2019.8.2【ビットコイン相場反発は本物か?2つの注目材料。】

2019-08-02 21:44[ 松田康生

Weekly Report 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン イーサリアム ビットコインキャッシュ リップル ライトコイン



Review

100万円割れの堅さを確認

今週のBTC相場は底堅い展開。一時100万円を割り込むも、寧ろ100万円のサポートの強さを印象付ける展開となった。Bakkt早期開始への期待もあり110万円台に乗せていたBTC相場だが、リブラはMIT論文のコピーとする報を嫌気し急落、更に香港デモの強制排除後の買いが出ないと見ると日本時間の早朝に一時100万円を割り込んだ。しかし、その水準での押し目買いの強さに急反発すると、上値も重く下値も堅い狭いレンジでの取引が続いた。注目の仮想通貨規制に関する上院公聴会が何も決まらず無事通過すると上位賞に転じ、後に誤報となるのだがLedgerXがBakktに先立ち現物受渡先物取引をローンチしたとの報に110万円台に値を戻した。しかし米利下げ幅が25bpに止まった事も有り上値を重くしたが、その後、米10年債金利が2%を割れるなど追加利下げの催促相場となり、トランプ大統領が対中輸入の3000億ドル分に10%関税を課すとすると更に値を上げている。

Outlook

時間差で買い材料

来週のBTC相場も引き続き底堅い展開を予想する。先週は、供給量が一定の仮想通貨市場の場合「閑散に買い無し」で上値が重いが、米利下げや中国からのフロー回復で「底堅い展開」を予想した。実際にその通りなのだが、米利下げに対する反応は、当初25bpでは不十分と買いで反応しきれなかったが、その後、他市場が追加利下げの催促市場となった結果、時間差でBTCに買いが入るややトリッキーな相場となった。今回の利下げは黎明期を除き仮想通貨市場が初めて迎える利下げ局面でどのような反応するか注目されたが、今のところ長期金利の低下がBTCの買いにつながっている模様。その結果、BTC相場がISMや雇用統計など経済指標に反応する場面も見られつつある。ただ、多くの伝統的アセットとの相関係数は低いままで、逃避アセットとしての役割も保っている。

絶妙なタイミング

北戴河会議に関してもまだ殆ど情報が出てきておらず、どこまで上昇に寄与したかは不明だ。しかし、これも時差で効いてくる可能性が高い。上は、以前よりご紹介しているBTC相場と人民元・韓国ウォンの推移だ。人民元安になるとBTCは買われやすく、また米中貿易摩擦が激化しても逃避買いが出やすい。こうした動きが観察されたのは5月上旬にトランプ大統領が2000憶ドル分の関税引き上げを表明、すると人民元安が始まり、BTC相場も上昇した。次に6月上旬残る3000憶ドルに対しても追加関税を課すとしたことで再燃かと思われた。しかしこの時には人民元安誘導は見られず、何とか米中首脳歓談で一時停戦という形で決着した。停戦合意後、BTCは急落している。ちょうど赤線が貿易戦争激化で緑線が一時停戦とみるとBTCの上昇局面が見事にこの期間に当てはまっている。今回の3000憶ドルの追加関税を9月に定めた事は一時停戦の破棄を9月1日を期限として最後通牒として突き付けた形となっている。これから長老たちとの会議を乗り切ろうとしている習近平にとって非常に痛いタイミングだ。この材料も時間差で大きく効いてくるものと考える。

貿易戦争激化は追加緩和を催促

そうした中、中国本土からの逃避フローが復調することが予想される。また追加緩和の催促する市場に対し、FRBが受諾するメッセージを発する機会も少ない。火曜日深夜のブラード・セントルイス中銀総裁、水曜日のエバンス・シカゴ連銀総裁のコメントか。これを逃すとジャクソンホールまでこじらせかねないが、その前に決着はつくだろう。今回の大統領の翻意も貿易戦争リスクを単発利下げの理由にしたパウエル議長に追加利下げを図るためとの見方もあり、いずれにせよ最終的に追加利下げに追い込まれるものと考える。夏枯れで出来高減少の向かい風と追加緩和・貿易戦争の追い風で差し引き若干強めの相場展開を予想する。

