2019.8.1【夏枯れのビットコイン相場、それでも上がると思う理由】

2019-08-01 21:00[ 松田康生

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Review

夏枯れ相場

7月のBTC相場は上下に大きく振れるも、総じて上値の重い展開。月足で半年ぶりの陰線となった。6月末の米中貿易戦争停戦や米朝首脳会談などもあり105万円下げていたBTC相場だが、国内大手交換所の新規口座開設再開や米大統領の通貨安誘導発言、さらにテザーの大量発行などもあり上昇するとFRB議長の議会証言で金融緩和方針が出るとの期待もあり140万円台まで上昇した。議会証言では利下げ方針示されたが、同時に議長がリブラに対する懸念を表明するとSell the fact的な売りも巻き込み120万円台へ下落。更に国内交換所でのハッキング、リブラの公聴会での異論続出、遂にはG7でリブラは通貨主権を侵害するとまで指摘されると、早期実現の可能性は途絶えたとの見方から100万円を割り込んだ。その結果、悪材料出尽くしで一旦は反発したが、夏枯れ相場で出来高が低下する中、再び100万円を割り込むも、米利下げもあり若干値を戻している。

Outlook

想定通りの展開だったが

先月は「下に行って来い」の展開をとし「一旦下押しした後は135万円近辺までの戻し」を予想した。実際は120万円から105万円まで値を下げた後、143万円まで値を戻した。その後は上値の重い展開となったが、これも「6ヶ月連騰になるかは5分5分」とし「150万円に戻すには時間が必要」とした想定の範囲内の値動きとなった。ただ、想定外だったのは出来高の急減で、先週のWeeklyで指摘したように供給量が一定の仮想通貨の場合、出来高の減少は下落要因になるため、思ったよりも上値が重かった印象だ。夏枯れが上値を重くするならば、本邦の夏季休暇が本格化する8月は更に上値が重くなることとなる。

アノマリー

ところが、このところ的確に月足の動きを当てているアノマリーによれば、今月は上昇する可能性が高い。上記の黒枠で囲んだ部分がBTCが5か月(黒字)ないし6か月(黄色字)連騰した期間だ。今回を除いてそれぞれ3回ずつ、計6回確認できる。勿論、その翌月は反落(赤枠)しているが、6回中5回までが反落は1か月で、その翌月は上昇に転じている。そうでなかったケースも2か月、そのうち1か月は4.9%と小幅な下落に止まっている。やはり5連騰や6連騰を見せている時は地合いが強く、また投資家も強気なので、下がったところには押し目買いが殺到しやすいか。

どちらかと言えば上

8月のBTC相場は底堅いが上値も重い、揉み合い推移を予想する。夏枯れ相場でマイナーの売りが上値を重くする一方、下がったところは押し目買いが出やすい。米追加緩和の催促相場も始まり、上か下かと言えば、若干の上昇を見ている。ただ、本格的な回復相場は米国が戻ってくる9月のレイバーデイ明けと考える。

