日本のイニシアティブへの布石か~FSBに見る微妙な変化

2019-04-15 21:41[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

週末、ワシントンでのG20財務相・中銀総裁会議が終幕した。日経新聞によれば今回の会合は6月に福岡で開催される次回会合や大阪での首脳会議の準備段階との位置づけで共同声明は採択されなかった。仮想通貨(暗号資産)については、各国当局がテロ資金供与の防止策で協力することを確認したとされている。マネーロンダリングやテロ資金対策(AML/CFT)を担うFATFは6月のG20に向けFATF基準をどのように仮想通貨分野に適用するかに関する草案を既に2月末に発表済で、交換所だけでなく、ウォレット提供業者とICOに関わるサービス提供者、まとめてVASP(仮想通貨サービスプロバイダー)に規制の対象を広げており、次回G20で採択されるという見方が強い。しかし、仮想通貨に関して次回G20はこのFATF基準だけだろうか。

今回のG20に先駆けてFSB(金融安定化理事会)は2つの文章を提出している。一つは4月5日付けの暗号資産規制機関ディレクトリ(Crypto-assets regulators directory)、もう一つは4月4日付けG20財務相・中銀総裁向け書簡だ。前者はG20出席国や香港やシンガポール、スイスなどの金融センター、国際規制機関などの書簡範囲が記載されている。そして書簡の方では以下の様に記載されている。日本が議長国となるG20で特に焦点があたる技術革新は金融システムに重要な変化をもたらす可能性があり、経済的利益が約束されていると同時に新たなリスクがある。FSBは引き続き暗号資産が金融安定にもたらす影響をモニターすると共にこの分野の規制のギャップを見分ける作業をしている。その上で、4月に上記ディレクトリをG20に提出し、6月のG20に分散金融技術が金融安定化にどのような影響をもたらすかについての報告書を提出しているとしている。この文にはfor the governance of financial regulationとさりげなく付いている。

仮想通貨業界に対する国際的な規制は、まずFSBが金融安定化に影響がないかモニターし、現時点では問題が無いとされている。従って、FSBとは別にFATFのAML/CFT関連規制だけがかかっている。しかし、今後は、金融安定化を守るために国際的に規制策定の足並みを揃えていくという可能性は十分にある。FRBは金融機関に対するストレステストの項目として北朝鮮における戦争と共にBTC市場の崩壊を挙げている。これを策定した責任者はFEDにおける規制担当のコールズ副議長で、FSBの総裁を兼任している。上記の規制機関ディレクトリも規制のギャップを見分ける作業も昨年11月のブエノスアイレスG20以前は目にしていない。上記を総合すると、BTC相場の崩壊などにより暗号資産市場が金融安定化に脅威をもたらすことを防ぐためにグローバルな規制面での協調に踏み出す準備段階として、規制機関の一覧とそのギャップの調査を始めていると考えてもそう飛躍は無いと考える。

折しも、日本の金融庁は金商法・資金決済法改正により暗号資産に名称を変更し、その不正取引の禁止を世界で初めて法制化したが、これも1国だけ制定しても意味は無い。そこで、想像の域を出ないが、G20前までに法制化した上で世界に同様の規制を広げていくイニシアティブを取っていく、そうした布石がこれらのFSB文章の上で打たれている気がしてならない。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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