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バブルのピークが見分けられる?~MMT(現代貨幣理論)と仮想通貨市場

2019-04-17 17:58[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

昨年後半の下落相場を予想したBitMEXのアーサー・ヘイズCEOは先日、年内のBTC相場の1万ドル回復を予想、その根拠についてMMT(現代貨幣理論)が話題になるほど世界が金融緩和の方向に舵を取った事を指摘した。Cointelegraphによれば「2017年末と2018年は世界の中央銀行は金融引き締めについて話していた。そして我々はマーケットに与えるインパクトを目撃した。(中略)こうした状況が2、3カ月前に変わった。『過去10年間と同じようにマネーを印刷し続ければいいじゃないか』と。この変化は何を意味するのか?有り余ったマネーがリスク資産に流れ込むことになる。仮想通貨はその一つだ」と述べている。彼はまずリフトやウーバーなどユニコーン企業のIPOに資金が流れ、年後半に仮想通貨に資金が流入するとしている。因みに弊社では、資金流入の前提となる規制の整備に時間がかかるので、本格的な回復は来年になると予想している。

MMTとは最近、アメリカで流行り始めた考え方で、前回中間選挙で民主党から最年少(29歳)で当選したアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員が主張して脚光を浴びた。日本の様に金などの裏付けのない自国通貨で借金が出来る国は、いくら借金をしても自分で通貨を発行できるので破綻しないので、景気が悪ければ好きなだけ財政赤字を増やして財政出動すればいいという考え方だ。そんなことをすれば、過剰に発行した長期国債の金利が上昇して財政が破綻し、自国通貨が暴落し、ハイパーインフレになると藤巻議員は再三警告している。小職も心情的にそちら寄りだ。しかし、日本ではそうした事態は生じていない。即ち、ギリシャなど自国通貨の発行権を持たない国は財政破綻するが、日本や米国の様に自国通貨を自由に発行できる国は理屈上、財政破綻はしないという訳だ。但し、この理論も流石に野放図に財政赤字を拡大しても良いと言っている訳でなく、そうして政府がインフレ率など景気をコントロールできると言っている訳で、際限ない財政支出でインフレに陥れば自国通貨が安くなって、輸入物価上昇により更にインフレが続く悪循環に陥る可能性はある。また、日本の様に財務残高が大きくなり過ぎると、利払い負担で歳入がなくなってしまい、借金で借金を支払う自転車操業状態に陥りかねない。この点、日本は日銀が長期国債を桁外れに購入して、その金利水準を0.1%前後に誘導しているので大丈夫なのか、破綻すれすれにあるのか、見方は分かれている。



ただ、ヘイズ氏が話しているのはMMTが正しいか否かでなく、それほど世界の金融政策が緩和方向にシフトしている事だ。では果たして、金融政策が緩和的になり、お金が世の中にジャブジャブに供給されれば、他のリスクアセットの様に仮想通貨価格は上昇するのだろうか。上は、BTC価格と米国のベースマネーの伸び率だ。ベースマネーとは銀行の銀行たる中央銀行の口座残高と現金の総額で、これを増やすと乗数効果で社会に流通する貨幣の総量(マネーサプライ)も増え、経済の循環が良くなり、景気が良くなるとされている。そこで、近年、ゼロ近辺まで低下した政策金利の新たな緩和策として世界中で採用されていた。ただ、一定以上残高が増えると中銀口座に資金が寝るだけで乗数効果は働かないという考え方や、いやそれでもいくらかは染み出る部分があるのではという考えもあり、後者のバーナンキ元FRB議長は学者時代に、日銀のやり方は手ぬるい、ヘリコプターからお金を撒くべきと主張して有名になった。実際、そうして欲しかった。一方で、過剰な資金供給は資産バブルを引き起こしやすいとされている。80年代の円高不況に対する金融緩和の転換に失敗した結果、日本のバブルを引き起こしたというのが定説になっている。上図を見ると、確かに2013年や2017年までのベースマネーの拡大期にBTC価格が上昇し、その後の縮小期に価格が下落しているといったある程度の相関性は見いだせる。ただ、2016年の様に縮小期であっても価格が上昇していた時期もあり、100%正確だとまで言えないか。

ヘイズ氏が指摘する様に、これから金融が緩和していけば、仮想通貨市場に資金流入があるかもしれないし、2013年末と2017年末の上昇およびその後の下落は別の理由だったのかもしれない。この2回だけで結論付けるのは時期尚早だと考えるし、そもそも米景気が後退すると様々なショックを世界経済に与える傾向があり、そちらの影響の方が大きいかもしれない。ただ、過去2回のバブル相場のピークとベースマネーの増加が反転したタイミングがほぼ同じだったことは、次のバブル相場が到来した際に覚えておいて損はないだろう。

 

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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