何が起こった?GW中にビットコインが買われた理由と今週の予想

2019-05-08 19:41[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン ビットコインキャッシュ イーサリアム リップル ライトコイン




Review

テザー問題で値崩れせず

GW中のBTC相場は総じて堅調な値動きとなった。連休前のNY州司法長官によるテザー社らの訴追により56万円台に急落したBTC相場だったが、裏付けに疑義が生じたテザー価格自体が若干下がったものの1ドル付近での取引を続けた事もあり、底堅く推移していた。カストディー免許の取得が承認のカギと見られていたBakktが申請とは別にカストディー会社を買収するとの報に59万円近辺に値を上げていたが、テザー社の弁護士がテザーの裏付けとなる現預金が26%不足していることを明らかにすると上値を重くした。しかし、同社と関係が深いBitfinexが10億ドルのIEOの計画が伝わり、またPoSに向かうアップデート、イーサリアム2.0の準備段階フェーズ0が今年6月頃スタートするとの報もあり再び騰勢に転じる。BTCの月間トランザクションが過去最高を記録、ハッシュレートも半年ぶりの水準となるなど仮想通貨市場が活性化している事、またグレイスケールが金よりビットコインという広告を打つなど、過度な金融緩和の逃避アセットとしての人気が高まっている事が背景にあると思われる。また、5月15日のハードフォークに向けて再び分裂騒ぎが噂され値を下げていたBCHが値を戻した事もあり、連休前の水準を上抜けると64万円台まで急騰した。

6000ドルトライには失敗

しかしNY州司法長官が追加書類をテザー社らに要求、また伝説の投資家ウォーレンバフェット氏が仮想通貨批判を繰り返したこともあり61万円台へ急落するも、再び64万円台へ切り返すなど荒っぽい展開が続いた。NY州最高裁判事がテザー社らに対する司法長官の要求を批判、またフィデリティ―が仮想通貨取引を数週間以内に開始すると言った報道もあり61万円台で切り返すと、CFTCがETH先物承認に前向きとの報道やイーサリアム2.0のテストネットのローンチなど好材料が続いたETHが値を上げるとBTC相場も65万円に乗せ、米ドルで6000ドルの水準をトライする展開となった。しかし、昨年半年以上サポートとして機能したこの水準で上値を重くすると、バイナンスでのハッキング騒ぎもあり62万円台に値を下げるも、前述のBitfinexのIEOのホワイトペーパーが出回ったこともあり底堅く推移している。

Outlook

BTC上昇の背景

今回のBTC上昇の背景として、テザー問題で相場が崩れなかった事と代替投資先としてのBTCの認知度の向上が挙げられると考えている。まずテザーだが、あると言われていたテザーの裏付け資産が足らない事が判明した。これは市場が最も恐れていたシナリオだった筈だ。しかし、前回Weekly Reportで申し上げた通りBTCもETHも裏付けはない。それでも市場が成り立っているのは参加者がそれに価値があると信じているからだ。仮想通貨の価値の根源は信用だと指摘する所以だ。従って、市場参加者がテザーは1ドルであるのが便利だと考えるのであれば、その価格でしばらく取引されても不思議はない。相場には最悪の事態を恐れている間の方が上値は重くなるが、実際起こってしまえば、こんなものかと開き直る習性がある。では、これでテザーは問題ないのかと言えばそうではない。奇しくも、前述のWeeklyで「銀行が預金と同額の現金を保有していないのに取り付け騒ぎが起こらない事と似ている」としたのと同じ内容を同社の顧問弁護士がコメントをしたのには苦笑した。預金を預かり、その大部分を融資している銀行には厳しい規制がかかっており、自己資本比率も厳格に管理されている。また小口預金は保険で保護されており、中央銀行が最後の貸し手として控えている。即ち、債券でも貸出でも担保となるものがあれば、取り付け騒ぎが生じても流動性は供給される。問題となるのは債務超過に陥っている場合だ。そうしたことが無いように当局からの厳しい管理と開示義務が課されている銀行と仮想通貨業者とを同列に論じるのには無理がある。今後、取り付け騒ぎが発生する可能性について予断は許さないが、既にテザーに代替するステーブルコインは幾つもあるので相場に対する影響は限定的に止まっているのという見方も出来る。



代替アセットとしてのBTC台頭

仮想通貨投資で有名なGrayscale社が金でなく仮想通貨をポートフォリオにと呼びかけるCMを」全米で流し始めた。奇しくも、世界景気の失速を懸念して各国中銀が金融緩和方向に舵を切りつつあるタイミングだ。需要不足に対応すべく各国政府は国債を発行して景気対策を行い、中央銀行がそれを購入し市中に通貨を放出する。こうした事を繰り返せば、貨幣価値が下がりインフレが到来する可能性がある、というかその為に中央銀行は貨幣を供給している。そうした中、個人は自己防衛として分散投資の一部にBTCを組み入れるという動きが出ても不思議では無い。そうした動きをよく捉えたCMであり、足元のBTC相場の活況にも表れている。こうした動きは今回のGW中の相場動向にも表れている。上記はGW中、4/27を基準とした主要通貨の値動きだがBTCの堅調さが目立っている。これはテザーや法定通貨からデジタルゴールドへの逃避買いがいくらか入っている結果と考える。この結果、BTCのドミナンツ(時価総額における占有率)も56%と昨年9月の高値水準に迫っている。



過去5年のGW後は?

こうした結果、GW(4/27-5/7)期間中のBTC相場は6年連続で上昇となった。一方でMonthlyでご紹介した通り、5月は上がり易いというアノマリーは見られていない。過去5年間、GW中の上昇した内、2回は5月8日以降月末にかけて下落している。この6000ドルの水準は昨年2月から11月まで効いていたサポートで相当強い戻り売り圧力が予想される。5月15日に控えるBCHのハードフォークも俄かに波乱含みとなってきている。今週は、この66万円の水準を頭に上値の重い展開を予想している。市場がオーバーシュートして66万円台を上抜けたとしても70万円までの間に跳ね返されて反落するものと考えている。

予想レンジ:55万円~70万円







松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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