2019.6.7【今年のヤマ場到来。どうなる?米不況、G20、米中貿易戦争】

2019-06-07 18:46[ 松田康生

Weekly Report 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン ビットコインキャッシュ イーサリアム リップル ライトコイン



Review

買い材料難でポジション調整

今週のBTC相場は大きく下落、目立った材料が無い中、上値トライに失敗すると大幅な調整を引き起こした。前週の乱高下から90万円台まで値を戻すとクリプトママことSECヘスター議員がETF承認のために戦うと報じられると上値トライするも95万円台で上値を重くする展開。しかし、米10年債金利が急低下する中、90万円台でサポートされていた。しかし証拠金最大手BitMEXのメンテを前にポジション調整売りが始まると84万円台までの急落を見せた。同社のメンテが無事完了、一旦は値を戻すも、パウェルFRB議長が利下げを示唆すると米株が急騰、逃避需要が後退するとの思惑や朝日新聞が仮想通貨取引で100億円の申告漏れと報じた事もあり80円台まで値を下げた。1年以上ぶりに国内交換所で新規で取扱いが開始されたモナコインが急騰すると85万円台に値を上げたが、その後の混乱もあり値を下げるとBTC相場も上値を重くし、狭いレンジでの揉み合いとなっている。

Outlook

フライング

来週のBTC相場は堅調な展開を予想する。先週も同様の予想をお伝えしたが、実際には反対に大きく値を下げる展開となった。小職は、従来より、市場の動きを実際より少し早めに予想してしまう傾向があるので、ここから上がるだろうと基本的な見方は変えていないのだが、とはいえやはり相場の動きを見誤った際には少し立ち止まって、何が正しく、何が誤っていたのか振り返ることが重要だと考えている。トレーダー出身者として、市場を見誤ることなどよくある話で、そこからどう見方を修正するかが勝率を分けると考えている訳だ。

ポジション調整も一巡→相場が一巡したので一旦調整

まず、先週は、上昇相場は一巡したとしながら環境が好転している事を理由に次の買い相場がやってくると予想したが、買い相場が一巡したという見立ては正しかったが、その後のポジション調整売りは、先週末の99万円から87万円の下げでこなしたと考えてしまっていた。ややフライングしてしまった形だ。ただ、6月5日には内容はまちまちだが、朝日、読売、産経といった一般紙に仮想通貨の記事が出た。また本日から日経にブロックチェーンの連載記事が始まっており、世間の注目度も少しずつだが好転し始めている。こうした動きが相場の下支えになるという見方は不変だ。

G20に向け上昇→G20を受けじりじり上昇

次にG20前に相場が上昇する傾向がある事を指摘したが、今週は思ったほどG20が話題に上らなかった。月末の大阪が本命と考える向きが多いせいかもしれないが、仮想通貨に関しては福岡の方が注目される。奇しくもSECのクレイトン委員長が昨日のCNBCでETF承認の条件として市場操作の監視を挙げた。これは今回、金商法改正で日本が世界に先駆けて導入したもので、今回のG20を機にこのルールを世界標準にしていく働きかけがなされるかが注目されており、これはどの市場でも紆余曲折を経て導入してきたもので、この市場で最も求められている。この考え方は必ずしも市場で共有されていない。まだこの市場はG20の声明文を見てすぐに反応する習性は身についていない様だが、その点に触れられていれば徐々に上昇に転じるものと考えている。これも、ややフライング気味だったか。

人民元安は為替報告書後→G20後、米金利低下でリスクオフ→不況入り回避の可能性

最後に貿易戦争激化による人民元安や米債金利低下が逃避需要を喚起すると予想していた。人民元に関してはやはりフライングで、米為替報告書操作国認定を逃れたからと言って流石にG20前に人民元安が再開するというのはフライングだった。しかしG20後に米国は更に追加関税を検討している模様で、いつ人民元が7を超えて大幅安となっても不思議でない。一方、米金利を巡っては大きな動きがあった。FRB議長の利下げ容認発言で米株は大きく上昇した。米債金利で見ると分かり難いが、2年債と10年債のスプレッドを見ると10bpほど拡大している。この2年10年スプレッドは米景気の非常に重要な先行指標とされており、逆転すると不況入りするとされているが、今回はギリギリのところで回避された可能性がある。米景気が何とか持つ可能性が出て来たことで、市場は過度のリスクオフには至らず、100万円トライを見込むが、そこから上はやや重くなると考えている。但し、過度の金融緩和は仮想通貨相場の暴騰を呼び込む傾向があるので長い目で見ればやはり買い方向か。

予想レンジ BTC 80万円~110万円

Altcoin

ETH:今週のETH相場は軟調な展開、30000円トライに失敗するとBTCに連れ安となった。前週の下落からじりじりと値を戻し、大手監査法人アーンスト・ヤングがイーサリアム上のトランザクションを秘匿化する技術ナイトフォールを公開、30000円を伺うもBTCの失速もあり上値を重くすると28000円近辺に値を下げた。BitMEXのメンテを前にBTCが急落するとETHも26000円台へ連れ安、更にパウェル議長の発言もありBTCが一段安となる中、26000円を割り込む局面も見られた。その後は26000円台で揉み合い推移を続けている。