予想レンジ:95万円~125万円



Topic

修正年間見通し~何故200万円回復するのに年末までかかるのか?
昨年末のYearly Reportでお伝えしている弊社の年間見通しを修正、それまで2020年末頃と考えていた200万円トライを2019年末に1年前倒し、2020年末には360万円に達すると予想。理由は①2020年までは個人中心②世界の個人金融資産の0.1%から0.2%投入されるとBTCの時価総額は2倍から3倍に増加③ 年末までは貿易戦争の一時停戦で中国からのフローは細るが金融緩和が本格化することが追い風に④ 過去10年間でBTCが7か月連続で上昇した事はなく、今月か来月に調整が入る可能性が高い⑤レンジを切り上げる際にオーバーシュートしては急落し、じりじりと値を固めていくのがBTC相場のクセ。6月の150万円を見てすぐにでも200万円に到達すると見るのは危険。
ビットコインの2つのクセ~乱高下を続ける理由
過去の回復局面を1年程度で切り取ると、ピークを付けてから1-2週間で3-4割の反落を見せるなど、BTC相場は、じりじりと上昇するのではなく、突然価格が2倍近くに暴騰して、そこから調整してレンジを固めていく、傾向が見つかる。数年規模でみるとバブルのピークから約1年後に85%程度の下落を見せ、そこから反転している。ただし、前々回バブルの際はピーク価格を更新するのに1219日すなわち3年以上要している。それ故、弊社では200万円回復を2020年末と見ていたが、出来高の急増もあって今回は戻りのペースが速いので、2019年末と1年前倒しにした。
トランプ政権はビットコインの買い材料?米国が世界の警察に続いて手放したいもの。
月曜日に「南海バブル超えたビットコイン、FRB信認低下と歩む」という記事が注目を集めた。要は、トランプ大統領の言いなりになって利下げばかりしているとFRBひいてはドルの信認が低下し、BTCに買いが入るという訳だ。米中貿易戦争による経常赤字を削減とドル安誘導とのを組み合わせは、アメリカが基軸通貨特権(少なくとも責任だけ)を放棄したがっている可能性を示す。記事は「ビットコインの上昇を相場操縦といった近視眼で決めてかかるとドル基軸体制の揺らぎという歴史的変化を見逃すことになりかねない」と喝破している。トランプ政権の存続そのものがBTCの買い材料なのかもしれない。
ビットコイン急落を招いたリブラ公聴会。何が火に油を注いだのか?
昨日のリブラに関する米上院公聴会を受け仮想通貨相場は全面安の展開となった。本文中に紹介したように、リブラは世界中の当局から異論を受けている。私企業が開発する仮想通貨は大なり小なりビジネスであり中央集権。それを前面に押し出さぬ様、ホワイトペーパーでは美辞麗句を並べたがる。しかし、FBの場合は、世界の金融包摂の為の金融インフラを構築するという壮大な絵を描いた結果、国際通貨秩序のライバルとして立候補した形になった。これがリブラの踏んだ虎の尾の正体だろう。
仮想通貨とは何なのか~欲望の貨幣論2019を視て
岩井教授は貨幣商品説と貨幣法制説を否定、価値の根拠がないことがお金の条件で、金属から紙、デジタルデータに移っていくのは自然な流れだとした。弊社でも、まだ通貨としての機能を果たしていない仮想通貨に価値尺度・価値保存・流通手段といった要件を求めるのはナンセンスで、運搬性・保存性・等質性・分割性の面で、穀物、貴金属、紙に替わる媒体としてデジタルデータが現れたと考える。仮想通貨には裏付けも価値の源泉もなく、それが価値を持つという信用によってのみ流通していると考える。番組中で仮想通貨への人気を社会契約論のジョン・ロックの貨幣観の回帰と紹介されたが、近年の非伝統的とされる金融政策は厳格なプログラム下で発行されるBTC人気を押し上げるとする。これも金融緩和を最大のBTC買い材料のひとつと位置付ける我々の考え方と整合的だ。
仮想通貨だけでなく、SWIFTも。ハッキング対策は社会全体の課題
2016年2月バングラディッシュ中銀でSWIFTを悪用した81百万ドルの不正送金が発生。これを契機にベトナム、エクアドル、フィリピン、ウクライナ、台湾やネパールなどで同様の攻撃が明るみに出た。金融界のハッキング被害はSWIFTだけではない。NYタイムスは2015年に銀行システムへのハッキングによる不正送金やATM不正操作で3億ドルの被害が出たと報道、Bloombergは北朝鮮ハッカー集団、世界の銀行システムから1億ドル超の横領と伝え、日経新聞は今年3月には国連安保理で北朝鮮が仮想通貨交換業者への攻撃で5億ドルの被が出たと報じた。ATMなど各銀行システム、SWIFT、そして最近は仮想通貨交換所と、狙いやすさに応じてハッカーたちが標的を変えており、照準を合わされた仮想通貨業界にはより高いセキュリティーが必要。一方で、ハッキングを理由にした仮想通貨否定論はナンセンスで、デジタル社会におけるハッキング対策は捜査当局も含めた社会全体で取り組むべき課題か。

