速報:ビットコイン8000ドル回復の背景~G20共同声明に隠された変化

2019-06-10 22:48[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン



福岡G20の共同声明を受け86万円台から82万円割れとなる水準まで下落していたBTC相場だが、先ほど87万円台、米ドルで8000ドルを回復した。この反発の背景として、短期的にはテクニカル的に84万円台のヘッドアンドショルダーのネックラインを上回ったことが挙げられる。また、82万円割れで下げ止まった要因として人民元安の再開が挙げられよう。米中の追加関税の応酬を終えた後、5月中頃から6.9近辺で揉み合っていた人民元がレンジを6.93に上昇(人民元安)した。人民元の場合、毎朝発表される基準レートに何らかの政治的意図が隠されている場合も指摘され、今回はG20で為替が昨年3月のコミットメントを再確認するとしか指摘されなかった事や一方で米中貿易摩擦の進展が見られなかった事から、中国側がカードを切って来た可能性がある。また、日銀の黒田総裁がさらに大規模な緩和が可能だとしたことも、逃避需要を喚起した可能性もある。

そうした事から、G20後に一旦は下がったものの反発したBTC相場だが、今朝方申し上げた様に今回のG20声明は売られるほど弱い内容で無かったという面も反発の背景にあると考える。やや引用が長くなるが、下は昨年7月と今回のG20共同声明だ。一目して、内容が増えている事が分かる。為替はたった30文字だったのに対し、暗号資産は1500文字を超える。50倍以上だ。中身を見ると、金融システムに便益をもたらし、現時点では金融システムの安定性にリスクをもたらしていない点までは前回とほぼ同じ、FATFもここまでの流れに沿った内容でサプライズは無い。Cointelegraphによれば顧客資産喪失時の弁済原資を確保する枠組みや取り扱う暗号資産いついての追跡可能性等など「投資家保護や市場の健全性に関し、暗号資産取引プラットフォームについてのIOSCOの報告書を歓迎する。」という部分は「消費者保護の面からも規制をかけなさいという訳では」無く、今後規制していきたいということであればIOSCOの報告書が「手引きになる」と金融庁は説明している。ここでも協調という話は出て来ない。

当社が一番注目していたFSB主導による市場の健全化等に向けた協調行動に関しては「FSBの暗号資産当局者台帳や、暗号資産における現在の取組、規制アプローチ、及び潜在的なギャップに関する報告書を歓迎する」とはしているものの、その後の文章は殆ど同じに見える。しかしよく見ると、「必要に応じ多国間での対応について評価するための更なる作業を」「期待する」から「検討することを要請する」に変わっている。すなわち、G20はFSBに検討開始を命じている訳だ。ただ、今朝方ご紹介した通りラガルド氏がコンセンサスは得られていないとした様に、まだ議論が始まったばかりで形になるのに時間はかかろう。昨年3月に始まったFATFの議論が1年余りで仮想通貨業界に激震を与えようとしている様に、もう1年もすれば、グローバルな規制の姿が見えてくるかもしれない、そう期待させるG20でもあったという事だろう。

(以下はG20財務相中銀総裁会議共同声明抜粋(仮訳)財務省HP)

2018年7月21-22日「暗号資産の基礎となるものを含む技術革新は、金融システム及びより広く経済に重要な便益をもたらし得る。しかしながら、暗号資産は消費者及び投資家保護、市場の健全性、脱税、マネーロンダリング、並びにテロ資金供与に関する問題を提起する。暗号資産は、ソブリン通貨の主要な特性を欠いている。暗号資産は、現時点でグローバル金融システムの安定にリスクをもたらしていないが、我々は、引き続き警戒を続ける。我々は、FSB及び基準設定主体からのアップデートを歓迎するとともに、暗号資産の潜在的なリスクを監視し、必要に応じ多国間での対応について評価するための更なる作業を期待する。我々は、FATF基準の実施に関する我々の3月のコミットメントを再確認し、2018年10月に、この基準がどのように暗号資産に適用されるか明確にすることをFATFに求める。


2019年6月8-9日
暗号資産の基礎となるものを含む技術革新は、金融システム及びより広く経済に重要な便益をもたらし得る。暗号資産は、現時点でグローバル金融システムの安定に脅威をもたらしていないが、我々は、消費者及び投資家保護、マネーロンダリング及びテロ資金供与への対策に関するものを含め、リスクに引き続き警戒を続ける。我々は、マネーロンダリング及びテロ資金供与への対策のため、最近改訂された、仮想資産や関連業者に対する金融活動作業部会(FATF)基準を適用するというコミットメントを再確認する。我々は、FATFが今月の会合にて、解釈ノート及びガイダンスを採択することを期待する。我々は、消費者及び投資家保護や市場の健全性に関し、暗号資産取引プラットフォームについてのIOSCOの報告書を歓迎する。
 我々は、FSBの暗号資産当局者台帳や、暗号資産における現在の取組、規制アプローチ、及び潜在的なギャップに関する報告書を歓迎する。我々は、FSBと基準設定主体に対して、リスクを監視し、必要に応じ追加的な多国間での対応にかかる作業を検討することを要請する。我々はまた、分散型金融技術、それが金融安定性や規制、ガバナンスにもたらす潜在的な影響、及び当局が広範なステークホルダーとの対話をどのように強化できるかについてのFSBの報告書を歓迎する。我々は、サイバーの強靭性を高める努力を強化し続けるとともに、サイバー攻撃への対応や復旧のための効果的な取組を明らかにするFSBのイニシアティブの進捗を歓迎する。」

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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