2019.5.17【やはり反落したビットコイン。急落の理由と下値の目途。】

2019-05-17 18:27[ 松田康生

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Review

90万円台へ急騰

今週のBTC相場は大きく上昇。テザー問題はハッキング事件など悪材料にも関わらず6000ドル(66万円)に乗せていたBTC相場は、週末に70万円を上抜けるとショートカバーを誘発、国内証拠金取引では売り板が不足し100万円台を付ける展開となり、現物でも86万円台まで急騰した。その後、74万円台に反落するも、BakktのUAT開始(7月)、BitfinexのIEO成功などで上昇を始めると、米中貿易戦争激化を嫌気した米株の下落や人民元売りもあって89万円まで急騰。一旦、83万円まで下押すもスターバックスを含む米小売り15社が仮想通貨決済を受入れるとの報で下げ止まると、XRPの急騰に連れ90万円乗せに成功した。その後、SECがBitwiseのETF可否判断を延期したことで下押すも、ETHの上昇もあり切り返し、注目されたBCHのハードフォークでバグが発生したが早期に修正されたことを好感して91万円台乗せに成功、その後、73万円台まで急反落している。

Outlook

想定外の91万円、想定通りの73万円

来週のBTC相場は落ち着きどころを探る展開を予想する。先週は「上値は重いが底堅い、高値圏での揉み合い推移を予想」としレンジを60万円~70万円と予想した。結果は、週末の時点で70万円を突破、91万円台まで付けてしまった。但し、その後、火曜日のDailyで4番バスは出た(強気相場が最終局面に近づき、ここから乗るのは危険という意味。俗に2番バスに乗れと言われている)とし、木曜日のDailyでは市場の行きすぎを指摘、本日のDailyでは一旦調整と今回の暴落を指摘していた事で勘弁願いたい。以下では、何故70万円を上抜けたのか、また何故73万円まで暴落したのか振り返りたい。

70万円を上抜けた背景

今回の上昇の背景には、テザー問題とハッキング事件で落ちなかった地合いの強さがあると、先週指摘した。何故そこまで地合いが強いのかというと①金融緩和による逃避需要②本邦交換業への新規顧客流入③米中貿易戦争激化による中韓からの資金流入などが考えられる。①については先週のWeeklyでご説明した通り、既に出口の見えない緩和に陥っている日本で更なる緩和を検討されたら不安になるなという方が難しいだろう。昨日CBSでブレイナードFRB理事がドル預金にはある預金保険も政府の裏付けもBTCには無いと非難したが、そのドルの価値を減価しようとするハト派の先鋒からの発言をそう素直には受け入れ難い。むしろGrayscaleが始めたとされる金よりBTCとのCMが人々に受け入れられ易い地合いと言えよう。②に関しても別稿でご説明したが、折しも昨日ロイター社が本邦交換業者で新規口座開設が急増していると報じたが、3月から4月にかけてキャッシュバックキャンペーンなど新規口座募集の動きが今回の相場の下支えになっていると考える。③もトピックでご説明したが、関税引上げによる中国輸出企業への影響を人民元安で中和しようとすると、中国からの資本逃避を誘発し、その一部がBTCに流れるというものだ。CNBCは米株急落のヘッジ資産としてBTCが台頭したと報じたが、米株が大きく反発している状況下、本日の急落も納得できる。因みに、日本の例を見ても米中貿易戦争は容易には解決されず、一旦は落ち着いていた人民元安も再開している。従って、これらの地合いの強さは構造的なものであり、BTC相場がこのまま崩れるとは考えにくい。

73万円まで急落した背景

では何故BTC相場が暴落したのか。端的に言えば、材料が無いのに買われ過ぎたからだろう。確かに上記の様な構造的な地合いの強さはあるものの、材料で見ればテザー不安、Binanceのハッキング、ETFの延期、クリプトピアの破産、BCHのバグなど悪材料の方が目立つ。Bakktの7月テストの報も、いずれ開始すると好意的にも受け取れるが、しばらくは開始することは無いとも言える。すなわち、期待先行で相場は買い上げられるが、実際の需要以上に買い進められると、そのうち大きく調整するといった相場展開が続く。スターバックスらの仮想通貨受入のニュースも仮想通貨をUSDに交換して支払うアプリが開発されたという話で、コーヒーがBTC建てで売られている訳では無い模様。すなわちディーカレットがBTCからSUICAにチャージするのと似た仕組みだ。象徴的なインパクトはあっても、そのままドルで支払えるのにわざわざBTCからドルに返還して支払う仕組みがどれだけ浸透するのかは未知数だ。こうした買いが買いを呼ぶ流れはBTCからアルトコインへの循環物色でも観察されている。循環物色はBTC→LTC→BCH→XRP→ETHの順番で起こる傾向があると申し上げたが、このセッションで高値を付けた時間を並べるとBTC:5/16 10時頃 BCH:同10時半頃 LTC:同11時頃 XRP:同12時頃 ETH:5/17 1時頃とBCHとLTCが逆であること以外は偶然にも2017年から2018年のピークを付けた順番と同じだ。4月の上昇もほぼ同じ順番で5月に入ってからの上昇も似た動きをしていた。今回のオーバーシュートは一巡したと考える所以だ。

