2019.7.1【7月のビットコイン相場。150万円に戻すには時間が必要か?】

2019-07-01 21:54[ 松田康生

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Review

150万円近辺まで急騰

6月のBTC相場は大幅続伸。100万円台に乗せると、1万ドル、125万円と節目のレジスタンスを上抜け、150万円手前まで急騰したが、110万円台へ反落を見せている。BitMEXのメンテナンス前にポジション調整もあり80万円近辺までの急落を見せたが、日米欧の金融緩和への動きを嫌気した逃避買いや6/18にホワイトペーパーが発表されるリブラへの期待感もあり底堅く推移、これに香港デモ激化による逃避買いが加わり100万円台乗せに成功した。注目されたリブラが発表されると、総花的内容や各国当局から一斉に異論が噴出した事もあり上値を重くするも、米FOMCで年内利下げが決定的となると金価格の上昇もありBTCも120万円手前まで上昇。LedgerXが現物受渡先物取引の承認をCFTCから得たという報に120万円を上抜けると150万円手前まで急騰した。しかし米中貿易戦争の一時停戦や米朝首脳会談による緊張緩和もあり110万円台まで反落を見せている。

Outlook

6ヶ月連騰になるかは5分5分

先月は「月足5連騰を予想する理由」と題し「G20に向けて仮想通貨は買われる傾向がある」とし「堅調な推移」を予想した。福岡の財務相中銀総裁会は空振りに終わったが、次の大阪に関しては若干のずれがあるがG20に向けて上昇、終えると反落に転じている。ただ、「105万円プラスアルファ程度(その後、125万円近辺に修正)」とした上値は150万円手前まで、すなわちプラスアルファが45万円も生じてしまった形となった。この上昇相場、特に最後の上昇は買いが買いを呼ぶ展開でやや行き過ぎた面も否定できず、多少の調整を余儀なくされるだろう。

アノマリー

これで5か月連続の陽線となったが、過去10年間で5か月連続の上昇となったのは今回を除き6回。うち6か月連続の陽線となったのは半分の3回と半々でしかない。更に7ヶ月連続で上昇したケースは無い。アノマリー的には、今月か来月か少なくともどちらかで陰線が出るという事になる。Weeklyでもご紹介したが、2013年12月のバブル崩壊からの回復過程で2015年1月に底を付けたが、しばらくは安値圏で揉み合い、12月に急騰、1月の底値から約3倍の水準まで上昇した後、翌日にピークから25%、1週間後には40%の下落を見せている。これには続きがあって、その後1ヶ月でピークの9割の水準まで戻している。しかし、ピークを上抜けるには5か月強を要している。

金融緩和

7月のBTC相場が下に行って来いの展開を予想する。米中貿易戦争の一時停戦により習体制に綻びが出ると言った懸念は後退、人民元安誘導も自重される事から、メインランドからの逃避買い意欲は後退すると考える。一方で、今月はいよいよ7月31日FOMCがあり、市場は利下げを100%織り込んでいる。また、7月10日にはFRB議長の議会証言、25日にはECB理事会、30日には日銀政策決定会合と金融緩和のネタに事欠かない。一旦下押しした後は135万円近辺までの戻しはあるか。

