コインベースがXRP送金~見えてくる次世代送金のポイント

2019-04-03 22:06[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 リップル

コインベースがXRPUSDCUSDコイン)を使った海外送金を無償で提供するサービスを開始する模様だ。同社のサイトによれば、コインベースの顧客は海外に送金したい金額をXRPないしUSDCに交換し、コインベースにアカウントを持つユーザーもしくは互換性のあるウォレットに送金、受信者はXRPを現地の法定通貨に換金する。XRPなど仮想通貨の国境を越えた送金を啓蒙する目的でコインベースのアカウント間の送金には手数料を徴収しないそうだ。同社サイトではXRPUSDCと銀行を利用した送金との比較も掲載されており、仮想通貨のメリットを強調している。XRP上場をなかなか認めなかった同社のこの動きは隔世の感もある。因みに利用できるのは欧州を中心とした40か国で、残念ながら米国も日本も入っていない。

よく考えれば、これは別にコインベース特有のサービスではなく、XRPに限った話でもない。国境を越えてアドレス間で自由に送金が可能であることが仮想通貨の特徴だ。ただXRPはその中で送金に特化し、ただ同然の手数料で非常に早く送金を完了できる。1ブロックの生成に10分要するBTCだと承認されてブロックチェーンに格納されて取引の完了を確認するまで時間がかかる。また、次世代送金で先んじて商用利用が開始されたxRapidも送金業者が法定通貨をXRPに両替して、受取業者が受け取ったXRPを法定通貨に両替する、この作業を同時に行うサービスを提供しているだけだ。それぞれの両替は送金側・受取側の交換所が担っている。ただ受取人が法定通貨建てで確定金額を受け取りたいときは、送金側・受取側で同時にXRPとの交換レートを確定する必要がある。このあたりのノウハウをきちんと克服したのがxRapidだ。一方で、ポイントさえ押さえれば、複雑なサービスでもなく、他のライバルたちも追随を企てている。

ところでコインベースのサイトには、送金に先立ち「受取人がXRPまたはUSDCを現地通貨に変換できることを確認してください」とある。当たり前のことだ。ただ、この当たり前の事が次世代送金における重要なファクターなのだ。以前、IBM・ステラ連合のWorld Wireをトピックでご紹介した。xRapidXRPに代わり、決済トークンとしてStrongholdUSDというステーブルコインを決済用に採用した。同時に、ステラ社が発行するXLMも使用可能としている。もし、このステーブルコインを利用してイタリアからスイス間の送金をしたことを考えてみよう。送金側のイタリアではユーロをドル建てのステーブルコインに両替をする。受取側のスイスではドル建てステーブルコインをスイスフランに両替する。しかし、StrongholdUSDを両替できる交換所が両国にあるだろうか。これはそのステーブルコインがメジャーで無いからという話ではない。もしUSDCを使用しても、それぞれの国の交換所はUSDCUSDに換えて、どこかの銀行でUSDとユーロないしスイスフランと両替する。すなわち、ドル建てステーブルコインを使う以上、米国以外では為替が発生し、その決済に法定通貨のUSDが必要となる。これをイタリア人やスイス人が入手するには運営側から直接貰おうが米国の交換所で交換しようがSWIFTを使ったUSDのコルレス決済が必要となる訳だ。結局、SWIFTを代替したつもりでいるが、誰かにSWIFT決済を肩代わりさせているのに過ぎない。

この事にいち早く気付いたJPモルガンはJPMコインを自行コルレス内だけで完結させる設計にしたのかもしれないし、CITIは独自コインの発行を断念している。ここが、先ほど述べた次世代送金のポイントで、すなわち時価総額3位で世界中で現地通貨に両替可能なXRPだからこそ、送金の媒介としてワークする。そういう意味ではIBM・ステラ連合の場合、XLMを利用する方がスキームとしては優れていると考えるが、日本仮想通貨交換業協会によれば1月時点でXRPを取り扱う交換所が日本に9社あるのに対し、XLMを取り扱う業者は無い。StrongholdUSDに関しては、小職が思いもつかないようなうまい方策が出てくることを期待しているし、まだそこまで検討する段階に達していないのかもしれない。小職が現時点ではXRPが先行していると考える所以だ。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

アーカイブ