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何故エフナリティーがXRPのライバル本命か?14行出資のプロジェクトの目指すもの

2019-06-18 19:53[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 リップル

今月3日、日米欧の大手14行によるブロックチェーンを用いたFnality Internationalの設立が発表された。創業株主はサンタンデール、ニューヨークメロン、バークレイズ、CIBC、コメルツ、クレディスイス、ING、KBC、ロイズ、MUFG、ナスダック、SMBC、ステートストリート、UBSと日米欧の大手ばかりだ。同社はUSC(Utility Settlement Coin)というCAD、EUR、GBP、JPY、USDの5種類の通貨建てのステーブルコインの発行を予定しており、注目すべきはそのステーブルコインの預託金を各中央銀行の当座預金に預けるというスキームだ。同社はこのUSCを使って銀行間決済を目指すとしており、SWIFTに替わる次世代送金システム競争の先陣を切っているXRPに取って新たなライバル登場かと注目された。もし中銀当預を利用するとすれば信用力は群を抜くし、運営が主要行のコンソーシアム方式であれば、参加行がそちらを優先する可能性もある。本稿では、このFnalityプロジェクトがXRPやR3が目指す国際送金や貿易決済に与える影響を考えたい。

何故、Fnalityが本命なのか?

まず、おさらいだが、ブロックチェーン(含む分散台帳)技術を利用した次世代国際送金スキーム争いではトークンを送金媒介とするスキームの商用化に成功したリップル社が先頭を走り、独自のJPMコインが使用段階にあるJPモルガンが追いかけ、トークン構想を打ち出しつつステラか独自のステーブルコインか迷っているIBMハイパーレッジャー連合がそれに続いている状況という見方をしている事は何度かご紹介した。すなわち国際送金や決済には伝達機能と決済機能の2種類があり、伝達機能をブロックチェーンで代替する技術は各陣営とも相応に実用化の段階にあるが、次の決済機能をトークンで代替する技術で差がついているというものだ。この点、今回のFnalityは最初からUSCの利用を前提にしており挑戦者としての資格は満たしている。それ以上に、このスキームがXRPのライバルとして本命視される理由は、大手銀行が参加し、中銀当預を利用する点だ。

何故、中銀当預を利用するのか?

以前、JPMコインの弱点として、JPモルガンのコルレス内でしか決済できない点を指摘した。それなら各銀行がJPモルガンに保有する口座にドルを見合いにJPMコインが発行され、受取銀行がJPモルガンに保有する口座で米ドルに交換される。結局、JPモルガンのNY支店内での行内振替なのだから、米ドルでそのまま決済すればいい。仮想通貨の世界中どこへも自由に送金できるという特色を活かしているとは考えられない。今回のFnalityもそれに近い仕組みの様だ。日本を例に取れば、MUFGが日銀に保有する円口座からおそらくFnalityが開設する日銀当預口座(他の当預保有先に代行を依頼する可能性も否定できない)に円を送り(もしくは予め預け入れ)USC JPYの発行を受け、それをSMBCに送ると同行は円に変換する。まあ、これだけ聞けば、ならば円をそのまま送ればいいのではないかと思ってしまうが、正にその通りだ(そうしない理由は後述)。実際には、MUFGに円コルレス口座を保有する外銀からSMBCに円コルレス口座を保有する銀行へ円を送金する事を想定しているのだろう。これにExchangeが絡むと、送金銀行は予め現地通貨から円を購入し、その決済をSWIFTないしCLSで行い、更にその円をUSC JPYに変換して、、、何のためにそんな事をするのか不思議になってくる。現地通貨をXRPに交換して、日本でXRPを円に交換する、すなわちコルレスを通さない方がずっとすっきりしている。

何故、コルレスを通す必要があるのか?

では、何故、こういうスキームが出て来たか、その理由について2点思い当たる。まず1点目はFnalityが目指すビジネスはFMI(金融市場インフラ)、すなわち証券決済やデリバティブ、為替などの銀行間の市場取引の決済だ。為替の世界ではCLSといって参加銀行が予めいくらかの外貨などをCLS銀行に預けておくことで、同行内で同時決済をするインフラがあるが、同じ仕組みを証券やデリバティブ決済にも導入しようとするものだ。それでもCLSの様に法定通貨で決済したほうが良さそうなものだが、証券と代金を決済するような場合は、両者をトークン化してアトミックスワップで同時履行させようという考えと推察される。もう一つは、JPMコインと同じく、それらの銀行がコルレス決済を守ろうと考えている可能性がある。各銀行はどう思っているかはまちまちだろうし、多くの銀行はXRPやR3、場合によってはJPMのプロジェクトにも参加、次世代システムがどちらに転んでも大丈夫なように対策を打っているイメージだが、このプロジェクトを推進している運営側の考えは中銀当預とコルレス決済の存続を前提としている。

何故、送金決済の影響は限定的と考えるのか?

ここから考えられる影響だが、まず送金に関して、同社の発表した資料によれば、やはり単純なクリーン送金に注力している様子は見られないし、そもそもUSC自体、18か月以内の発行を目標とされており、その頃にはxRapidやJPMコインなどは相当普及していると考えられる。ただ、それでも考えられる可能性としては、こうした各国を代表するマネーセンターバンクはコルレス業務を手放すことに相当な抵抗を見せ、大手行のコルレス決済に固執するのに対し、送金業者や中小金融機関によるXRP決済を導入し始めるといった構図が見られるかもしれない。ただ、最終的には、大手企業等が銀行を通さない決済を始めることにより、大手行もトークンによる決済になびかざるを得なくなると考えている。

何故、Fnalityに注目すべきなのか?

ではXRP投資家はFnalityを気にしなくともいいのかと言えば、そうではないだろう。同社はUSCの活用例としてトレードファイナンスを挙げている。以前にご紹介したが国際決済のブロックチェーン化で主戦場の一つとなる分野だ。この分野で証券決済と同様に同時履行機能を活用できるとしている。LC決済に関しては銀行の信用創造機能が不可欠であり、どうした決済を選ぶかは銀行にイニシアティブがある。この分野でもXRPはR3セトラーで今のところ法定通貨以外で唯一の決済可能とされているなど先行はしているが、この開発と普及に乗り遅れれば、USCが大きなライバルとして台頭する可能性があり注意が必要だろう。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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