2019.5.24【なぜ為替報告書が仮想通貨市場で注目なのか?】

2019-05-24 18:47[ 松田康生

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Review

VanEck分のETF延期

今週のBTC相場は先週末の急落から大きく切り返すも、先週の高値の更新に失敗、週末にかけて反落する、いわゆる上に行って来いの展開となった。先週の急落の半値戻しとなる82.5万円を前に揉み合っていたBTC相場だが、この水準を上抜けると急騰、NHKのニュースやCBSの人気番組60ミニッツでBTCが登場すると90万円トライに成功した。しかし、仮想通貨に詳しい米弁護士がVanEck分のETFは延期でなく否認の可能性もあると指摘すると反落、83万円台まで値を下げる荒っぽい展開。この水準で下げ止まると、ETFをSECが否認では無く延期とすると89万円台まで値を戻した。今度は自称サトシのクレイグ氏がBTCのホワイトペーパー等の著作権を米で登録、BSVの急騰にBTCも89万円台に乗せた。しかし延期自体は買い材料とはならず、その後、米当局が同氏をサトシとは認めていないとのコメントで上値トライするも失速すると83万円付近まで値を落としている。

Outlook

落ち着きどころを探る展開だったが

来週のBTC相場は上値の重い展開を予想する。先週は「落ち着きどころを探る展開」としたが、先週末から今週にかけて乱高下した後に、レンジの上限と下限とを確認しに行くという今週の相場を評するにぴったりの表現だ。しかし、上限が90万円、下限が83万円で、少しずつレンジを切り下げていくというレベル感は、先週想定していたよりやや高かった。押し目買い意欲が強かった事と思ったほどロングポジションの解消が進んでいなかったと考えている。押し目買い意欲の強さの背景には3月から続く国内仮想通貨業界へのイメージ回復が挙げられると別稿で申し上げた。更に5月に入って新規口座開設が急増している模様で、そうした令和組ともいうべき新規参加者の買いが6月以降の相場反発の下支えになると考えている。

売り材料の方が目立つ

一方で、5月に入ってからの材料を振り返ってみるとBakktのカストディー申請(一歩前進だがスタートには時間がかかる)テザー問題(大規模IEO等で事なきを得たが決してプラスではない)、ETF延期(否認よりましだが、これまた買い材料ではない)と目立った買い材料は無かった事に気づく。現時点では90万円台からの上値追いは難しいと考える所以だ。話はそれるがテザーの裏付けの一部がBTCだったと伝えられた。重大な約束違反だという見方も出来るが、曲がりなりにも裏付け資産はあったという見方もできる。どういうことかというと、USDを預けてテザーを受取り、それでBTCを買って、買ったBTCを裏付けにテザーを発行し、、、要はレバレッジを掛けている訳だ。こうした取引は金融界ではよく目にするが、リーマンショックの発端とされるパリバショックを引き起こした危険な手法だ。BTC価格が下がった時点で発覚すれば危なかったところだが、早めに発覚して良かったと思う。

中韓からの逃避フローは一時停止か

それ以外の目立った買い材料として、金融緩和や米中貿易戦争を嫌気した逃避買いだ。後者は5月5日のトランプ大統領のツィート以降、直接の対象である人民元や影響の大きい韓国ウォンが大きく売られ、そうした国からの逃避買いが話題となった。ただ、両通貨は節目となるドル人民元で7、ドル韓国ウォンで1200の水準で止まっている。ロス商務長官は自国通貨安誘導をする国に相殺関税を提案している。また、その根拠となる年2回の為替報告書の発表を引き延ばしている。要は脅しをかけている訳だ。暫くは中国・韓国共にこの水準で通貨安を止めざるを得ず、BTCへの逃避フローも限定的に止まると考える。アーサー・ヘイズ氏は人民元安によるBTCの強気相場の到来を予想したが、来週に限れば人民元安が進まないので、強い相場にはならないと考えている訳だ。

予想レンジ BTC 65万円~90万円

Bitfinexのポジションでは減りつつあるとはいえロングが優勢、また28日には国内最大手の交換所がレバレッジ倍率を15倍から4倍に縮小、ポジションの傾きや解消が出るタイミングは不明だが、これだけ上昇した相場故、ロングの解消が強いのではないかと推測する。70万円近辺へ下値の目途を確認しに行っても不思議ではない。

