2019.6.28【乱高下するビットコイン相場のクセと買いの正体】

2019-06-28 17:05[ 松田康生

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Review

確かにLedgerXは好材料だが

今週のBTC相場は大きく上昇。120万円のレジスタンスを抜けると一気に150万円近くまでの急騰を見せたが、週末にかけて反落を見せている。注目のFATFのガイドラインがほぼ予想通りで相場が崩れなかった事から120万円近くまで急上昇したが、G20でリブラのリスクが議題に上るとされた事もあり上値を重くしていた。しかし、香港情勢は内政問題なのでG20で議題としないとした中国政府に反発したデモ隊が日米領事館に嘆願書を提出、またCFTCがLedgerXにBakktに先んじて現物受渡先物取引を承認した事も好感され120万円を上抜けると、買いが買いを呼ぶ展開となり140万円近辺まで急騰。BISに続きFSBもG20にリブラへの規制を要請したことやBitfinexのメンテもあり一旦は揉み合うも、メンテが無事終了すると150万円近くまで急騰するも、コインベースのアクセス障害や米中貿易戦争の一時休戦報道などもあり大きく反落している。

Outlook

仮想通貨相場のクセ

来週のBTC相場は軟調な推移を予想する。先週は100万円乗せが「もう一段の買いを誘発」すると予想「上値の目途は別稿でも述べた125万円近辺。ただ、そこに達したら70万円台までの急反落」と申し上げた。この上値の目途が125万円でなく150万円までオーバーシュートしたのだが、そこからの反落も予想通りだ。今朝のDailyでも申し上げたが根拠は、2013年12月のバブル崩壊からの回復過程で2015年1月に底を付けたが、しばらくは安値圏で揉み合い、12月に急騰、1月の底値から約3倍の水準まで上昇した後、翌日にピークから25%、1週間後には40%の下落を見せている。上がったものは下がると言えばそれまでだが、この急騰と急落の繰り返しは、価格の拠り所が無く、実需の買いも機関投資家の売買も殆どない仮想通貨相場の癖なのだろう。HFやCTAなどではなく本当の投資家が入ってくればもう少し穏やかになりそうだが、一方で価格は飛んで行ってしまうかもしれない。

中国からの買いの正体

先週は一段の買いのきっかけはステルス緩和ではなく、LedgerXの現物受渡先物の承認だった。機関投資家参入のきっかけとなるとされたBakktと同じ商品だが、同社はまだ開始しておらず、また同社が始めたからと言って直ぐに生保や年金が参入する訳では無い。即ち、期待先行で買われて、実需がついて来ないので、そのうち反落するという訳だ。ただ、そうした短期のポジションのほかに、今回の上昇を支えたものとして、中国からの逃避買いが挙げられる。新華社通信も貿易戦争を嫌気した逃避買いがBTCに出ていると報道、また米調査会社メサーリは最近のテザー発行増を指して、中国人投資家がOTCでテザーを使ってBTCを購入しているとした。以前、中国からの逃避買いを誘発するメカニズムをお伝えしたが、今回の貿易戦争の火種は5月5日のトランプ大統領の追加関税ツィートでなく、それ以前に中国側がそれまで積み上げていた合意文章をひっくり返した事が原因と日経が伝えている。何でも習近平の融和方針に対し長老などから批判が出たらしい。すなわち、貿易交渉で踏み間違えば可能性は小さいが習体制に綻びが出る可能性を敏感に感じ取った現体制派の富裕層の一部が情勢を見ながら資産を逃避させている、こう考えるとBTC相場が人民元相場や貿易戦争にいちいち反応することも合点がいくし、テザーに関してもすっきりする。足元では一時停戦観測で逃避買いが一服しているが、29日の米中首脳会談は注目だろう。

金融緩和が後押し

上は金価格とBTC価格の推移だ。金価格が若干先行している様にも見えなくは無い。その金価格はここ5年くらいのレンジの上限だった1350ドルを6月20日頃に上抜けて急上昇した。このきっかけは言わずと知れた米FOMCで年内利下げが確実視されたことだ。すなわち、デジタルゴールドとして投資アセットの一部とBTCが認識され始めた結果、利下げによる国債の魅力低下がBTC買いに繋がっているのだろう。こう見ればBTCの独歩高とも整合性が合う。来週は上げ過ぎた相場の調整、更に米中停戦となれば一段の下げが見込まれ、下値の目途はピークの4割安の90万円程度か。ただ金融緩和による買い意欲もあり100万円割れた辺りで反発するのではないかと考えている。

