2019.7.26【ビットコイン相場の新法則「閑散に買い無し」とは?】

2019-07-26 16:35[ 松田康生

Weekly Report 仮想通貨 暗号資産



Review

日中のフローが後退

今週のBTC相場は上値の重い展開。ただ先週から通してみると、100万円から120万円まで上昇、103万円でサポートされて110万円に戻す、ほぼ横ばい圏での方向感に欠ける展開となっている。先週の下げでリブラの早期開始は無いと織り込んだせいか反発、Bakktが7-9月に開始するとの予想やFidelityのトラスト申請などもあり120万円近辺まで値を上げていた。しかしその水準で上値を重くすると、韓国での仮想通貨被害額の発表、香港デモに対する当局対応への米国支持、仮想通貨推進派の藤巻議員の落選とアジアからのフローを後退させる材料が続いた。更にバフェット氏とランチを延期したジャスティン・サン氏の中国拘束説などが流れ下落に拍車をかけた。その後もVISAのCEOがリブラ協会参加は規制整備が条件とすると1万ドルを割り込んだ。月末のFOMCを前に米利下げが意識され始めると110万円近辺まで値を戻している。

Outlook

出来高の減少

来週のBTC相場は底堅い展開を予想する。先週は「中国や本邦からのフローに陰りが見える可能性があり上値の余地も限定的」としつつ金融緩和を意識した「底堅い展開を予想」した。日中のフローは細っても、米国というか米利下げを嫌気したフローはむしろ回復すると考えたからだ。実際、週末にかけて若干反発したが、戻りは鈍かった。Reviewで述べた様にアジアからのフローを細らせる材料が続いたことと今一つ米利下げを意識する展開にならなかったことが挙げられる。こうしたフローの減少は出来高に表れている。下は直近3か月のBTCの出来高と価格だ。今週に入って200億ドルを割り込む日が続いている。勿論、市場の動きはケース・バイ・ケースだが、BTC市場の構造は一定のマイニング報酬の売りを投資家の買いが飲み込んでいく構造であるので、一般に出来高の減少は売り要因となる。


サマーシーズン

日中に加え米国からのフローも減少している背景の一つとしてサマーシーズン入りが挙げられる。米国では独立記念日(7/4)からレーバーデー(9月第一月曜日)までを夏休み期間として、金融市場全体が閑散となる。株の場合は閑散に売り無しと言ってサマーラリーすると言われているが、BTCの場合は閑散に買い無しといったところだろうか。実際、月別のパフォーマンスで見ても夏休みが本格化する8月はBloombergでデータが取れる過去8年中上昇したのは3回のみで納税売りの影響からか2回のみの3月に次いでパフォーマンスが悪い。来月に入れば一段と上値が重くなりそうだ。一方、サマーシーズンとはいえ7月は旧ハンフリーホーキンズ法のFRB議長議会証言や利下げが予想されるFOMCが控えており、まだ市場に人は残っている。来週は最後の上げを見せ、そこを発射台に8月はじり安、9月に入って反転する、そういったイメージを持っている。ECBに次いで日銀、FRBと各国が競争して自国通貨の価値を下げようと動く中、米国を中心にアロケーションの一部をBTCにシフトする動きが出ると考えている。

北戴河会議始まる?

今週、注目しているのが北戴河会議だ。この会議は万里の長城が海に到達することで有名な山海関に近いリゾートに7月末から8月半ばにかけて共産党執行部と長老が集結するもの。万が一にも習近平体制が崩れるとしたらこのタイミングということで様々な噂が飛び交う。そうした中、中国本土からの逃避フローが出ても不思議でない。警備の関係もあり詳細なスケジュールは不明だが、現地警察は7月13日から8月18日まで大がかりな交通規制を引くそうで、来週中にも開催される可能性が高い。また30日には日銀政策決定会合、31日には米FOMCが開催される。各国中銀は緩和競争でいかに自国通貨の価値を下げるか腐心しており、やはりBTCの買い要因となろう。