Altcoin


Cointelegraphによれば機関投資家向けに仮想通貨投資プラットフォームを手がけるSFOXがBTCとETHの相関関係が他の仮想通貨との相関関係より高いことから、ETHはアルトコインというカテゴリーに分類されないかもしれないと指摘した。上記はBloombergのDATAを元に弊社でも過去数か月に遡って調べたところ、確かに6月以降、BTCのドミナンツが上昇した6月中旬頃からETHとBTCとの相関性が他通貨に対して上回っている。これはアセットとしてBTCが選好される局面で、他のアルトコインに比べETHは比較的ついていけていたことを示しており、逃避アセットとしてETHはBTCプラスワンの地位を占めているという弊社の主張とも整合的だ。と関係する。但し、ETHはXRP・BCH・LTCなどとも0.8以上の相関係数を見せており、SFOXが言うようにETHはアルトコインでは無いというのはやや言い過ぎか。

ETH:7月のETH相場は上値の重い展開。月前半はイーサリアム2.0のフェーズ0が仕上げの段階に入り、CMEがETH先物開始を準備しているとの報道や米SECが初のSTOを承認したことなどもあり、比較的堅調に推移、FRB議長証言に向けたBTCの上昇に比較的ついていけていた。しかし、ヴィタリック・ブテリン氏がスケーラビリティー問題の解決策としてBCHとの統合を提案するとじりじりと値を下げた。しかし独当局が不動産証券化でのSTOを承認したことも有り下げ止まると7月31日の誕生4周年に向け比較的底堅い値動きを見せている。

8月のETH相場は堅調な推移を予想する。各種プロジェクトの進展、STOの開始と好材料が続いたETHだが、BCHとの統合提案が嫌気された格好。更に、今後は金融緩和からのBTCへの逃避の一部が入ることで底堅さを増すものと考える。まずは30000円台回復か。

XRP:7月のXRP相場は上値の重い展開。しかし月末に向け底堅さは見せている。マネーグラムとの提携などもあり6月末にピークを付けたXRP相場は月初から上値の重い展開、xRapid利用拡大など好材料が続いたXRPだが、FRB議長がリブラに懸念を示すと大きく下落、米公聴会でリブラの中央集権性が糾弾されると、さらに値を下げる展開。しかしリップル社CEOがXRPとリブラとの違いを説明、議会に書簡を送るに至ると落ち着きを取り戻した。しかし暗号資産版SWIFT開発報道やQ2の市場売却額の増加なども嫌気され上値の重い展開が続く。8月のXRP相場は横ばいか。Q2の決算発表ではxRapid利用の拡大も伝えられた。一方で売却額の増加は市場出来高の計算方法の変更による一時的なものという説明も見られた。ただ、運営や袂を分かった大口保有者などからの売りがあるXRPは、夏休みシーズン本格化による出来高の減少は上値を重くしよう。

BCH:6月のBCH相場は上値の重い展開。BCH特有の材料がない中、BTCのパフォーマンスについていけない局面が目立った。月初こそBitmain社関連のポジティブなニュースが続いたが、その後はBSVの話題ばかりで。そうした中、リブラの登場が決済需要を奪うとの見方も見られたが、同通貨の実現が厳しいと判明したことも有り若干値を戻している。

LTC:6月のLTC相場は軟調な展開。チャーリー・リーが半減期後、最初の難易度設定までの混乱を予告、リブラ登場も嫌気され値を下げたが、同通貨の実現が危惧され始め、またLTC財団がマイアミ・ドルフィンズの公式仮想通貨となったことも有り値を戻した。いよいよ8月7日(推定)に半減期を迎えるが、LTCのみでなく来年のBTCの半減期の予行演習としても注目が集まる。

FXcoin Monthly Report 2019.08.01.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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