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2019.3.29【業界イメージ回復、離脱交渉混迷、エマージング市場に不安?】

2019-03-29 18:24[ 松田康生

Weekly Report 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン ビットコインキャッシュ イーサリアム リップル ライトコイン



Review

4000ドル台に乗せる

今週のBTC相場は上値は重いが、下値も堅い展開となった。週前半はBitMEXのアーサーヘイズCEOが年末に1万ドルとの予想を出すも市場の出来高疑惑が再燃したこともあり上値の重い展開が続いた。火曜日には、Yahoo傘下のTAOTAOの口座受付開始、マネーパートナーズと大和証券による新交換所設立、みなし業者だった楽天ウォレットの登録認可、もう一つのみなし業者LastRootsのオウケイウェイブ連結子会社化、そしてディーカレットの新規登録申請業者として初めての認可など本邦交換所に関する好材料が相次いだ。しかし、4000ドルトライに失敗すると海外交換所でのハッキング、BCH下落などもあり42万円台に反落した。その後、EOSなどアルトコインの上昇で半値戻しの水準を抜けると上昇を加速、コインハイブ事件での無罪判決や仮想通貨でSUICAにチャージなどの報道もあり4000ドル台での推移となっている。

Outlook

逃避買いは見られず

来週のBTC相場は堅調な推移を予想する。先週は「底堅い推移」を予想、不戦協定的な意味合いを持ち域内の結束を守りたいEUからすれば離脱を決め安全保障上の繋がりが薄くなった英国の困惑はメリットである為、離脱交渉は更に混迷し、流石に逃避買いが出るのではと申し上げた。予想通り状況は混迷の度を増しているが、昨日、下落したとはいえ、英ポンドは1.3台で落ち着いており、大きく逃避買いが出ている様子は見られていない。EUは、英政府と合意した離脱案を3月29日までに可決するか、そうでなければ長期延期か合意なき離脱を4月12日までに選ぶように最後通告を突きつけた。これに対し英議会は各派閥が好き好きに離脱案を提案し8つの案全てが否決するという迷走ぶりだ。事態を憂慮したメイ首相は離脱案を可決すれば、自らは首相を退くとしても、まだ可決の目途はたっていない。まだ本命は長期延期による合意なき離脱回避かもしれないが、アイルランド問題が絡むだけ合意なき離脱の可能性は十分あるし、市場は殆ど織り込んでいない。

イメージ回復

逃避買いでなければ、何が今週の堅調な相場を牽引したかと言えば、本邦における仮想通貨業界の雪解けだと考える。詳しくはトピック日経社説に見る日本の仮想通貨業界の再出発および本日のビットコイン反発の背景~仮想通貨に春は来るかで申し上げたが、例えば仮想通貨によるSUICAへのチャージは、よく考えるとそれ自体が強い仮想通貨需要をもたらすわけでも決済利用を拡大する訳でもないが、コインチェック事件以降、失墜した仮想通貨に対する一般のイメージ回復には役立つだろう。更に各種ポイント間の交換が仮想通貨を通して可能になれば(技術的にはトークンを仲介させる必要は無いのだが)、仮想通貨によって世の中が便利になるという事を一般の人々も実感できるだろう。

景気減速の影響

もう一つ気になる動きは世界景気の後退とエマージング通貨の動揺だ。世界が景気後退局面に入ったのか否かはまだ議論の分かれるところだ。しかし、こうした局面に最も弱いアセットクラスの一つがエマージング通貨だ。特に経常収支赤字国で対外デフォルトの常習犯であるアルゼンチンの通貨は3月に入って1割下落している。これに呼応してかブラジルレアルやトルコリラなど他の赤字国に飛び火し始めている。こうした高金利通貨は世界経済が安定している時は金利差を享受でき、場合によってはキャピタルゲインすら得られるが、経済が逆回りし始めると真っ先に資金が引き揚げられるので注意が必要だ。米経済が風邪をこじらせると、中南米の赤字国は肺炎では済まなくなる。

雰囲気の好転

来週は新元号が発表され、徐々に祝賀ムードが盛り上がろう。そうした中、仮想通貨市場の雰囲気も徐々に好転すると考える。ただ、実際に実需が増えた訳でもなく、米ETF審査も延期される可能性が高く、上がっても50万円が精一杯か。

