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発見、レバレッジ倍率引き下げは価格上昇要因?~発行量と供給量の違い

2019-04-24 16:00[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

今朝方のCointelegraphに仮想通貨の預金で金利を稼げるサービスを手がける米ブロックファイの利用者が急増、一部の機関投資家が相次いで仮想通貨を購入してブロックファイに預けたことが、4月2日のビットコイン急騰の一因だったという指摘があった。同じように、金利付与により市中の流動性が減少し、空売り用のBTCが減少した結果、買いが始まったという指摘や、BTCに金利が付くという事は、空売りの逆日歩(ネガティブキャリー:空売りするコスト)が高まりショートカバーに繋がったという見方も耳にしたことがある。なるほど、金利が付くようになったという事はBTCの価値が上がった訳なのだから価格が上がって当然で、為替取引で利上げされた(正確には相場は先に動くので利上げされそうな)通貨が買われるのは常識とされている。とはいえ、数十億円の買いがBTC相場に影響したとまで言えるかはやや疑問ではあるし、逆日歩も国内の証拠金取引の建玉維持手数料は一定であることが多く、あまりしっくりしない。その規模と言い、現時点ではまだ頭の体操に過ぎないのかもしれないが、徐々に整備されつつある仮想通貨市場の中で、金利の概念の誕生どのような意味を持つのか考察してみたい。

そもそも、金利とは何だろうか。例えば、細かく見れば、お金のコストであるオーバーナイト金利やタームプレミアム、クレジットプレミアムなどに分解されるが、反対に大きく見ると、そのお金を借りて企業などが事業を行って得る利潤の分配だ。金利を上げ下げして景気をコントロールできるのは、そうした利益の分配率を変えることによって、今まで儲からなかった事業の採算を向上させたり、景気が過熱した際には採算を悪くしたりする。法定通貨の場合は、モノを仕入れて売ったり、ビルを建てて家賃で回収したり、株に投資してリターンを得たりと様々な使い道があるが、仮想通貨の場合、BTCを借りて、それをそのまま投資して、事業を行うことは現時点ではあまりない。唯一(とは言わないが)あるのが市場でショートポジション、すなわち空売りをする場合だ。株でも為替でも、現物を持たずに売りから入ることを空売りというが、原則としてその場合は現物をどこからか借りてくる。株なら貸株、為替ならSWAPだ。仮想通貨の場合、SWAP市場が未発達の為、現物市場と証拠金取引やCMEなどの先物市場との直接の繋がりはないが、例えば日本の自主規制の場合、交換所に現物市場との乖離を防ぐ措置を取る様に定められている。また、いま話題のBakktは現物受渡を前提とした先物市場だ。そうした市場でショートポジションを取るという事は、交換所から仮想通貨を借りて売っている、これをワンパッケージにして売り出しているのが(為替でも仮想通貨でも)証拠金取引だ。即ち、交換所の勘定の中で、仮想通貨の信用創造を行っているのではないか。

よく、BTCは発行量が定まっているという様な言い方をする。これは仮想通貨を純粋にコモデティーとする考え方だ。一方で貨幣の場合、発行量×流通速度で供給量は決まる。供給量が増えれば貨幣の価値は下がり、物価は上がる。法定通貨との関係で言えば、この供給量が増えれば、相対的に法定通貨の価値が上がり、その仮想通貨の法定通貨建ての価値は下がる。現実の社会では、中央銀行が発行するベースマネー(現金+中銀預金)が仮想通貨における発行量とすれば、実際に世の中に出回っている貨幣の供給量は民間の銀行の預金にあたる。いわゆるマネーサプライだ。このマネーサプライは民間銀行が準備預金を元手に何倍も貸し出すので、元の発行量の何倍にもなる。この乗数効果の議論はここでは置いて置こう。この信用創造の役割を、今の仮想通貨市場では交換所のレバレッジの許容という形で行っているのではないか。もしかすると、将来的には、ライトニングネットワークなどオフチェーン取引もそうした役割を担うのかもしれない。

そもそも上記の貨幣数量説自体も仮説にすぎず、更にそれを仮想通貨の世界に導入する事も仮説の仮説に過ぎないかもしれないと前置きをした上で申し上げると、交換所によるレバレッジ許容が仮想通貨の信用創造だとすれば、レバレッジ倍率の縮小は仮想通貨の供給量を減らすので、法定通貨に対する仮想通貨の価格上昇要因になるのではないかという事だ。自主規制ルールで最大25倍から4倍に証拠金倍率の改訂が進んでいるが、これも価格上昇要因だったのかもしれない。分かり易く言えば、ショートから入りにくくなるから価格が上がりやすいという訳だ。今後は、こうした証拠金に限らず、仮想通貨市場にも様々なデリバティブ市場が導入されるだろうが、こうした発行量でなく供給量という視点で分析すると新しい事実が見えてくるかもしれない。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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