ついに判明か?ビットコインはリスクアセットか逃避資産か

2019-04-18 18:38[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産

4月17日のテレビ東京のモーニングサテライトでみずほ証券の北野一氏がBTC相場上昇の背景としてFRBへの信頼が揺らいでいる可能性を指摘し、BTCの特徴として「抵抗権」を挙げていた。現代の裏付の無い法定通貨に対するアンチテーゼとして、世界の人々に非中央集権的に支えられているBTCが、法定通貨の価値を守るべき中央銀行への信認が揺らいだ時に、自分たちの財産を守ってくれるものとして魅力的に感じるという理屈だ。これは藤巻参議院議員が、これだけ赤字国債を発行すれば、信認を失った通貨は価値を失い、ハイパーインフレを引き起こす。そうした際に、いずれ仮想通貨への逃避が殺到するとしているのと近い考えだろう。

北野氏と言えば、小職が初めて市場業務に従事した邦銀の資金証券部の大先輩で、当時グループ証券に移った氏のレポートで勉強させて頂いた思い出がある。物事の本質に踏み込んだ同氏のレポートは営業店から異動したばかりの駆け出しディーラーには難解で苦労したものだった。また、その当時から「伝説のディーラー」として藤巻氏は有名で、小職も氏のプロパガンダのファンであった。おそらく、両氏がそういうのだから、ある意味正しいのだろう。

折しも、昨日のトピックで、MMT(現代金融理論)への反論としてご紹介した考え方なのだが、逆にBitMEXのアーサー・ヘイズCEOはこれから金融が緩和されれば、リスクマネーが仮想通貨に流入するとしている。どちらも一理あるのだが、北野氏や藤巻氏は仮想通貨を逃避資産と考え、ヘイズ氏はリスクアセットと考えている。通常は、この両者は相反する性格を有しているが、ヘイズ氏も昨年後半の下落を予言した人物だ。実際、仮想通貨はリスクアセットだから、リスクオンで買われました、と簡単に済まされてしまうこともあるし、これも間違ってはいないと思う。しかし、このリスクアセットと逃避資産という一見相矛盾する性格を併せ持つ意味を考えずに、リスクオンだから、リスクオフだからと念じていると、どこかの5歳児に怒られそうだ。



上はリスクオフ時の買われ易い典型的な逃避資産とされる金と円との相関係数と同じく金とBTCとの相関係数だ(ドル円は円ドルに転換、DATA:Bloomberg、期間20日)。一般に数字が大きいほど相関性が高く1が最大で0.5以上なら意味があるとされる。これを見ると、金と円は流石に相関性が高く、概ね0.5を超えている。ただ、金も円も逃避資産としてのみ売買されている訳では無いので、相関性が薄れる場合もあるが、ほぼ同じ順相関だ。ところが、金とBTCでは順相関が高くなったり、逆相関になったり、その時々でまちまちな動きをしている。まさに、逃避資産として金や円と順相関になったり、リスクアセットとして逆相関になったり、なんとも判断の付かない動きをしている。小職のこれまでの整理は、BTCは通常はリスクアセットだが、リスクが大きくなり過ぎて法定通貨の信認にまで及ぶと逃避資産の性格を帯びると考えていた。当たらずしも遠からずの様な気もするが、現状をそのまま表現しているだけの様な気もする。

北野氏の話を聞いて、小職の中での整理がついた。確かに仮想通貨は逃避資産だが、それは法定通貨に対する逃避資産だという事だ。すなわち、通常のリスクオフでは法定通貨、すなわち現金は選好される。しかし、国の財政状態が悪化したり、中央銀行への信認が低下したりといった場合は代替アセットが選好される。そうした意味での逃避資産であり、通常の円高時に買われる訳ではないのだろう。逆に、昨日ご紹介した様にベースマネーが膨張の頂点で仮想通貨が急騰しているのは、溢れたマネーがリスクアセットに還流しているというよりは、バランスシートが拡張した中央銀行への信認が低下する結果、逃避資産として選好されているというロジックなのかもしれない。こう考えると藤巻氏の指摘するハイパーインフレに対するヘッジという考え方とも符合する。更に突っ込んで言えば、中央銀行による巨額の国債買い入れによって、長期金利が財政赤字のお目付け役としての任を失って久しいが、そうした自警団とまではいかないが温度計的な役割を仮想通貨相場は帯びてくるのかもしれない。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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