週末にビットコイン急騰、2017年の再来はあるか?

2019-05-13 19:39[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

テザー問題でGW前に56万円台まで下落していたBTC相場は、その後、テザーの裏付け資産が不足している事が明らかになり、また世界最大手のBinanceでのハッキング事件と市場が最も恐れていた悪材料にも関わらず上伸を見せGW明けには昨年2月から11月まで9か月間もサポートとなっていた6000ドル(約66万円)の水準に迫っていた。流石にこの水準ではいったん止まるだろうと言う予想も後目に上抜けると、土曜日には76万円台、日曜日には一時86万円台を付けるなど週末だけで20万円の上昇を見せた。この結果、終値ベースで見ても11日までの10日間で33%の上昇を記録、10日間での上昇率が3割を超えるのは昨年7月24日以来となった。

この3日間の特徴としてアジア時間に大きく上昇している事が挙げられる。日本の交換所の証拠金取引で100万円超の取引があった事が話題となったが、現物取引においても本邦交換所の価格が海外のそれを上回る状況が続き、「寿司プレミアム」と名付ける声も聞かれた。日本からの買いが強いという意味もあろうか。また、通貨別の売買では観測されないが韓国からの買いが強まっている可能性もある。韓国ウォンは昨年6月から続いた1100~1130のレンジを4月24日に上抜け1190手前まで急落している。ドル円で6円落ちた形で、この間のパフォーマンスはBloombergの32種類の拡大主要通貨の中でトルコリラに次ぐ弱さで、直近5日間では最弱となるなどプチ通貨危機的な値動きをしている。先日のデータライト社の調査では国別の仮想通貨トレーダー数で韓国は日本に次いで3位に位置しており相応の影響があっても不思議はない。

先週のWeeklyでは、ここまで相場が強い背景として、逃避需要を挙げた。仮想通貨は法定通貨に対する逃避アセットとしての機能があり、このところの金融緩和の動きを受け、一部そうした動きがあっても不思議が無い事を日本の金融政策を例にご説明した。ただ、そうした日本円に対しての信認が大幅に低下しているという動きは、為替市場を見る限り、大幅に広がっている印象は無い。もしかすると、そうなった時にはこの程度の上昇では済まないのかもしれない。また、以前のトピックで申し上げた通り、証拠金取引における倍率の低下は供給量の低下という形で上昇圧力となる。ただ、もし日本からの買いが今回の上昇の背景にあるとするならば、3月15日の金商法等仮想通貨関連法案の提出と25日の新規登録認可開始による雰囲気の好転が挙げられると考える。詳しくは別稿に譲りたいが、同日以降、一部の交換所を中心に新規口座開設やPR活動が活発化、そうした動きが時差を経てBTC買いに繋がっている可能性があろう。口座開設には時間がかかるし、口座が開設されてから直ちに取引を開始する訳では無かろう。こう考えると、新規の口座開設した投資家はまずBTCの買いから始めるケースが多いと思われ、BTC独歩高とも整合的だ。

そうは言っても、こうした逃避買いも、新規投資家の買いも、まだ始まったばかりであろう。今後、更に認知度が進み、新規投資家が参入し、機関投資家まで参入したら、この程度の上げでは済まなくなる可能性を今回、目の当たりした気がする。そうした事から、長い目で見ると今後も力強い相場展開が続くと考える。ただ、短期的には調整を余儀なくされるかもしれない。上はGW明けから月末にかけてBTC推移だ。これを見ると、GW明けに上がる下がるはまちまちだ。今回はGW中にかなりの上昇を見せた事から、その後の反落を予想したが、果たして2019年は既に2割近く上昇している。このまま上昇軌道を見せるとすれば、過去の上昇している2014年と2017年は月末までに4割上昇している事から、あと2割程度の上昇余地があると言えるかもしれない。

一方で、2015年以降で10日間に3割以上上昇したケース(10日間で3割上昇した初日のみ抽出)をみたところ、その後、月末までに上昇を続けたケースはバブルだった2017年に限られる。今回、当時の様な爆上げ相場が来ない限り、常識的に考えれば月末にかけて一旦は調整すると考えるのが妥当だろう。裏付けのない仮想通貨相場は、往々にしてオーバーシュートし易い。今回の上昇でどこまで長期保有の買いが入っていたのかは不明だが、短期売買の買いはいずれ売りに転じる。今週5月16日にビットワイズの、来週21日にCBOE分とされるETFの判断期日が控えており、現状では再延期される可能性が高いと考えられる。BCHのハードフォークも5月15日に控えている。2017年の様なバブル相場の始まりでない限り、相場は一旦調整すると考えている。以前にも申し上げたが、2013年のBTC、2000年のNasdaqといった極端なバブル相場からの回復には底入れに1年、反転にはもう1年要している。本格的なバブル再来には時期尚早だろう。ただ、今回の上昇を見て、いずれ到来する可能性が高くなったことも覚えておきたい。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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