2019.7.5【やはり出たビットコイン相場のクセ。今後の注目点は?】

2019-07-05 21:21[ 松田康生

Weekly Report 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン



Review

中国から米国へバトンタッチ

今週のBTC相場は130万円から105万円で切り返し130万円近辺まで値を戻す、いわゆる下に行って来いの展開となった。米中貿易戦争の一時休戦や米朝首脳会談が緊張の後退と捉えられたせいか、軟調に推移、1万ドル水準を割り込むと、105円万円まで値を落とした。ErisXの現物受け渡し先物市場に向けた清算ライセンス取得や濃くない大手交換所の新規口座受付再開などもあり下げ止まると、米10年債金利が2%をクリアに割れた事もあり大きく反発、トランプ大統領の米ドル安容認発言も仮想通貨への資本逃避の買いを誘発したか。その後は、硬軟材料が交錯する中、125万円を前に上値を重くしていたが、香港デモの立法府への侵入と鎮圧が自作自演だったという報道もあり130万円手前まで値を上げた。しかし独立記念日で金利低下を嫌気した米国からのフローが細る中、サポートだった125万円を割り込むと118万円近辺まで下落している。

Outlook

やはり出た仮想通貨相場のクセ

来週のBTC相場は堅調な推移を予想する。先週は「上げ過ぎた相場の調整、更に米中停戦となれば一段の下げが見込まれ、下値の目途はピークの4割安の90万円程度か。ただ金融緩和による買い意欲もあり100万円割れた辺りで反発する」と申し上げた。残念ながら反発したのは100万円割れではなく、105万円だったが、概ねここまでの展開はほぼ想定通りの展開だった。別稿で述べたように、この値動きはBTC相場のクセだからだ。

中国の動き

先週申し上げた通り、この2か月の上げの背景には中国からの買いがあると考えている。米中貿易戦争激化で国内経済に打撃を受け、一方で法改正してまで妥協する姿に党内から異論が出て強硬姿勢に転じた。もしかすると、そうした補助金の見直しや構造改革が国営企業という虎の尾を踏んでしまったのかもしれない。しかし、今回の停戦でそうした懸念はひと段落した形だ。その結果、こうした中国からの買いが細り、場合によっては利食いに回り、今回の反落を演出したと考えている。中国に関してはもう一つ面白い動きが見られる。新華社通信がBTCを逃避資産と認め、また中国最大のSNS微博を運営する企業が金融ニュースサイトに仮想通貨価格情報を載せ始めたのだ。これが中国国内での仮想通貨取扱いの雪解けを意味するか否かは不明だがポジティブなニュースの可能性が高い。

米国の動き

では今回の反発は何だったのか?上図はここ数日の米10年債利回りとBTC価格だ。105万円割れからBTCが反発するタイミングで米10年債が2%を割れている。日本で仮想通貨取引を行っている人で米債を見ている人はあまりいないと思われるが、CMEのBTC先物の参加者は固唾を飲んでこの2%割れに注目していたことだろう。即ち、今回の反発の後ろには米国からの買いがあって、それ故、1万ドル割れで押し目買いが殺到し、日本人が待つ100万円割れには到達しなかった、だから米債市場が休みだった影響でBTCは反落したのだと考えている。

今後の注目点

この様に個人投資家がグローバルに参加するBTC相場では地域によって注目材料が異なるのであろう。中国人投資家は米中貿易摩擦や香港情勢、米国人投資家は利下げや米債金利、そして日本の投資家は国内交換所の新規口座開設再開といった感じだろう。そうした中、BTC相場はこの1年でグローバルな金融市場の出来事により反応するようになった印象を持っている。そういう意味では、今後は本日の米雇用統計や7日の香港デモ、10日の旧ハンフリーホーキンズ議長証言、さらには今月末から来月にかけてはFOMC、北戴河会議、ジャクソンホール辺りが注目となる。それぞれにどのように仮想通貨相場が反応するか、面白くなってきた。一例を申せば、北戴河会議直前には小さいながら長老による習下ろし懸念からBTCには逃避買いが出やすいと考えている。

予想レンジ BTC 105万円~135万円



Altcoin

ETH:今週のETH相場は上値の重い展開。先週末に33000近辺で取引されていたETHだが、ETHのトランザクション数が1日、百万件を超えたとの報もあり35000円台をうかがう動き。しかし米中貿易戦争停戦や米朝首脳会談でBTCが値を崩す中、連れ安となり30000円近辺まで値を下げた。しかしBTCが切り返し、またイーサリアム2.0フェーズ0が導入前の最終段階に入ったことも好感され値を戻すも32000円台で上値を重くする展開。最後はBTCの反落で30000円近辺まで値を下げている。