予想レンジ BTC 40万円~50万円

Altcoin

ETH:今週のETH相場は目立った材料がない中、堅調なアルトコイン相場に連れ高となる展開となった。BTCやETHに6%付利すると評判になったBlockFiが希望者殺到により受入金利を2%に引き下げたものの、目立った影響もなく15000前後での取引が続いた。その後、シンガポールの交換所DragonEXでのハッキング事件やBCH開発者アモーリ・セシェ氏のUnlimitedサポート停止報道でBCHが下落すると連れ安となるも、ハッキング規模は比較的小さく、また流出した通貨の一部は他取引所で凍結されており、またセシェ氏もBCHの開発には残ることからその後切り返す展開。仮想通貨格付け会社Weiss RatingでEOSが2位に入り急騰すると連れ高となるが15500手前で上値を重くした。Binanceに続いてHuobiの初回トークンセールも成功した。今回はTRONベースでETHに直接影響はないが、こうしたトークンセールブームがICO復活への道筋となるか期待される。但し、ここ数回のIEOに関しては、交換所の目を通しているとはいえ、良くも悪くもマネーゲーム的な印象が強く、本格的で実経済に資するICOで無ければ、せっかく回復しかけた仮想通貨業界のイメージを地に落としかねず心配だ。

XRP:今週のXRP相場は下に行って来いの展開となった。送金大手Western Unionがステラ陣営のThunesと提携、またThe Block等で米弁護士のコメントとしてXRPが証券にあたるか否かの集団訴訟の判断は2020年末以降となるとの見通しが出された事もあり上値が重い推移。BCH売りもありアルトコインが全面安となると一時33円を割り込んだ。しかしWeiss Ratingの格付けでXRPが1位とされると切り返し、週末にかけてはXRP関連投資に重きを置くファンドArrington XRP Capitalが仮想通貨投資ファンド「ByteSize Capital」を買収、仮想通貨投資を本格化する姿勢を見せ、またxCurrentを実装した国内送金アプリを提供するマネータップ社にセブン銀行を含む13社が出資するなど好材料が続いた。

次世代送金を巡る役者出揃いつつあるが、ライバル陣営の中身を精査してみるとブロックチェーン化する意味が無かったり、まだ実験段階に過ぎなかったりと、現時点ではxRapidの優位性は揺るがない点については先週のトピックで申し上げた通り。ステラとの提携を始めたWestern Unionに関しても、同時進行でXRPの有用性をテストしており、むしろ業界全体として送金のトークン利用の方向性が明確になりつつある過程と歓迎すべきとさえ思われる。

リップル社による売りを吸収するには出来高が重要と申し上げたが、その出来高も1月平均472百万ドルに対し直近1週間は723百万ドルと1.5倍の水準を記録している。それでもなお上値が重い原因の一つとして、XRP人気が高い日本における投資家心理の回復が遅れていることが考えられる。勿論、日本にはリップラーと呼ばれるXRPを愛する人々が多く存在するが、一方で相場の水準を維持するには新規の投資家層が必要だろう。そうした意味で、今回、日本の仮想通貨業界でのイメージ回復の兆しは朗報と考える。新たな層が参入すれば、弊社の分析にある様に、勉強熱心である一方、非中央集権とか国家からの自由といったイデオロギーはあまり気にしない傾向がある日本人投資家はXRPに流れてくると考える。

BCH:今週のBCH相場は堅調な展開。Bitmain社が夏季電力値下げを見越してマイニング機器を20万台導入、また新型機種の販売も好調と伝わると同社の復調を好感してか18000円台を回復、しばらく揉み合っていたが、BCH ABC中心開発者で善良なる独裁者とされるアモーリ・セシェ氏がBitcoin Unlimitedのサポートを停止するとしたことで17000円台へ急落。しかし、ABCとSV双方をカバーするUnlimitedのやり方に不満を持っただけで、ABCとしてBCHの開発は続けるとの見方から下げ幅は限定的に留まった。その後、IPO申請が期限切れとなるBitmain社が新体制を発表、創業者ウー・ジハン氏も幹部として残り、またIPOも再提出に意欲を示している事もあり19000近辺まで値を戻したが、IPO失敗に絡み集団訴訟の動きもあると情報が錯綜し上値を重くしている。

LTC:今週のLTC相場は目立った材料の無い中、堅調なアルトコイン相場に連れ底堅い値動きを見せた。週前半は上値の重い展開を続けたが、仮想通貨関連の旅行サイトTravala.comでLTC受入を開始したこともあり下げ止まりを見せると、EOSやBCHの反発もあり大きく値を戻している。背景として、従来から指摘されている、半減期が近い事、手数料が更に低下する見込みである事、秘匿性の向上などに加え、ハッシュレートも上昇傾向にある事が指摘されている。ハッシュレートは価格上昇の結果という側面もあるが、コミュニティーが活性化している事も事実。4月には財団がスポンサーするK POPイベントも予定されており、しばらくは底堅い推移を続けるか。


FXcoin Weekly Report 2019.03.29.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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