚きだ。中でもディーカレットの認可は長く滞って来た新規登録第1号として注目を浴びている。

それに合わせるかの様に産経新聞は「日本は仮想通貨のルール作りに先鞭をつけただけに、今後、適度な規制をかけつつ技術革新を促すことで、「先行者利益」を享受できる可能性が残されている。」とし、6月のG20で議論をリードし、「暗号資産先進国」となれるか慎重なゲーム運びが求められるとしている。また日本経済新聞(以下、日経)も、社説で「幅広い産業への応用が見込まれているブロックチェーン技術を活用した暗号資産を、頭から否定すべきではない。顧客保護と健全な金融革新を両立させる、バランスの取れた規制・監督を追求していくべきだ。」としている。

日付 日経新聞社説 タイトル
2018/1/20 仮想通貨の健全な発展に国際協調を
2018/1/30 仮想通貨取引所の安全性を再点検せよ
2018/2/14 仮想通貨取引にリスク意識を
2018/2/26 規律問われる仮想通貨業界
2018/3/10 仮想通貨業者の選別が必要だ
2018/4/7 出直し迫られる2年目の仮想通貨業界
2018/6/26 仮想通貨の交換事業者は一から出直せ
2019/3/24 健全な金融革新を促す規制・監督を

上図は、昨年1月以降の日経新聞社説で仮想通貨を採り上げている記事のタイトルを抜粋したものだ(目視で拾ったので漏れがあったら申し訳ない)。これを見ると、2018120日にはG20で仮想通貨規制を議論しようとする独仏の呼びかけに呼応して「健全な発展」を目指していたのが、同月26日のコインチェック事件を受け、30日には「再点検せよ」と迫り、214日には利用者にもリスク意識を呼びかけ、同月26日には業界全体の規律を問うている。更に310日には業者の選別にまで言及している。金融庁も全てのみなし仮想通貨交換業者及び複数の仮想通貨交換業者に対し、順次、立入検査を実施。問題が判明したみなし仮想通貨交換業者10社及び登録業者7社に対し、業務停止命令・業務改善命令を出し、この結果、16社あったみなし業者は昨年9月時点で3社に減少した。日経新聞が求めた通り、正に選別された訳だ。同紙が6月に「一からの出直し」を求めたせいか登録済の16社は自主規制団体を立ち上げ、10月に認可、同時に世界にも例を見ない詳細な自主規制ルールを規定した。同時に昨年4月から12月の間に11回に渡る仮想通貨交換業研究会が金融庁により主催され、その報告書に基づき、今回資金決済法および金融商品取引法の改正案が提出されたという流れになっている。同時に、金融庁は新規登録に向けた400項目以上の質問票や審査プロセスを公表、それに合格した第1号が出て来たという訳だ。

前回、同紙の社説に仮想通貨が載ったのは昨年6月で、それから9か月ぶりの今回の社説は、1月以降の出直しを求めるものと若干異なり、当局に利用者保護と技術革新のバランスを求めるトーンに戻っている。この1年間の当局並びに業界の努力がようやくお眼鏡に適ったというべきか。こうした同紙の論調と世間の動きとが凡その一致を見せるのは、同紙が世の中をリードしているからなのか、むしろ世の中の流れが先にあって、同紙がその温度感をうまくすくい上げているのかは分からないが、今回の論調の変化に、日本における仮想通貨戦線の開花宣言を見るのは言い過ぎだろうか。因みに、同紙のコラム春秋の中でビットコイン相場を江戸時代の万年青(おもと)ブームに照らし合わせてバブルに警鐘を鳴らしていた。ピークの5日前である20171213日の記事だ。更に、この18世紀末にバブルを引き起こした万年青は、明治時代にも再びバブルを引き起こしたことを付け加えておく。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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