来週のETH相場は堅調な推移を予想する。先週は書ききれないほどのヘッドラインが続いたETHだが、今週は目立ったものは監査法人の秘匿性技術とイーサリアムベースのゲームにスタートレックが追加された程度。アップデート関連での報道も無く、流石に30000円台をトライするには材料不足だったか。一方、ECBが5月に発表したとされる仮想通貨に関するレポートの内容が伝わってきたが、BTC・BCH・ETH・XRPの4通貨が利用の観点から最重要としている。中でも、デジタルゴールドでアルトコイン取引の決済基軸であるBTCと分散型アプリのプラットフォームであるETHの重要性は飛びぬけている。一時的な調整はあったとしても、大きくな値を崩す事は想定していない。

XRP:今週のXRP上値の重い展開。50円台トライに失敗すると42円台まで値を落としている。日米欧の十数行が新たなトークン決済の為に「エフナリティ・インターナショナル」を設立したとの報に若干値を落とすもリップル社が売却額の公表方法を変更し透明性を向上させるとしたことを好感した事もあってか50円をトライした。しかし、これに失敗すると上値を重くし、BTCの急落に連れ安となり45円を割り込んだ。その後、40円台前半での推移が続き、xRapidを利用した米国からフィリピンへの送金ツールSendFriendが今月リリースされるとされた事やタイのサイアムコマーシャルバンク(SCB)がXRPを利用した送金に関してもうすぐ正式発表があるとした事、またリップル社が機関投資家向け営業拠点をスイスに設立した事など好材料が続くも反応は薄かった。しかし仮想通貨ウォレット業者GateHubで約10億円分のXRPがハッキング被害にあったと発表されると、乱高下、補償の為の買戻しが期待されたせいか買いが優勢となり45円台に値を戻している。

先週は50円で根固めした上で60万円トライと予想したが、40円台前半に値を戻し、好材料があるも上値が重い元の状況に戻ってしまったように見える。上述のECBによる利用面で最重要の一つとされているが、BTCやETHのそれぞれの圧倒的な地位と比べれば送金面での利用が期待されるXRPにはライバルが後を絶たず、絶対的な地位を占めているとは言い難い。ただ、冷静に分析すると、「エフナリティ・インターナショナル」は2020年末の1通貨での導入を目指すとしており、昨年から実用段階に入ったxRapidの2年遅れだ。更にスキーム自体が明らかではないが、なぜわざわざ各中銀当座預金に口座を開いて、ステーブルコインもどきに両替する必要があるのか理解に苦しむ。JPモルガンのコルレス決済内だけで流通するJPMコインの複数銀行バージョンを考えている気もするが、JPMコインの弱点をさらに複雑にしてこじらせている印象もある。中銀当座預金を通すなら法定通貨で決済すればいいだけだ。xRapidも課題が無いとは言わないが、既に実用段階で今後はSendFriendの様に開発を終えて新サービス開始され、普及の段階に入るのも時間の問題であろう。以前から噂のあるSCBが採用間近というのも心強い。今週は総じて材料難だったが、XRPに関しては好材料がいくつも出てきている。

ハッキング問題で結局、値を上げたのはそうした好材料が背景にあると考える。尚、PoWではないXRPの場合、リップル社が旗を振って台帳を書き換えればいいのではとの議論も聞かれるが、現時点ではそうした動きは見られていない。もし、リップル社が中心となって台帳を書き換えたとすれば、彼らがXRPは証券にあたらないとする「リップル社が無くてもXRPは存在する」という論拠と矛盾してしまう。XRPのネットワークはリップル社のものでは無いからだ。コードの致命的バグや悪意あるネットワークへの攻撃などエコシステム全体の問題ならまだしも、利用者間のトラブルを運営側が首を突っ込むべきではないだろう。戻り売り圧力も運営の売りもこの出来高が続けばこなすことは可能で、次回反発局面ではあっさり50円台に乗せても不思議では無い。

BCH:今週のBCH相場は目立った材料が無い中、BTCに連れ安となる展開。50000円を前に上値の重い展開が続いていたが、BitMEXのメンテもありBTCが急落すると45000を割り込んだ。更にパウェル議長発言もあってBTCが80万円台を付けると40000円近くまで値を下げた。しかし、この水準で下げ止まるとモナコインの急騰とその後の反落に連れて上下したが、BCHサポーターであるBitmain社の元CEO、ウー・ジハン氏が1ヶ月以内にOTCのプラットフォームを立ち上げると伝わると、若干値を戻している。何かと問題のあるBCHだが、ECBに利用面で重要な通貨の一つと認められた事はサポート材料か。BTC反発時には50000円台乗せもあり得るか。

LTC:今週のLTC相場は目立った材料が無い中、BTCに連れ安となる展開。12000円台で揉み合っていたが、BTCの急落で11000円近辺まで下落。BTCが80万円台を付ける局面では10000円台に値を下げるも、LTC財団が10月のラスベガスのイベントに参加と伝わると下げ止まると、XRPの反発局面で大きく値を上げている。



FXcoin Weekly Report 2019.06.07.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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