予想レンジ BTC 65万円~90万円

従って、今回の急騰と反落はあまりの買いの強さにオーバーシュートした相場が叩き落されたと考えている。即ち、あっという間に90万円に達した相場で買い遅れた向きが85万円前後に押したところを拾った結果、投げさせられたと考えている。実際、BitMEXでは24時間で3万BTC以上のロングポジションがロスカットされている。一方でBitfinexではまだロングが優勢であり、もう少し下値余地はあると考える。しかし、この強い買いの背景にある要因には大きな変わりはないので、ポジション調整が一巡し、下値が固まれば、再び上昇に転じるイメージを持っている。下値の目途は70万円、今度はレンジスタンスがサポートに変わるのではないだろうか。

Altcoin

ETH:今週のETH相場は週後半にかけ急騰、週間で5割近い上昇を見せている。先週末にBTCとETHに連動するETFが申請された事や10月にETH最大の会議Devcon2019が大阪で開催される事などもあってか2万円台に乗せると、コンセンシスが主宰するイーサリアルというイベントでヴィタリック・ブテリンとジョセフ・ルービン両創始者がイーサリアム2.0開発団体にそれぞれ1000ETH寄付した事も好感され底堅く推移した。その後、ルービン氏はCointelegraphに2年以内にETHのスケーラビリティーが1000倍となるとし、またスターバックスを含む米小売り15社がETHを含む仮想通貨決済を受入れると発表されたこともありじりじりと値を上げる展開。しかしBTCの上昇にはついていけず、14日にはBTCのドミナンツ(時価総額に占める割合)が60%に乗せていた。すると、XRPといった時価総額の大きい通貨が循環物色気味に買われ始め、それに遅れてETHも買われ始めると、一気に3万円までの急騰を見せている。

来週のETH相場は高値圏での揉み合い推移か。先週、2万円台乗せは時間の問題と申し上げたが、まさか3万円近くまでの急騰までは想定していなかった。この上昇は上記の通り、BTCのドミナンツの巻き戻しで割安感のあったETHに買いが入った部分が大きく、ETH自体に大きな材料があったわけではない。しかし、テザー問題もありパクソスなどETHベースのステーブルコインの需要の伸びも期待され、また課題だったワールドコンピューターとしての需要をこなせるだけのスケーラビリティーについてもルービン氏から力強いコメントが見られた。こうした中、ETHは底堅く推移するものと考える。

XRP:今週のXRP相場は大幅上昇、一時50円台まで値を戻した。33円近辺での揉み合い推移を続けていたが、週末のBTCの急騰を受けても35万円程度までの上昇にとどまり、週前半は出遅れ感が目立っていた。しかし、独第2位のシュツットガルト証券取引所でXRPのETNが上場され、またCoinbaseがNY州でもXRP取引を開始すると伝わると急騰を始め、またNYで開催中のコンセンサスでリップル社のライアン・ザゴーン氏がブロックチェーンは安全保障上重要だとすると、折しも米中貿易戦争が激化する中、中国への依存度が低いXRPの人気が高まったこともあってか、一気に50万円台までの急騰を見せた。しかし、この50円台は昨年の9月から11月にかけて揉み合っていた水準で、戻り売り圧力から45円近辺までの反落を見せている。

今週のXRP相場は堅調な推移を予想する。先週は追加のヘッドラインが欲しいところと申し上げたが、小粒ながら買い材料が出現した。XRPの上値の重さには運営側の売りに加えて、昨年の9月から11月、更に年末年始に一時買われたが、その後の下落でロングポジションが溜まっていたことが挙げられる。しかし、4月以降の出来高増、特にこの1週間の急増で、その約3ヶ月高値掴み期間の出来高を上回っており、戻り売り圧力は実は高くないと考える。年初来で見れば、XRPはまだ出遅れており、もう一段の高値が見られるか。

BCH:今週のBCH相場は大きく上昇。週前半はBTCの上昇に連れ自堅調に推移。その後は15日のハードフォークを控え4万円台で揉み合っていたが、HFが実行されると2時間強に亘り空ブロックが続き緊張感が走った。その後、原因がバグのせいと判明、即座に修正が見られた結果、4万5千円を超えて大きく上昇、その後、反落している。今回のバグ発生を受けて市場は買いで反応した。仮にBCHの目指すところがデジタルゴールドでBTCに代替するのであれば、2時間程度のバグは問題にならないかもしれない。しかし、もし世界中で決済に利用される事を目指すのであれば半年毎に使えなくなる可能性のある手段が普及するとは考えにくい。とはいえ、市場価格は参加者の総意であり、上昇した事実は無視できない。今回のHFを機にBCHは決済手段とは別の何かになっていくのであろうか。

LTC:今週のLTC相場は堅調に推移。週前半はBTCもあり上昇、1万円台に乗せるが、LTC財団が主催するMagical Crypto Conferenceが閉幕するとイベント前に上昇し、終了後に反落する従来のパターンを繰り返した。その後、独証取へのETN上場やスタバ等での決済受入の報に値を戻すと、100ドル乗せに成功、その後反落している。



FXcoin Weekly Report 2019.05.17.pdf



松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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