予想レンジ:90万円~135万円


Topic

週末のG20観戦ガイド:注目点と予想を解説
6月8-9日に福岡で日本を議長国としてG20財務相中銀総裁会議が開催される。今回のG20ではマネロン対策(AML/CFT)以外の分野でグローバルな規制の方向性が打ち出されるかに注目。共同声明の仮想通貨に関する部分は、総合評価、金融システムへの影響、AML/CFTの3つのパートに分かれる。総合評価は大きな変更がないだろう。もしあればポジティブサプライズだ。国際社会は金融包摂、低コストの送金が貧困対策に役立つ点を評価している。金融システムの部分で、世界標準のルール作りを始める事となればポジティブサプライズだ。社会に認められるには社会のルールを守る必要がある。AML/CFTの部分ではサプライズは無いと考えるが、国外や分散型交換所への規制に言及があればネガティブサプライズか。
速報:ビットコイン8000ドル回復の背景~G20共同声明に隠された変化
福岡G20の共同声明を受け86万円台から82万円割れとなる水準まで下落していたBTC相場だが、先ほど87万円台、米ドルで8000ドルを回復した。今回のG20声明は売られるほど弱い内容で無かったという面も反発の背景にあると考える。「FSBの暗号資産当局者台帳や、暗号資産における現在の取組、規制アプローチ、及び潜在的なギャップに関する報告書を歓迎する」とはしているものの、その後の文章は殆ど同じに見える。しかしよく見ると、「必要に応じ多国間での対応について評価するための更なる作業を」「期待する」から「検討することを要請する」に変わっている。すなわち、G20はFSBに検討開始を命じている訳だ。もう1年もすれば、グローバルな規制の姿が見えてくるかもしれない、そう期待させるG20でもあったという事だろう。
なぜ人民元安になるとビットコインが買われるのか?
5月の仮想通貨相場上昇の背景のひとつとして人民元や韓国ウォン安が指摘される。中でも人民元はトランプ大統領が2000億ドル分の追加関税をツィートした5月5日頃から下落に転じると、BTCも60万円台から90万円台に急騰した。人民元安になると対ドルで値が立っているBTC価格の元建て価格は上昇すると言われるが、今回の人民元安は3%程度で、その価格要因だけで1日10%動くこともあるBTCに資金が移動したという説明はやや違和感がある。薄熙来事件では蓄財や不正送金、政争に負けた側の処遇などの一端を明らかにされた。すなわち中国本土から資産を海外に逃避したいというニーズは根強いことが背景にあると考える。
何故エフナリティーがXRPのライバル本命か?14行出資のプロジェクトの目指すもの
今月3日、日米欧の大手14行によるブロックチェーンを用いたFnality Internationalの設立が発表された。同社はUSC(Utility Settlement Coin)というCAD、EUR、GBP、JPY、USDの5種類の通貨建てのステーブルコインの発行を予定しており、注目すべきはそのステーブルコインの預託金を各中央銀行の当座預金に預けるというスキームだ。以前、JPMコインの弱点として、JPモルガンのコルレス内でしか決済できない点を指摘したが、今回のFnalityもそれに近い仕組みの様だ。すなわち参加行がコルレス決済を守ろうと考えている可能性がある。USCは18ヶ月以内の発行と相当先の話しだし、まずは金融インフラ、証券やデリバティブ決済を目指すとしている。しかし同時にトレードファイナンスも視野に入れておりXRP投資家としては目が離せない可能性がある。
何故リブラでビットコインは売られたのか?比べて浮かび上がる違和感の正体
昨日のリブラのホワイトペーパー発表後、FB社株も仮想通貨相場も下落した。一時的なSell the Factだったのかもしれないが、同ペーパーを見て若干の違和感を抱いたのも事実だ。全世界で数十億人の利用などと大風呂敷を広げた割に、お膝元の米議会から異論が出たように、コンプラ面などの詰めの甘さも失望を呼んだが、違和感の正体ではない。既存通貨と比較すると、ステーブルコインで、スマートコントラクトで、コンセンサスで高速処理と各分野の通貨の良いとこ取りをした結果、総花的となってしまった。ビットコインや、イーサリアムや、テザーがメジャーなのはオリジナルだから。後発は多少の違いでは類似品と扱われる。それが、この違和感の正体か。特にSNSという新分野を作り上げた同社だからこそ、市場の過大な期待がかけられ、裏切られた形となったか。但し、流石に日次アクティブユーザー15億人の同社が手掛ける以上、ある程度の成功は収めるだろうし、経済のトークン化を世に広める効果も大きいだろう。

Altcoin

ETH:6月のETH相場は大幅上昇。3万円台に値を戻すと、次は300ドル水準を突破、BTCの急騰に3万円台後半まで値を上げるも3万円台前半に値を戻している。月初はBTCの冴えない値動きに25000円近辺に値を落としていたが、Cointelegraphが分散アプリの大多数はイーサリアムベースと報じ、また米政府のブロックチェーンプロジェクトのレポートで7例中3例がイーサリアムベースと報じられたほか、オーストリアで世界初のブロックチェーン切手が販売されるなど好材料が続き30000円手前まで上昇した。リブラがスマートコントラクトを実装し分散アプリにも進出するという事が伝わると上値を重くしたが、イーサリアム2.0のスタートが2020年1月3日とされ、またグレイスケールがETH投資信託を販売すると300ドル水準を回復、更に日本の自主規制団体がICOの新規性を発表、またBTCが急騰するとETHは比較的ついていき、一時38000円台を付けた。しかし、その後はBTCに連れ反落し33000円近辺での取引となっている。