Altcoin

ETH:今週のETH相場は底堅い展開。先週末のBTC急落もあり25000円近辺まで値を落としていたが、イーサリアムベースの証券取引所SprinkleXchangeで初めてのIPOが6月実施されるとの報道もあり26000円近辺で底堅く推移していたが、BTCの上昇もあり28000円台に乗せた。人気SNS WhatsAppでETHの送金が可能になると30000円をトライするも失敗、27000円近辺に反落したが、イーサリアム財団がイーサリアム2.0開発などに30百万ドル投入するとの報もあり再び高値トライ。仮想通貨の預金を手掛けるBlockFiがETH金利を6.2%から3.25%に引き下げると伝わると25000円台に値を落とした。しかし、BTC投信などを手掛けるグレイスケール社がETH投信の承認を受けたとの報もあり若干値を戻している。

来週のETH相場は堅調な推移を予想する。テザー問題は下火になったが、USDCはGUSDなどテザー以外のステーブルコインの需要を伸ばす形となっているが、その多くはイーサリアムベースだ。ルイヴィトンもブランド製品の真贋を証明するシステムを開発中で、やはりイーサリアムベースだ。スマートコントラクト機能がついたブロックチェーンは数多あるが、オリジナルであるイーサリアムの人気は根強い。材料面で見ると、テザー問題やETF延期、クレイグ氏による著作権問題さらには国内交換所のレバレッジ倍率引き下げなどの売り材料は殆どETHには関係が無い。ETH相場は先週3万円台へ急騰してから、若干の調整局面にあるが、この水準で下値を確認すれば、3万円台乗せは時間の問題なのかもしれない。

XRP:今週のXRP相場は40万円台での揉み合い推移。リップル社の売却金額が同社開示と食い違っているとの報道に開示方法変更の際に既に知れ渡っていた事だという事が判明し底堅く弑していたXRP相場だが、同社のガーリングハウスCEOがスイス中銀主催のカンファレンスでラガルドIMF理事にxCurrentはSWIFT2.0だとし、xRapidにも言及したと伝わると45円台まで上昇した。また同CEOは銀行にはマネーセンターバンクとその顧客である地銀などがあり、前者はXRPに警戒感を示すが、後者は実はXRPの利用を望んでいるという趣旨のコメントを行い話題となった。その後、目立ったヘッドラインが途切れるとじりじりと値を下げたが、タイ大手のサイアムコマーシャル銀行がTwitterの利用者からの質問でxCurrentに続くXRPの送金利用に関して、”you may have to wait for further announcement”と含みを持たせる表現を行っていたことが伝わると反発を開始、AMB CRYPTOが別のタイ大手行カシコン銀行がXRPを使用した送金サービスを提供するInstaReMと提携する事が発表され若干値を戻している。

xRapidが何故、銀行に普及していないのかについてマネーセンターバンクが為替のトレーディング収益とコルレス口座関連収益を守ろうとするからとご紹介した。銀行界と対立したくないリップル社は受け入れられ易いxCurrentから慎重に普及を図っている。しかし、発言力の強い大手行以外は実はXRPを利用したがっているとCEOは述べている。そうした面でカシコン銀行の動きに少し興味を覚えた。カシコン銀行と言えば20以上の日本の地銀と提携し大規模なジャパンデスクを有する事で知られている。90年代の金融危機で海外支店を手放した地銀は2000年代に急増した海外に進出する顧客を親密メガの海外支店に顧客を紹介していた。その結果、国内の外為取引までメガに流出するという庇を貸して母屋を取られるというケースが頻出した。そうした事態を防ぐために現地行に手弁当で行員を送り込み始めている。地銀側に殆ど収益チャンスは無いが、メガにそう取りされるよりましという考えだ。そうした意味で、日本の地銀にとってメガを経由せずに完結できるXRP送金は魅力に映る。時間はかかるだろうが、本邦におけるXRP送金の突破口になり得ると考えている。

BCH:今週のBCH相場は目立った材料が無い中、BTCに連れ堅調な展開となった。先週のハードフォーク時にバグがあったものの速やかに修正されたとして40000円台後半まで上昇した後、40000円前後まで下落して始まったが、その後BTCの急騰もあり45000円付近まで値を上げた。元自称サトシのクレイグ・ライト氏がBTCのホワイトペーパーとコードの著作権を登録、BSVが急騰するとBCHも若干連れ高となるが、その後BTCに連れ安となり、BTCの反発に連れ高となっている。

LTC:今週のLTC相場は上に行って来いの展開。LTC財団がブロックチェーンベースの予約サイトTravara.comと提携、また同財団が後援する格闘技イベントGlory65に向け10000円近くまで上昇するが、イベントが終わると反落する展開。BTCの急騰に連れ10000円台に乗せると、WhatsAppでLTC送金が可能となった事もあり10500円に乗せるも米ドルで100ドルとなる11000レベル乗せに失敗すると反落。その後のBTCの下押しに10000円を割り込んでいる。



FXcoin Weekly Report 2019.05.24.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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