2019.4.12【もし、中国がマイニングを禁止したら、どうなる?】

2019-04-12 17:44[ 松田康生

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Review

60万円にワンタッチ

今週のBTC相場は上に行って来いの展開。アルトコイン主導の循環物色が一巡する中、漸く木曜日に60万円台に乗せるも失速する形となった。週初は韓国での規制緩和の動きなどを好感したXRPの上昇もあり58万円台に乗せるも反落、続いてTRONとの提携が取り沙汰されたETHが上昇するとBTCも60万円をトライするも失敗、TRONの上昇も続いたが59万円台に戻すのが精一杯で、BTCとアルトコインが牽引し合う好循環が一巡した印象を与えた。しかし、中国がマイニングを禁止するとの観測が流れても、市場は58万円近辺で底堅さを見せるとOKexのトークンセールが過熱、BTCも59万円台に値を戻すとFOMC議事録の金融安定性への不安に反応した事もあり60万円台に値を上げた。しかし、この水準で上値を重くすると、56万円台まで値を下げた。合意なき離脱が懸念されたBREXITだがEU首脳会談で半年の延期が合意され、逃避買いは不発に終わっている。

Outlook

60万円突破には2週間以上かかるか

来週のBTC相場はレンジの下値を探る展開を予想する。先週は「53万円台では底堅く、60万円近辺では上値の重い展開。落ち着きどころは55万円近辺か」と上値の重い展開を予想した。実際、60万円をワンタッチして55万円近辺での取引となっている。先週のWeeklyで申し上げた様に昨年、9か月に渡りサポートだった60万円台は強いレジスタンスとして立ちはだかる。目安として1日100億ドルペースで60万円台に突入するのに1ヶ月、60-70万円を上抜けするのには5ヶ月程度要するイメージで、ここ1週間の出来高は150億ドルペースなので、それでも60万円台に乗せるのには、あくまで目安だが、先週から数えて3週間程度、あと2週間は要するか。

上がっては下がるの繰り返し

材料面から今回の上昇を振り返ると、規制面での進展が挙げられる。この問題に目途が立たないと機関投資家の本格参入は覚束ない。推進派のラガルドIMF専務理事もCNBCで規制の無いイノベーションは望まないとしている。その点で3月15日に提出された本邦の仮想通貨関連法案は大きな一歩だった。ついにこの市場に相場操縦や風説の流布など不正取引の禁止が導入される。しかし、まだ法案が国会に提出された段階で、成立しても1国だけでは効果は薄く、G20で各国での法制化を呼び掛けていく事になろう。そう考えると規制の整備にはまだまだ時間がかかり、期待先行で上昇した相場は失望を繰り返す。明るい兆しが見えたとはいえ、仮想通貨が市民権を得る道のりは長い。

(頭の体操)中国のマイニングが禁止されたらどうなるか

衝撃だった中国のマイニング禁止検討というニュースだが、その後Coindeskが自動的に禁止を意味しないと報じるなど、その解釈が錯綜している。一方で、中国へのマイニングの集中が是正されると歓迎する声やコストの上昇は価格上昇をもたらすという声も聞かれる。弊社はマイニングコストが仮想通貨価格の源泉という立場は取らないが、そうとはいえコストが価格に影響するのは事実だ。そこで、そのマイニングコストと価格の関係を下にご紹介した(試算方法は別稿ご参照)。ここでは限界的変動費である電気代のみ試算した。緑がBTC価格で、濃淡の青線が電気代別のコストだ。5円が中国、10円が他地区のイメージだ。まず、一見して相関性は見受けられないが、11月の急落と前後してコストも下がっている。これは、コストが厳しくなったマイナーが機会を止めた結果、計算難度が下がるという調節機能が働いたからだ。そして35万円でダブルボトムを付けるとコストも若干上がっている。これを見ると、このコストは相場のサポートとして働いている気もする。そうだすれば中国から他地域へのシフトは電気代の上昇により相場の下値を切り上げる効果があるかもしれない。電気代が5円上がるとざっくりコストは30万円上昇する。ただ最新の機器だとコストはもう少し安いので、実際は20万円程度、今の安値35万円から現在の55万円程度まで切りあがるイメージか。あくまで頭の体操だが、仮に本当に禁止された際に相場が上昇しても不思議に思わない方がいい。

予想レンジ BTC 45万円~60万円

そうした中、レンジの上限を60万円と確認した相場は、下限を探しに行く展開を予想する。当面の目途は46万円と60万円半値押しで4月4日の安値の53万円。次は3月25日の43万円と60万円半値の51.5万円で、最も弱気なシナリオでも、今回の急騰前のレジスタンスだった46万円ではサポートされると考える。

