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仮想通貨市場に機関投資家が参入するには (2)

2019-06-10 12:39[ れんぶらんと

金融リテラシーのお話 仮想通貨 暗号資産

機関投資家が仮想通貨市場に参入するには以下の条件をクリアする必要がある。
     1.十分な流動性
     2.ヘッジ手法の確立
     3.安全な保管先
     4.法制度・規制の充実

5月14日付当欄「仮想通貨市場に機関投資家が参入するには (1)」で、市場の流動性と安定性には多種多様な市場参加者が不可欠であることと、そのためには機関投資家の市場参入が待望されることを書きました。今回はその機関投資家が市場参入するための条件を挙げてみます。

1.十分な流動性

前回の当レポートでは、機関投資家の特徴として運用資産額が大きいということを書きました。例えば代表的な機関投資家のひとつである日本生命の資産は全体で68兆円(*1)ですが、そのうちリスク資産と呼ばれる外貨建て資産と国内株式はそれぞれ19兆円、9兆円で、全資産のうちの28%、13%です。

一般社団法人日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)の統計によるとわが国における現物仮想通貨取引額は1日に259億円なので、日本生命が資産の1%(≓6,800億円)を仮想通貨にシフトしようとすれば、それは今の仮想通貨市場の1日の取引額の26倍の流動性が必要となります。実質的には投資したくてもできる状況にはありません。

機関投資家が金融資産に投資する条件として重要なことは必要な時に買えて必要な時に売ることができるということです。現在の仮想通貨市場の規模では機関投資家のニーズを満たすだけの流動性があるとは言えません。

なお、外国為替市場と株式相場の1日の流動性を確認すると、東京外国為替市場Spot取引額は14.6兆円(*2)、国内取引所上場株式の取引額は2.7兆円(*3)で、仮想通貨市場の259億円とは比較にならない流動性があることがわかります。
仮想通貨市場の流動性が機関投資家のニーズを満たすには、今の7.8倍の取引額、つまり1日に2,000億円の取引額が必要となります(*4)。

2.ヘッジ手法の確立

機関投資家の投資において流動性と並んで重要なことは、相場変動リスクに対するヘッジ手法が確立していることです。金融市場は経済、政治、そして市場参加者の思惑などを反映して刻一刻と変動します。顧客から資産を預かっている機関投資家は状況の変化に対応してリスクヘッジ操作を機敏に行う必要があります。
日本生命の公表データによると、彼らは外貨建て資産を19兆円保有していることは上に書いた通りですが、そのうちの8.7兆円を為替予約で、1.1兆円を通貨オプションでヘッジしています。これらのヘッジにより同社は外国為替相場変動リスクの一部をコントロールしています。

現在の仮想通貨市場においては、為替予約のもととなるスワップ市場や、オプション市場がほとんどありません。これでは機関投資家は相場変動リスクを機敏にヘッジできません。BTCの対円相場はドル/円相場と比べて10倍の値動きがあります(*5)。このようにボラティリティが高い仮想通貨においてヘッジ手法が確立されていなければ、機関投資家はその投資をためらうのも当然です。

機関投資家が仮想通貨を投資対象とするには、外国為替同様にスワップやオプション市場を創設・育成していくことが不可欠となるのです。


(次号へ続く)

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(*1) 日本生命 2018年度決算(案) 補足資料 2018年度末データより。
(*2) 東京外国為替市場委員会取引高サーベイ 2018年10月データより。
(*3) 日本取引所グループ 統計月報 2019年4月データより。
(*4) 「投資家のニーズを満たす」=「総資産の1%の投資対象となる」=「株式市場と同じ流動性がある」を日本生命の場合にあてはめると、「日本生命の投資ニーズを満たす」=「6,800億円の投資ができる」=「市場の1日の取引額が保有資産の30%」= 「市場の1日の取引額:2,040億円」となる。
(*5) 2018年における1日の平均値幅はBTC/YENで6.1%、USD/YENで0.6%。
 
 

  

 

れんぶらんと

17世紀に活躍したオランダの画家レンブラント・ファン・レインの作品をこよなく愛する自称アーチスト。 1980年代後半のバブル期に株式および外貨資産投資を始め、いい思いをしてから投資の世界にどっぷりつかっている。

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