予想レンジ BTC 100万円~140万円

Altcoin

今週のアルトコインはBTCのドミナンツの上昇が一服、各通貨に下げ止まりの動きが見られる一方で、リブラを巡る議論も燻っており、総じて上値も重かった。リブラに関しては、先週の米公聴会に続きG7で通貨主権の侵害ととどめを刺され、FB社も恭順の姿勢を見せた事から、当面、すなわち流通する各国で規制が出来、それをクリアするまで実現は難しい事が明らかとなった。更に協会のオープニングメンバーとされたVISAが参加する義務はないと一歩後退、肝心のFB社も実現しない可能性を指摘するなど、かなり危うい材料となっている。それでも、今週もBSフジの2時間番組で特集されるなど注目度は高く、番組内で野口悠紀雄一橋大教授が「なぜリブラ協会を作ったかというとフェイスブックの隠れ蓑」と喝破されるなど制度設計の甘さも指摘されつつ、浅川前財務官は「ある国の金融政策に自国民が信頼を置いていない場合に自国の通貨を放棄してドルなどより信頼に足る通貨を自国経済の取引において使うことは今でもよく見られる話。リブラが出来た場合、さらにクロスボーダー取引が安価になって非常に使いやすくなるということになると、さらにリブラがドルに取って代わる可能性は十分にある」とするなど、期待感も根強い。

ETH:今週のETH相場は底堅い展開。リブラのコピー報道でBTCが下げる局面では値を下げるも、22000円台では底堅さを見せ、誕生4周年や英当局の規制対象外との認定などもあり値を戻していったが、週末にかけては急激な円高の影響もあり円建てでみると上値を重くしている。

来週のETH相場も底堅い値動きを予想する。サマーシーズンということもあり開発系のヘッドラインが一服しているが、米追加緩和期待や米中貿易戦争の再燃などからBTCプラスワンであるETHには買いが入り易い展開が続くものと思われる。

XRP:今週のXRP相場は横ばい圏での取引。リブラのコピー論文で値を下げるも、チリでのリップルネット普及、リップル社CEOが議会への公開書簡やBloombergでのインタビューなどでリブラとXRPとの違いを説いたこと、さらに10百万XRPのエアドロップなどもあり値を戻している。

ここのところ目に付くのがガーリングハウスCEOの発言だ。上述のインタビューでの「リブラに関してFB社は傲慢だ」とやや過激なコメントしている。すなわち、同氏は一貫してリブラとXRPとの違いを説いているが、そもそもリブラはXRPを真似して作っているのだから似ている部分があるのは当然だ。しかし、リップル社は金融界から拒絶されないように辛抱強く共存共栄を説き、ある程度の棲み分けや協力関係を積み上げてきている。ところが、突然、IT界の巨人が成功体験をもとに、仮想通貨業界と金融界や当局とが積み上げてきた信頼関係を土足で踏みにじろうとしている様に見える。実際、議会などでは中央集権性に焦点があたり、非中央集権のBTCやETHが良しとされつつある。そこで、同CEOはBTCやETHのマイニングの過半数を中国に握られているのですよと警鐘を鳴らしている。運営側や大口保有者の売り圧力の影響もあろうが、こうしたリブラ批判の流れ弾もXRPの上値の重さに影響しているのかもしれない。9月以降の出来高回復までは上値の重い展開が続くか。

BCH:今週のBCH相場は堅調な推移。リブラのコピー報道で値を下げるも、2重支払証明や匿名機能の提案やBCHを使ったトークン発行、更にロジャー・バー氏率いるBitcoin.comが1か月以内に交換所を立ち上げるとした事も好感されじりじりと値を上げる展開、先週末と比べても高値圏で引けている。誕生2周年に向けBCHは値を上げていったが、同じく決済利用を目指すLTCも買われておりリブラの迷走の影響もプラスと出たか。11月のアップデートに向けた新規提案も好感されている。昨年の分裂騒動もあり、BCHが世界的な決済の中心になる可能性は極めて小さくなったが、こうしたコミュニティーの熱烈な支持もあり、当面は底堅く推移するか。

LTC:今週のLTC相場は半減期を前に堅調な値動き。10000円割れて始まったLTC相場だが、創始者チャーリー・リーが4日以内に半減期を迎えるとし、それを記念して2万LTCのエアドロップを開催、その条件が少量のLTCを先に送金することだったこともあり価格が上昇、11000円近くまでの上昇を見せている。日本時間で8月5日前後とされる半減期はLTC相場だけでなく、来年に控えるBTCの半減期の予行演習としても注目が集まる。特に報酬が半減してから次回の難易度調整までの承認遅延の発生状況など注目点は多い。



FXcoin Weekly Report 2019.08.02.pdf




松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

アーカイブ