Altcoin

ETH:今週のETH相場は上に行って来いの展開。週前半は2万円台に乗せ相場を牽引するが、BTCの反落もあり週末にかけて失速している。今回の上昇相場でやや出遅れ気味だったETHだが、TRONの創業者がイーサリアムとの協力を仄めかすと上げ足を強め、18000円台から20000円台に急騰した。その後、上値を重くし、TRONの上昇に連れ20000円台を回復するも失速した。その後、しばらくもみ合ったが、OKexのIEOが1秒で完売するなどトークンセールの好調さもあり2万円台を回復、BTCの60万円乗せに反応したが、むしろその後の失速に連れる形で18000円台に値を戻している。

先日のトピックでご紹介した通り、今回の循環物色局面ではBTC→LTC・BCH→XRP→ETHとけん引役が後退していった動きが2017年12月-2018年1月の値動きに似ていた事は、今回の好循環が一巡したことを示唆している可能性がある。また、4月に入ってからETH自体に目立った好材料が見られたわけではなく、そうした中、16000円から20000円に上昇、18000円の反落した値動きはむしろ出来過ぎだったのかもしれない。好調なトークンセールはICO復活への期待を抱かせるが、足元では投機色が強く、過熱感も見られ若干危うい。タイのクルンタイ銀行の送金へのETHへの利用は、XRPで先行する他行への対抗心が見え隠れするが、これだけネットワークが重くなっているETHが送金に向いているとは思い難い。しかし、こうしたアイデアが出てくることもETHの有用性の現れとも言える。Cointelegraphによれば第1四半期にブロックチェーン系アプリの分析サイトに新たに登録された504アプリのうち半数がETH系という。ただ、その有用性を活かすためにも、スケーラビリティーの改善などのアップデートを進展させる事が急務で、ETH相場のカギとなろう。来週については18000円近辺で落ち着きどころを探る展開か。

XRP:今週のXRP相場は反落。XRP人気が高い韓国における規制緩和の動きや創業者による大学への多額の寄付などもあり先週末に大きく上昇していたが、MIT technology reviewによるSECの証券該当性のガイダンスはこれまでの繰り返しに過ぎないといった報道もあり上値を重くすると上値を重くし、その後、若干値を戻すも、BTCの反落を受け36円台へ急落、先週の上げを打ち消す形となった。

トピック:なぜビットコインキャッシュの上昇が大きかったのか~出来高から急騰相場を振り返るでご紹介した通り、XRPの出来高は増加傾向にあるが、ピーク時と比べるとまだ2-3割程度までしか回復していない。同じくトピック:マイナーの売り圧力と半減期~XRPとの比較付で申し上げた様にマイナーの売りと比較して運営側の売り圧力が大きいXRPにとって出来高の回復は重要となる。その点、本邦における雰囲気の好転や韓国の規制緩和の動きはプラスに働こうが、一段の上値を伺うには更なる好材料が必要か。そうした中、来週に関しては上値の重い展開が続くか。但し、XRPの送金への利用は増えていく方向にあると思われ、引き続き長期的にはポジティブに見ている。

BCH:今週のBCH相場は前半は堅調な展開を見せたが、後半に大きく値を下げる、荒っぽい展開を見せた。BCHのサポーター、ロジャー・バー氏がMonarch Blockchain Corporationのアドバイザーに就任、同社のモナーク・ウォレットのアプリ内でBCHサポートされたとの発表に値を上げるも反落、その後、ETHの上昇もあり36000円台までの上昇を見せた。しかし、中国国内でのマイニング禁止検討観測による、同じく同社のサポーターであるBitmain社への影響が不安視されたこともあり上値を重くした。その後、BTC相場が崩れ始めるとBCHも大きく下落、30000円を割り込む荒っぽい展開を見せている。上述のトピックでご紹介した通り、BCHは出来高が回復している訳でも無く、昨年の下落により売り圧力が少なかったために大きく上昇したと考えていて、下がる局面でもさしたる材料も無く大きな値幅が出ることは自然の動きか。ForbesはBCHは2倍近く上昇したBCHを指して、激しい潮汐は船を遠ざけるという表現で、投資家離れを指摘した。今回ピークからの下落幅も2割程度であり、今週は下値余地を探る展開か。

LTC:今週のLTC相場は大きく上昇後、反落した。先週指摘した通り、何故かLTC財団が後援するK POPイベントに向けて急騰し、その後はじりじりと値を下げる展開。元GSで仮想通貨ヘッジファンドを運営するノボグラッツ氏がSell LTC Buy BTCと呟くと創始者チャーリー・リーがBTCの手数料高騰を例に反論する一幕があったが、結局軟調に推移、BTC相場の反落に大きく値を下げている。ただ、今回のピークからの2割強の反落は、年初来で3倍近く値を上げている状況からすれば、自然な調整の範囲内と考える。LTCは年初から出来高が10倍近く増加、ピーク時の半分程度まで回復している点がBCHと異なり、流石に上値追いは難しいだろうが、相応の底堅さを見せるものと予想する。


FXcoin Weekly Report 2019.04.12.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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