予想レンジ BTC 100万円~140万円

Altcoin


BTCのドミナンツの上昇が話題となっているが、今回の上昇相場が始まった4月初めからの各通貨のドミナンツの変化を並べたものだ。この3か月弱でBTCのドミナンツは約3割上昇しており、アルトコインは軒並み下げているが、同じアルトコインでも下げ幅に大きな違いが出ている。BCHは比較的減少幅が軽微で、ETHやLTCは相応に下げているが、XRPのシェア低下が著しい。短期間にこれだけ差が出るのには何らかの理由があると推察される。リップル社はQ2の市場売却額を公表したが、前期比約3割の増加となっている。同社は売却額の計算方法を公表していないが、出来高の算出をCoinMarketCapからCrypto Compareに変更したとしており、出来高が何らかの基準となっていると推察される。即ち、他のPoW通貨は出来高に関係なく一定のマイニング報酬が実需売り圧力となり、出来高が上昇すると売り圧力が後退するのに対し、XRPは出来高に合わせて増減させることが、このパフォーマンスの違いに表れているのではないか。逆にBCHは大口マイナーであるBitmain社が価格の上昇を見込んで売りを控えているのかもしれない。これは昨年の下落局面で出来高の減少時にXRPのパフォーマンスに比して堅調だったこととも整合的だ。

ETH:今週のETH相場はBTCに連れ上値の重い展開。しかし週後半にかけ反発、先週末比ほぼ横ばい水準となっている。週前半は目立った材料がない中、BTCに連れ上値の重い展開。ただジャスティン・サン氏のバフェット・ランチ延期でTRONが急落する局面では、スマートコントラクトのライバルであるETHの下落は限定的に留止まった。週後半は、独規制当局がETHベースのSTOを承認、野村證券もブロックチェーンでの社債発行の目途を発表するなどSTO開始に向けた動きを好感してか、アルトの戻しを主導した。

来週のETH相場は底堅い値動きを予想する。今週は日中米とも逃避買いが不発だったが、来週は米利下げを意識した逃避買いが復活すると考えている。BTCプラスワンと目されるETHにも若干買いが入る可能性がある。独の案件は不動産の証券化でETHベースの紙の証券に替わってトークンを売買するというもの。こうしたスキームで投資家の払い込みが法定通貨かETHかはケース・バイ・ケースだろうが、どこかでETHの買いが生じる可能性がある。買われたETHは比較的すぐに法定通貨に換金され一昨年のICOブームほどのETH買いインパクトはないかもしれないが、本格的金融市場でこうした動きが活発化すれば、大きなETH買い圧力になるのではないか。

XRP:今週のXRP相場は横ばい圏での取引。34円から36円に上昇、33円に反落し34円に値を戻している。リップル社のガーリングハウスCEOは、リブラの規制議論の中で同社による中央集権性が糾弾された結果、BTCなどの分散性の高さが賞賛される風潮に、アメリカは中国に牛耳られているBTCやETHを好むのかと警鐘を発した。また先週よりSWIFTgpiが話題になっているが、同システムはSWIFTのメッセージを仕向銀行・被仕向銀行だけでなくコルレス銀行への決済指示も共有する仕組みと理解しているが、今回はシンガポール国内の決済システムと接続して短期間の決済を成功させたようだが、コルレス決済を残す限り、トークンがダイレクトに着金するシステムに適わない。また、同行内の本支店間ならともかく、他行間の決済システムと自行の中銀当座預金の決済システムを何のチェックもなしに接続しSTP決済を行う事には非常に不安が残る。仮想通貨と同様、SWIFTも何度となくハッキングされ、多額の損害を出しているからだ。夏枯れ相場で全体的に出来高が減少する中、XRPのパフォーマンスは相対的に回復するのではないか。

BCH:今週のBCH相場はBTCに連れ上下もほぼ横ばい圏での取引となった。自称サトシのクレイグ氏の裁判は混迷を深め、一方でBSVがハードフォークでブロックサイズを2GBまで拡張させたが、BCH単体の話題に乏しい展開となった。市場では11月のハードフォークで装備される新機能に注目が集まっている。

LTC:今週のLTC相場は目立った話題がなくBTCに連れる展開。チャーリー・リーも参加予定のランチの延期でやや売られている。8月5日頃と目される半減期を前に同意の薄い展開が続いている。


FXcoin Weekly Report 2019.07.26.pdf


 


 

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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