6月のETH相場は堅調な推移を予想する。先月は「BTCは昨年7月の水準を目指しているが、ETHで言えば5万円台となる。」とし「上昇余地はまだある」と申し上げた。BTCは7月の水準どころか3月の戻り高値さえ上抜けているが、ETHは4万円台にすら乗せていない。ICOの売り圧力から脱し、イーサリアムベースのプロジェクトの進捗が進む。分散アプリでは、パブリックならイーサリアム、そうでなければプライベートチェーンが好まれる傾向にあり、リブラなどの他のスマートコントラクトには厳しい状況だ。更にデジタルゴールドたるBTCに買いが入る際に、デジタルシルバーとしてETHも買われる局面も散見された。スケーラビリティー解決に向けた開発が進んでおり、まだまだETHは過小評価されていると考える。

XRP:6月のXRP相場は上値の重い展開。一時50円台半ばまで値を上げるも、その後、失速。結局、上に行って来いの展開となるも50円台での上値の重さを印象付ける形となった。月初はBTCの下落に連れ安で40円台前半へ。大手銀行十数行が集まったFnalityの出現も上値の重さに影響したか。しかし、xRapidを利用するSendFriendが今月リリース予定とされ、またサイアム商業銀行がTwitterでXRP利用を示唆した事などもあり45円台に戻すも、SCBが撤回・陳謝すると40円台前半に値を下げた。その後、リップル社のスイスやブラジルへの進出、また米大手送金業者マネーグラムとの資本提携などもあり50円トライするも、リブラの登場で影響を受けるとの発想もあり上値を重くした。しかし、発表されたリブラは、ステーブルコインでスマートコントラクトで送金にも使えるという焦点のぼけた内容で、更に各国当局から異論が続出する事態にXRPにネガティブという印象も後退し、更にリップル社CEOからその週の契約件数が過去最高を記録したと伝わるとBTCの上昇もあり50円台乗せに成功した。リブラ登場に危機感を覚えた金融機関がXRPに殺到したという訳だ。しかしBTCが反落、シンガポールの交換所Bitrueで4億円強のハッキングが伝わると45円近辺まで急落している。

6月のXRP相場は底堅い展開を予想する。今月はSendFriendの開始、リップル社とマネーグラムとの提携、同じく送金大手WesternUnionのXRP検討中報道など好材料が続いた割に上値が重かった。実は月初のGateHubでの2320万XRPのハッキングの際には相場は戻し、月末のBitrueの980万XRPのハッキングでは相場は急落した。ハッキングそのものより、BTCも急落している様に地合いが悪かったものと考えられる。デジタルゴールドたるBTCに対し、後発のETHやXRPは有用性を示さなければならない。この点でETHはゆるぎない地位を手に入れつつあるが、XRPには未だライバルが多い。もし次世代の送金インフラが1種類に絞られるのだとしたらXRPといえども油断はできない。しかし、現実にXRPは送金業者で送金の媒介に使用され始めており、こうした業者がJPMコインやリブラに乗り換えることはあり得ない。更にリブラの登場と同様、送金業者のXRP利用は中小金融機関に危機感を持たせる。これから徐々にXRPは普及されて行こうが、今のところこの段階にある送金コインは他に存在しない。

BCH:6月のBCH相場は上に行って来いの展開。あまり独自の材料が無い中、BTCに連れ高するも、対BTCではほぼ一貫して下げ続けた。ウージハンがOTCプラットフォームを近日立ち上げるとするなど、サポーターであるBitmain関連のヘッドラインに反応する局面もあったが総じて固有の材料が見当たらずBTC連動するが、リブラが発表されると、少なくとも決済通貨には脅威という見方が出回り、対BTCで値を下げ続けた。

LTC:6月のLTC相場は上値が重く下値も堅い展開。月前半はOKexが半減期を記念したキャンペーンを実施、またLTCのハッシュパワーが最高を記録、更にチャーリー・リーが半減期後のマイニング収支を試算したことなどもあり15000円台に乗せるが、リブラはLTCの決済利用に打撃を与えるとの見方から上値を重くし、対BTCで値を下げ続けた。



FXcoin Monthly Report 2019.07.01.pdf




松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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