リップル社CEOの発言に見るxRapid普及のカギ

2019-05-21 23:04[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 リップル

リップル社のガーリングハウスCEOは20日、同社が手掛けるXRPを用いた送金によるスピードの改善と手数料の削減について、99%の銀行はリップル社を使いたがっていて、残りの1%のマネーセンターバンクがそれを拒んでいるが、彼らもブロックチェーンを使わざるを得なくなるだろうと発言した。非中央集権を標榜し既存の金融システムと一線を画す傾向のあるBTCを中心としたPoWを採用する通貨と異なり、XRPを擁するリップル社は金融界と良い関係を築いている。それ故か、XRPを送金に使用するxRapidの利用は送金業者中心で銀行はxCurrentの利用が殆どで多くのリップラー達は歯がゆい思いをしている。先日、スイス中銀のカンファレンスに民間企業として唯一出席を許された同氏はIMFのラガルド専務理事にXRPの優位性を説いたそうだが、そこでもSWIFT2.0だとしてxCurrentを推していた。これはどういう事だろうか?

リップル社のチーフ・マーケティング・ストラテジストのコーリー・ジョンソン氏がCointelegraphのインタビューで答えていたところによればリップル社は銀行にまずxCurrentからの利用を勧めている様だ。この理由は受け入れられ易いことが挙げられる。不便なSWIFTに替わりxCurrentの伝達機能を利用することによる銀行のデメリットは殆ど見当たらない。また、先行しているとはいえJPモルガンなどの追跡を受けている状況で、また11000の参加行を誇るSWIFTに対してリップルネットの参加行は200強と圧倒的な差があり、今は導入し易いxCurrentで参加行を増やすのが得策と考えているのかもしれない。技術的にはxCurrent利用行はxRapidも利用可能になりつつあるので、相手が受け入れやすいツールで近づいて、多数派工作を行っている最中なのかもしれない。しかし、ガーリングハウス氏は99%の銀行はリップル社が目指すところに賛成と言っている割に、xRapidが普及しない理由は何だろうか?何か銀行に不利な事でもあるのだろうか?

銀行がxRapidを利用しない理由にはいくつか考えられるが、まず銀行は保守的なので仮想通貨を媒介にした海外送金といった最先端の技術は使いたがらないという事も挙げられる。また規制上の問題もクリアになっていない。日本で想像してみれば、メガバンクが交換所で円とXRPとを交換して送金する事におけるハードルはいくつもある。それ以外にも色々思いつくが、一つ大きな問題はExchangeだ。即ち、日本からアメリカにドルを送るのであれば、送金者は銀行で円からドルを買って送金する。この時の為替手数料が無くなる事を心配している。すなわち、XRPを媒介する場合は日本円からXRP、XRPから米ドルとExchangeが為替市場ではなく、仮想通貨交換所で発生するので、売買益が入らなくなる可能性がある。

ただ、この点に関し、ガーリングハウス氏は99%の銀行は自分たちの味方だとしている。顧客から為替のオーダーを貰った銀行はインターバンク市場でそのままカバーする銀行と自分たちでマーケットメークしてトレーディング収益を得ようとする銀行がある。単純にカバーする銀行はそのコストに自行の手数料を乗せて顧客に提示する。そういう意味では、為替のインターバンクでカバーしようが、仮想通貨の交換所で交換しようが変わりはない。しかし、自らマーケットメークしてトレーディング収益を得ている、大手銀行、同氏はティア1のマネーセンターバンクと呼んでいる、にとっては交換所にビジネスチャンスを奪われることになるので警戒感は強い。xRapidが警戒される理由の一つだ。しかし、もう一つ大きな問題がある。コルレス決済だ。米国以外の銀行はドル決済の為に大手米銀にドル口座を開いている。同氏は、マネーセンターバンクは80億ドルをほかの銀行から稼いでいるとしているが、この多くはこのコルレス決済による収益を指していると思われる。送金手数料もあるが、金利収入も無視できない。通常、コルレス口座の残高には殆ど金利を付与しない。それ故、コルレス口座を持つ銀行は出来るだけ残高を残さない様に務めるが、残高をマイナスにする訳にもいかないので、ある程度、残高が残る。米ドルの政策金利は2.5%だから利ザヤもある程度確保できるわけだ。これが日本や欧州などマイナス金利の国になると残高を置かれると逆に困ってしまう。欧州の銀行の中にはコルレス口座を解約しようとする動きもあると聞く。

この様に、為替のトレーディング収益とコルレス収益に影響を与えかねないxRapidに銀行は警戒感を強めるのだが、それはマーケットメークをしてコルレス口座を多く抱えるマネーセンターバンクに限った話で、そうした銀行のお客さんである地方銀行は寧ろ、xRapidを使いたいのではないか、ガーリングハウス氏が言いたいことはそういう事だったと思われる。そういう意味ではJPMコインの登場は同行の危機感の現れともいえ、次世代送金システムとしてXRPが先行しているが、JPMコインが追い付くのか、IBMが巻き返すのか、はたまた中銀コインが台頭するのか、まだ勝負は始まったばかりだ。1つの方法が世界を席巻するのか、複数の方法が共存する社会が到来するのか、先のことは分からない。しかし、現時点ではっきりしてきたのは、どうやら送金のトークン化が進むという方向性は、皆が認め始めているということだと考えている。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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