2019.4.1【新元号は令和。日本の仮想通貨市場にも春到来か。】

2019-04-01 17:48[ 松田康生

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Review

春到来

3月のBTC相場は続伸も、下値は堅いが上値も重い狭いレンジでの取引となった。アップデートを終えマイニング報酬が2/3となったETHが反落するとBTCも41万円台の月間安値を付けたが、スターバックスがBTC受入を検討しているとの報道やトークンセールの好評でBinanceコインが上昇したこともあり43万円台に値を戻した。コインチェック事件の主犯が北朝鮮だったというショッキングな報道で乱高下、仮通貨関連法案の国会提出後は44万円台に値を上げた。しかしBakktやETFの承認が遅れるとの見方から上値を重くした。金融庁がディカーレットに新規申請先として初の登録を認可、その他、本邦交換所を巡る好材料が続き上値トライを始めるも跳ね返されるとBCHの下落もあり42万円台に下落。その後、反発を見せると、コインハイブ事件の無罪判決や仮想通貨でSUICAにチャージ計画などもあり45万円台に値を上げている。

Outlook

上値重いが下値も堅かった3月

先月は「上値は重いが、下値も堅い、揉み合い推移」と申し上げたが、まさにその通りの展開となった。納税シーズンである3月は5年連続で相場が下落しており、当初は上値が重いが、昨年の相場で利益を上げている人もそういないことから、そうした換金売りは限定的で後半からじりじり値を上げるという見立てもほぼその通りとなった。ただ、材料的には個人的に注目していたBREXIT関連の逃避買いやマイナーの売り圧力の減退といった感じではなく、仮想通貨業界を巡る明るい話題から買い圧力が強く出来高が増加、マイナーや投機筋の戻り売りを吸収した形だった。CoinMarketCapによる3月のBTC出来高は平均96億ドル/日で1月の同54億ドルから7割以上増加している。

日本人の出遅れ

一方、昨年末の予想に対する状況はどうであろうか。BTCは50万円予想のところ45万円となった。これは12月が大底と予想し、しかしETFなど機関投資家参入の期待先行から暫くはじりじりとしか上昇しないとしたところ、12月は大底だったが1月末にダブルボトムを形成したので若干回復が後ずれしている形で、方向感はほぼあっており、ETHも同様で予想ほど戻ってはいないが、まずまずの範囲であろう。この様に大筋の方向性はあっていたのだが、その他のアルトコインに関してはまちまちだった。すなわち、強いと考えていたXRPが冴えず、冴えないとしていたLTC・BCHが堅調だった。トピックで申し上げた通り、LTC決済が広がるイメージを持ちにくく、匿名性実装にもネガティブな日本にいるとLTCの人気が理解しにくく日本人に人気のXRPに目が向きがちになる。即ち、今回の相場反転は日本以外が中心で、それ故、LTCやBCHに人気が集まり、XRPが冴えなかったのだと考える。しかし、3月の一連の動き、仮想通貨交換業研究会の成果として仮想通貨関連法令改正案が国会に提出され、未登録のみなし業者は1社のみとなり、新規申請の中から初めて登録が出た。中でもディーカレットが仮想通貨でSUICAにチャージするという試みは、実用性ともかく、怪しい、危ないといった仮想通貨業界のイメージ回復に役立とう。

戻りの目途は50-55万円

イメージとしてはSUICAなど分かり易いものが重要だが、仮想通貨市場には、やはり今回の金商法の改正が重要だろう。これにより世界で初めて仮想通貨市場参加者に不正取引の禁止が義務付けられた。もう大口の見せ玉やSNSで示し合わせて草コインの価格を吊り上げるといった手法は認められない。これは、もちろん日本だけの法律だが、これが徐々に他の国に広がるにつれ、規制の効力が強まっていく。それでは規制のない国に取引が逃げて行くのではという考え方もあるが、今の様に規制の緩い国めがけて交換所が逃げて行くような業界では世界経済の1ピースとして認識されることは適わないだろう。機関投資家の参入はまだ先だ。同様に、様々な実用化が実現されてきたが、多くはまだスタート地点に過ぎない。従って、今月は好転した地合いを背景に上値追いの展開を予想するが、実際に実需が付いてくるわけではないので、ある程度上昇すると反落する。年初来高値の46万円を抜けてから、次の目途が50万円、そして11月の急落の半値戻しの55万円、その辺りまで上昇すると、一旦調整を迎えるものと考える。