来週のETH相場は底堅い値動きを予想する。今週も丸紅がイーサリアムベースのエネルギー売買プラットフォーム企業と提携するなど、実用化の例が後を絶たないETHだが、一時下火になっていたICOにも動きが出始めた。自主規制団体JVCEAはSTOの規則及びガイドラインを公表、パブリックコメントを求める一方で、CointelegraphによればSTO関連の新たな団体を作る動きもみられている模様だ。イーサリアム2.0の開発も順調に進んでおり、ETHの過小評価は解消される方向に進むと考える。

XRP:今週のXRP相場は上値の重い展開。リップル社の投資部門Xpringが出資した米送金大手マネーグラムが、先週末、この提携は完璧の結婚と評しxRapid利用に前向きな姿勢を示し46円前後まで値を上げたXRPだが、G20後のBTCの反落につれ42円近辺まで値を下げた。BTCが切り返すと、Xpringが20社以上5億ドルのXRP関連投資を行っていると伝わったこともあり下げ止まるも44円台が重い展開。¥xRapid利用企業が20社以上に達したとの報道もあるが上値が重く、BTCの反落に41円台に値を下げている。

来週のXRP相場は底堅い値動きを予想する。今週はxRapid利用企業が20社に達したというニュースにあまり反応しなかった。(見落としが無ければ)小職の認識では、これ以前に公式に伝わっていたのは5社程度だったので、比較的ポジティブなニュースだ。送金業者を中心にXRPを使った送金は、実用段階から普及段階に移ろうとしている。そのニュースが発表されたカンファレンスでSWIFTのGPIとの違いが説明されていたが、SWIFT GPIはあくまで既存のコルレス決済を効率化するツールで、仮想通貨を送金の媒介にするxRapidとは別次元のシステムだ。そしてリブラの登場は送金がトークン化するという流れを認知させた。要は、材料的には大きなプラスなのだが、相場の地合いが悪いため、ハッキングで大きく売られ、こうした好材料に反応しなかったと考えている。しかし、相場がそうした過小評価を修正する局面がいずれ到来するものと考えており、何かをきっかけに大きく上昇しても不思議はない。

BCH:今週のBCH相場はBTCに連れて軟調な展開。米中貿易戦争停戦や米朝首脳会談でBTCが135万円から105万円に2割強下げる局面では48000円から42000円に1割強下落したが、105万円から130万円近辺で戻す局面では45000円までしか戻せず、上昇局面でついていけなかった形。ロジャー・バー氏がトランザクション数ではBCHが2番目だとレポートを拡散したが反応は限定的だった。最近、これといった話題に欠けるBCHだが、昨年ハードフォークで分岐したライバル関係にあるBSVとの関係で動きがみられている。一つはBSVの中心人物クレイグ・ライト氏がフロリダでの裁判で追い詰められていることだ。同氏は法廷で書類を投げたりして裁判官に注意されるなど問題行動を続けていたと報じられていたが、陣営が提出した証拠書類が偽造だったとCointelegraphが伝えている。もう一つはBCHのサポーターであるBitmain社が運営するBTC.comがBSVのマイニングを開始したことだ。こうした動きがBCHにどう影響するのかは今のところ未知数だが、何らかの動きが出る可能性があり注意が必要だ。

LTC:今週のLTC相場はもみ合い推移、BTCに連れ乱高下を繰り返したが、総じて横ばい圏での取引となっている。先週末に13000円近辺で取引されていたLTCだが、BTCの上昇もあり14000円台半ばに上昇、その後のBTCの反落で値を下げるも、12000円台では下げ渋った。その後はBTCの戻りにも下げにも反応は限定的で13000円近辺での取引を続けている。ブロックチェーン基盤の決済企業フレクサ(FLEXA)は同社の決済システムがLTCに対応したと発表、全米3万9250(記事掲載時点)以上の店舗でLTCを即時決済に利用できるようになるとされた。ただ、このシステムはすでにBTCやETHなどをサポートしており、それで両通貨が上がったということはないので過大評価は禁物だが、決済を志向するLTCにとっては好ニュースだろう。

FXcoin Weekly Report 2019.07.05.pdf

     

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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