カール・セーガンとマイニング消費電力

2018-08-27 21:03[ にく

暗号資産(仮想通貨)小噺 ビットコイン マイニング

このところ猛暑で子供たちをインドアで遊ばせてばかりなので、自然と触れ合う機会を作らなくては思いたち、日曜日に秩父の観光農園に連れて行くことにしました。本当のお目当てはカブトムシ採取だったのですが、猛暑により8月前半で中止になってしまっていたので、代わりに川遊びも兼ねてのマスのつかみ取りと息子の好きな流しそうめんが目的です。種があるブドウ狩りと生で食べられないシイタケ狩りは1歳の娘には無理と判断しました。

農園はなだらかな斜面にあって、お昼過ぎに到着した我々は少し上ったところでまず流しそうめんやマスの塩焼き、しいたけの天ぷらなどで腹ごしらえをします。ブドウ棚を日よけにしていてもやはり暑く、流しそうめんやかき氷のコーナーは盛り上がったりもしているのですが、バーベキューコーナーの家族は心なしか無表情に見えます。

続いてマス掴み取りに向かったのですが、今度は川沿いなのでぶどう棚から15分くらい下ったところにあります。この炎天下で2人の子連れには結構きつい距離です。娘を抱きかかえ、息子を励ましようやく到着しましたが、実は捕まえた魚はぶどう棚のところで焼いて食べるのでこの距離を戻ってこなければなりません。

マス掴みは各家族用におおよそ6畳くらいの広さに砂利で川の支流を仕切ってそこに注文しただけのマスを放して手掴みするのですが、そんなことが3歳児に出来るのかといえば、これが簡単に捕まえられます。何故ならマスは十分に弱っているからです。これに対し家内は可哀いそうだと言い、小職は食べられるために養殖されたのだから子供が自然と触れ合える分、これはこれで良いのではないかと考えます。それぞれ自然に対する考え方の違いかと思っていたのですが、魚を捕まえた後、もう元の所に戻って焼いて食べるものしんどいので逃がしちゃおうかと提案したら、せっかくお金払っているのだからちゃんと焼いて食べないとダメだと諭されてしまいました。かくして再び娘を抱え、登り道を20分以上かけてぶどう棚に戻り塩焼きにして頂きました。

2児の父としては、これだけの人口を支えるためにこんなにも自然に手を加えてきておいて、今更センチメンタリズムに陥られても困る、子供たちを養うためにはきれいごとばかり言っていられないと考える一方で、子供たちが大人になるころに人が住めない環境になってしまっては困るという思いもあります。そうした人間の営みと自然環境というテーマで問題となるのがマイニングにおける電力消費です。不正を管理者がいないのにデータの改ざんが出来ない仕組みを維持するために、各ネットワーク参加者(ノード)にインセンティブを付与し競争原理を導入したのですが、その暗号解読競争のために大量の計算を必要とし、電力を消費してしまいます。クルーグマン教授もこの点をビットコインの問題点として挙げています。では、ビットコインのマイニングでどれくらい電力を消費しているのでしょうか?

ビットコインのマイニングとは16進法で示された各ブロックのデータ(数字の羅列)にある数字を加えてハッシュ関数という暗号ツールで計算した結果が一定数以下(頭に0がいくつも並ぶ)となるような「ある数字(ナンス値)」を探す競争で、その為には片っ端から色々な数字を当てはめて計算してみるという方法が取られます。10分に1ブロックを形成するように2週間に一度「一定数以下」という問題部分が調整されていきます。この問題の難易度がDifficultyと言います。これに対し、1秒間に何回計算が出来るのかという計算能力をハッシュパワーと呼びます。8月26日時点でビットコインのマイニングに投入されているハッシュパワー、すなわち1秒間の計算回数は過去最高の約5800京回に達しました。英語で格好つけて58,000,000TH/s (テラハッシュ:兆)と言われたりします。これを10分間とすると約3,480,000京、数詞も垓を超えて3.48抒になります。

これに対して、Bitmain社が製造販売している代表的なマイニング専用マシーンであるANTMINER S9は1台当たり14TH/sで消費電力は1375Wと言われています。するとこのマシーンで換算して41万台分のハッシュパワーが投入されている計算です。これに1375Wをかけると1時間当たり約57万KWhの電力を消費する計算になります。この機会を24時間365日稼働し続けると年間で約500億KWh、5千万MWh、先ほどのT(テラ:兆)を使うと50TWhの電力を消費します。これに対し世界の発電量は年間約25,000TWh(2017年Enerdata調べ)だそうです。するとビットコインだけで世界の電力の0.2%を消費していることになります。概ねニュージーランド(44TWh)とポルトガル(60TWh)の間くらいです。発電所で考えると世界最大の柏崎刈羽原発8212MWh、1年間フル稼働したとして約72TWhで1個分弱という計算です。因みに世界最大の発電所は中国の三峡水力発電所で22,400MWhですから1年間で約200TWh、マイニングが中国に集中するのも頷けます(2015年 社団法人海外電力調査会調べ)。

これを多いと考えるのか、まだ余裕があると考えるのか、見方が分かれるところですが、最近、マイニングが盛んになっているアイスランドでは電力は水力と地熱発電といった再生可能エネルギーで賄われている様ですし、マイニング=環境破壊とは言えないでしょう。また、上記のBitmain社は電力消費が1/3の新しいマシーンを開発しているとも言われています。ビットコインのマイニングに投入されているハッシュパワーは1年間で8.4倍に上昇しており、このペースで上昇すると維持できなくなるのではないかと危惧されてもいます。個人的には省電力化や再生エネルギーの利用と言った技術革新で克服できるのではないかと楽観視していますが、ビットコインというエコシステムの持続性に関わる問題で無視はできません。またこの電力コストを含めたマイニングのコストがビットコインの理論値になるとの見方もあり注目が必要です。

ところで、40代以上の方なら、京、垓、抒と来ると、ついつい(途中は忘れましたが)恒河沙、阿僧祇、那由他、不可思議と口からついて出るのではないでしょうか。それはカールセイガン博士がメインパーソナリティーを務めたCosmosという番組でIBMのCMで流れていたからではないかと思っています。そのCMで宣伝していたIBMの3033というスーパーコンピューターと現在のPCやマイニングマシーンとの性能を比較することは小職には無理ですが、その差を想像するだけ、技術革新が様々な問題を解決してくれると楽観的になれそうです。(肉)

にく

前職は外資系金融機関外国為替営業。国内だけでなく海外を仕事(?)で飛び回る日々を送っていた。自らライオンと称しているが、他の動物に例えられることが多い。 好きなものは東南アジア諸国。趣味は早朝ゴルフ。特技はタイ語。

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