予想レンジ:40万円~55万円

Topic

マイナーの売り圧力と半減期~XRPとの比較付
2月のLTCとETHの上昇の背景にマイニング報酬の減額が指摘された。現時点で仮想通貨市場における最大の実需フローはマイナーによる報酬の売りだが、半減期にはこの売り圧力が減少するという効果がある。BTCの過去2回の半減期では半減期1か月前に上昇、その後1か月は横ばいとなる動きが見られた。因みにマイナーの報酬の出来高対比では、BTCが1/1100、ETHが1/2400、LTCは1/1800、XRPは1/600.リップル社にはその分、実用性に向けた開発や実社会への働きかけが期待されている。
BitMEX規約改定について
BitMEX規約改定で規制対象国での利用を認めないとしたが日本は規制対象外とされた。この背景には、そもそも証拠金取引は現時点では日本では法規制対象外だからだ。今後、金商法改正により事情が変更となる可能性もあるので要注意だ。
FATFの仮想通貨規制草案の気になる部分
FATF総会を受け仮想通貨に対する規制の草案が公表された。内容は昨年10月の勧告改正時で既出のものが多い。ただ、各国は必要な登録なしに活動を行う個人・法人を特定し制裁をすべきという一文が入った。国内の居住者が海外の交換所を利用することは、自主的であれば顧客保護上認められるが、AML/CFTの観点から今後規制される可能性があるので注意が必要だ。
仮想通貨取引所?交換所?ビットコインFX? 知って損はない違いに隠された意味
取引所とは東証などを示す。仮想通貨の場合は交換所が正解。仮想通貨の証拠金取引をFX取引と呼ぶのも誤解を招きやすく自主規制団体から警鐘が鳴らされている。更に掘り下げると、外為証拠金は現物と紐づけられているが、仮想通貨の証拠金は現物との紐づけが無い。一方、証拠金取引には現物のヘッジという意味があるが、現物との乖離防止が交換業者に義務付けられている。尚、証拠金倍率の4倍への引き下げは顧客保護の為。業者が賛成し、顧客のが一部が不満を持つのは不思議。
ブロックチェーンの未来予想図~xRapidから年金・介護まで
経産省の描く未来像は現在進行中の案件を延長したものが多く、識者は非中央集権に着目し、新たな経済圏の誕生を予想。現代の中央集権的な社会経済構造の行き詰まりが背景か。これらに対し、ブロックチェーンで出来るものでなく、解決して欲しい課題こそがキラーコンテンツになり得る。送金・トレードファイナンスでXRPが先行、貧困防止対策として期待されている。国内では少子高齢化・財政赤字・地方再生。ふるさと納税の地域通貨での返礼、電子カルテの普及、介護保険や年金のブロックチェーン化に期待したい。
IBM・ステラ連合がWorld Wireを発表。xRapidの勝算は?
IBM・ステラ連合がIBM Blockchain World Wireを発表。xRapid、JPMコインと並び次世代送金システムの役者が出揃った。IBMがハイパーレッジャーよりステラを進めたのはxRapidの登場が影響か。これにより送金のデジタルトークン化の方向性が強まった。一方、トークン化を見送ったCITIは、JPM同様ドル決済を手放したくないのが本音。IBM・ステラ連合は、汎用性あるが、同床異夢の可能性も。天下取りの行方はまだ分からないが、作り手だけでなく、ユーザーの事情や社会的意義に応えられる技術こそが生き残ると考える。
日経社説に見る日本の仮想通貨業界の再出発
3月25日は日本の仮想通貨業界の記念すべき日。中でも日経の社説で9か月ぶりに仮想通貨に触れ「幅広い産業への応用が見込まれているブロックチェーン技術を活用した暗号資産を、頭から否定すべきではない。顧客保護と健全な金融革新を両立させる、バランスの取れた規制・監督を追求していくべきだ。」としたのは重要。コインチェック事件以降、厳しい目に晒された仮想通貨業界だが、この1年間の取組がよゆやく世間に認められ始めた兆しかもしれない。
速報:本日のビットコイン反発の背景~仮想通貨に春は来るか
3月27日の反発はきっかけはともかく25日の潮目の変化が影響していると考える。新規に登録されたディーカレットによる仮想通貨を使ったSUICAへのチャージサービスも、実際にそのサービスをどれだけ使うかというよりもTVニュースで「仮想通貨の普及が広がるか注目される」とコメントすることに意味がある。ようやく日本の仮想通貨業界へのイメージが変わりつつある。