予想レンジ BTC 90万円~130万円

Altcoin

ETH:今週のETH相場は堅調な推移。他のアルトコインがBTCの急騰について行けない中、ETHだけは38000円まで急騰、その後の反落も限定的に止まった。前週に30000円台の値固めに成功したETH相場は、グレイスケールのETH投信販売開始や次回アップデート、イスタンブールで新たな提案が2件採用されるなど進捗が見られた事もあり上昇、BTCの1万ドル乗せもあり、あっさり300ドル乗せに成功した。その後は一進一退の展開が続いたが、BTCの急騰にETHだけは比較的ついて行き、38000円台に乗せるも、その後の反落もあり35000近辺での取引となっている。

来週のETH相場は底堅い値動きを予想する。昨年前半のICOバブルによる売り圧力に苦しんだETHだが、今年に入って続々と分散アプリが稼働し始め重要性が増しており、一方でスケーラビリティーの解消に向けたアップデートも進捗している。一方で、BTCが2017年の最高値をうかがう動きを見せているのに対し、ETHはピークの1/4に戻していない。確かに、ICOバブルで異常な価格を付けていたとの部分は否定できないが、アルトコインの中で圧倒的に有用性を証明しており、ETHが無い世の中は考え難くなっているとさえいえる。そうした欠くことが出来ない存在となりつつあることから、BTCに逃避買いが出る際にETHにも若干の買いが入るのではないか。言うなればBTCプラスワンだ。そうした意味でETHは過小評価されていると考えており、40000円台回復もそう遠くないと考える。リブラがスマートコントラクトを実装した事で若干動揺を招いたが、G20で同通貨が集中砲火を浴びることによって、その分の買戻しも期待されよう。

XRP:今週のXRP相場は上に行って来いの展開。50円台に乗せ上値を伺ったものの最後は反落、50円台での値固めに失敗した形。リブラの登場がネガティブに影響すると思われていたXRPだったが、同通貨の登場は既存の金融機関に危機感を抱かせ、その結果、1週間のリップル社との契約社数が過去最高に達したと伝わると、BTCの上昇もあり50円台を回復。xRapidを利用するフィリピンへの送金業者SendFriendの稼働開始が伝わったが、既に月内開始が報道されていたこともあり影響は限定的だった。一方、ライバル関係にあるJPMコインが年内に実証実験と伝わるも、リブラと同様、送金のブロックチェーン化が進むとの見方もあってか、影響は限定的となった。BTCの上昇で50円台半ばへ値を上げ、その後反落を見せるもxCurrentを利用するマネータップの参加行が7行増えた事やリップル社がコインファームと提携しAMLを実装しようとした事など好材料が続いたが、シンガポールのBitrueでハッキングによるXRPの流出が発生した事を嫌気して45円近辺まで値を下げている。

来週のXRP相場は底堅い値動きを予想する。最後はハッキング事件で値を落としたが、ハッキング事件が必ずしも売り材料になるとは限らず、地合いの弱さを反映していたのだと考える。しかし、いよいよSendFriendによりアメリカからフィリピンへの本国送金にxRapidが利用される。即ち、XRPを用いた送金の本格的普及が始まった事を示している。一方で、XRPを送金の媒介に使用しても売りと買いが同時に発生するので需給に与えるインパクトは限定的だ。このヒントがJPMコインにあると考える。JPモルガンのコルレス内でしか交換できないJPMコインはドルのコルレス決済を守ろうとする同行らの都合から生まれており、顧客のメリットにならないものはあまり普及しないと考えるが、同行が年内に予定する実験には顧客の事業法人が含まれるらしい。もし、こうした顧客がJPMコインを用いて銀行を通さず送金するならば、画期的でJPモルガンに口座を保有する企業間での普及が考えられる。一方、リップル社がAMLを手掛けようとしているのは、このXRPの法人利用、すなわちxRapidを銀行や送金業者だけでなく、一般企業にも開放することを視野に入れている可能性がある。ここがSWIFTやコルレスと異なる点で、そうなれば既存の銀行もコルレスに拘る余裕は無くなるだろう。

BCH:今週のBCH相場は上に行って来いの展開。目立った材料の無い中、BTCに連れ高となったが、その後反落している。リブラ登場により最も影響を受けるという見方もあり4万円台半ばで上値の重い展開が続いていたが、BTCの上昇に加え、リブラに逆風が吹き始めてきたこともプラスに働いたか5万円半ばまで急騰した。その後は5万円近辺で揉み合ったが、BTCの上昇もあり55000円台に乗せるも、46000円近辺まで値を下げている。

LTC:今週のLTC相場は上値の重い展開。週末に格闘技イベントを終えた事、リブラの登場による将来の決済利用の可能性の後退に加え、8月の半減期に向けた期待先行の買いポジションが上値を重くしている模様。BTCの乱高下でも、上昇局面ではついて行けないが、下落局面には大きく反応する状況が続いている。


FXcoin Weekly Report 2019.06.28.pdf

 



松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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