Altcoin

ETH:3月のETH相場は月初に反落するも、その後は揉み合い推移となった。コンスタンチノープルのアップデートが成功するも、マイニング報酬が減額される時のパターンとして事前に上昇していた分、14000円近辺まで反落。しかし、Binanceのトークンセール第3弾が発表されBNBが上昇、スイスの証券取引所でETH連動プロダクツが上場されたこともあり15000円台半ばまで切り返す。その後、再び上値を重くしたがBittrexがトークンセールを発表し下げ止まりを見せる。しかし、このセールは運営側に問題が発生したとして直前に中止となったが、むしろトークンセールによる交換所のけん制機能が働いたとして評価する声もあった。ペンディングとなっていたASIC耐性のProgPoWの実装が決まるとマイニングの寡占を防げるとの見方から16000円近辺まで反発するも、やはりこの水準では上値が重く、SEC委員長が以前ETHは証券にあたらないとしたヒルマン氏の発言を指示するとしたが、Binanceのトークンセールに続き、Huobiのトークンセールも成功すると14000円台で下げ止まり、格付け会社Weiss Ratingで2位となったEOSが急騰すると連れ高となり15000円台を回復している。今月のETH相場は堅調な推移を予想する。

先月の上値の重さは、マイニング報酬減額前の上昇の反動と見る。2月に11000円台から19000円台へ急騰した相場が反落し15000円近辺で落ち着きどころを探った形だ。交換所によるトークンセールは投機的な側面も見られるが、ICO復活に向けた新たな取組と評価される。本邦でもいよいよ金商法改正案が国会に提出され、STOのルール整備が本格化している。こうした中、4月のETH相場は堅調な推移を予想する。

XRP:3月のXRP相場は軟調な推移となった。SWELL開催の報に36円台を伺う展開で始まったが、QUOINEで一時20円が付くと33円台まで反落。送金業者マーキュリーがメキシコーフィリピン間でxRapidの送金を成功させたとの報に切り返すと、Binanceの公式ウォレットでXRPサポートが開始された事もあり35円台を回復する。しかし、次世代送金でライバル関係にあるIBMがステラのブロックチェーン上でステーブルコインを発行する計画を明らかにすると上値を重くし、XRPが証券に該当するか否かに関わる集団訴訟の判断が2020年末以降に長引きそうとの専門家のコメントが伝わるとアルトコイン反落の流れもあり一時33円を割り込んだ。しかし格付け会社Weiss RatingでXRPが1位となると35円近辺まで切り返した。

今月のXRP相場は堅調な推移を予想する。JPMコインに続きIBMステラ連合に動きが出て、次世代送金システムの役者が出揃い、追いかけられるXRPは上値の重い展開が続いている。しかし、トピックでご説明した通り、IBMがハイパーレッジャーでなくステラと組んだのはxRapidへの警戒感だと考えていて、それだけxRapidは先進的な取組だ。朝ドラでもあった様に画期的な商品が浸透するのには時間がかかるし、この送金のトークン利用の流れは止められない。最終的にxRapidが生き残るのかは不明だが当面はこの先行者利益を得られると考える。

それでも今年に入りアルトコインが堅調な中でXRPの出遅れは目立っている。これはXRP人気が高い日本における市場心理の回復が遅れていることが一因と考える。そうした意味では金商法・資金決済法修正案の提出から続く一連の本邦仮想通貨業界の雪解けの動きはXRP相場の回復の下支えとなると考えている。


BCH:3月のBCH相場は大きく上昇。月前半は14000円近辺で揉み合っていたが月央に18000円近辺まで大きく上昇。背景として、コインチェックがBCH保有者に昨年のハードフォークで付与されたBSVを現金で支払う方針を固めた事が指摘される。楽天ウォレットも続いて同様の方針を発表した。また長らく沈黙気味だったBCHのサポーターとされるBitmain社に動きが出て来たことも好感された。夏季の電力下げを見越し大量のマイニング機器を稼働、新型マイニングマシーンの売れ行きも好調とされ、期限切れとなったIPOも再提出の意向を示している。一方で、同社に対する集団訴訟の動きや、Bitcoin ABCのアモーリ・セシェ氏がbitcoin Unlimitedのサポートを停止するなど不安材料は残る。ただ、4月に関しては、5月のアップデートに向けた期待感もあり、底堅い展開を予想する。

LTC:3月のLTC相場は引き続き堅調な推移。経済危機下のベネズエラで仮想通貨の送金サービスがBTCとLTCのみ認められると5000円近辺から6000円台へ上昇。LTC基金が主宰するキックボクシングイベントが終了すると上値を重くするが、創始者チャーリー・リーがLiskとの提携を示唆するとLiskが急上昇、LTCも若干連れ高となっている。今年に入っての上昇にハッシュレート上昇を挙げる向きもあるが、これは価格が上昇しているからマイナー達が集まっているという側面もある。匿名性の開発に関しては日本だけでなくフランスでも禁止する動きも見られ諸手では賛成できない。4月予定のK-POPイベントまでは堅調さを保とうが、その後の反落する可能性もある。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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