2019.8.9【夏休み入りしたビットコイン相場、今後の行方は?】

2019-08-09 20:50[ 松田康生

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Review

米中摩擦に翻弄

今週のBTC相場は堅調な展開。110万円から130万円まで反発したが、その後は12000ドル水準が意識され、上値を重くした。先週、トランプ大統領が追加関税のツィートや市場の追加利下げ催促もあり110万円台に乗せていたBTC相場だが、中国で北戴河会議が開始、また香港のデモがゼネストに拡大、また人民元が11年ぶりに7を超えると120万円台に乗せた。LTCの半減期が問題なく通過、米財務相が中国を為替操作国に認定したこともあり130万円まで急騰した。しかし中国当局が為替操作はしておらず元安も続かないとし、クドローNEC議長が大統領は協議を求めているとすると120万円まで値を下げた。この様に米中対立激化は中国からの逃避買いが出るのでBTC買い、緩和は売りという構図が見られたが、弊社を含め中国からのフローは増えていないとの指摘があった様に、実態は投機筋が貿易問題を材料に一喜一憂している形で、やや方向感を失っている。

Outlook

利下げを織り込みすぎ

来週のBTC相場は上値も重い展開、若干の調整を予想するが、下がったところでは底堅さを見せよう。先週は、北戴河会議を前にした貿易摩擦の激化と追加利下げ催促とで、底堅い展開を予想した。実際、トランプ大統領は追加関税に加えて為替操作国認定という切り札を惜しげもなく切ったが、中国側も農産物輸入禁止や人民元の7超えといった劇薬で対抗、これを嫌気しBTCは上昇、想定通りの展開だった。ただ、蓋を開けてみると、どうやら今回の買いは5月の様な中国からのフローが主役では無かった可能性が浮上した。そうであるならば、貿易摩擦激化→人民元安→BTC急騰といった5月の相場が頭にある投機筋が、米中摩擦再燃を見て先回りして買っていた可能性がある。それ故、12000ドルレベルで上値を重くしたと考える。残ったポジションはいずれ巻き戻しを余儀なくされることから、若干の調整があると考えている。追加利下げに関して織り込みが進んだ事も上値が重いと考える一因だ。米10年債は7月末のFOMCで利下げが25bpに止まった翌日から、次回9月FOMCでの利下げを催促する形で2%を割ると、今週は一時1.6%割れとなったが、そこから切り返している。パウエル議長が連続利下げは無いとしているのに対し、市場は9月のFOMCで25bpの利下げを7割に対し、50bpも3割織り込んでおり、やや過熱感が見られる。



通貨安競争

この利下げをFRBに迫っているのがトランプ大統領だが、遂に強いドルは望まないと金融緩和による通貨安競争を公言しつつある。こうした中、WSJによれば今週、インド、タイ、ニュージーランドが米国に追随利下げを行ったが、それに先んじてマレーシア、インドネシア、韓国、南アフリカなどが利下げを実施、来月にはECBも金融緩和策を打ち出す方針だ。こうした中、手詰まりにも見える日本円が独歩高の様相を呈している。逆に日本が緩和に踏み切れば、市場に若干インパクトがあると考えている。以前にも説明したが、本邦の10年国債利回りは-0.22%と若干ながら日銀のターゲットを下回っている。これを買いオペで修正しなければ、実はステルスで政策変更があったと見做しえる。本日の即日オペは見送られており、このままお盆明けの火曜日に買いオペが入らなければ世界同時金融緩和の文字が世界を駆け巡る可能性がある。BTCは底堅いと考える所以だ。

4勝4敗

来週は、日本でもお盆シーズンで、夏休み本番で、参加者が極端に減る可能性がある。一方、マイニング報酬は一定であり売りが優勢となる可能性がある。Bloombergによれば8月10日から20日まで過去8年でBTCは4回上昇、4回下落している。この8年間でBTC価格は1万倍にもなっていることから考えれば、この5分5分という確率でも売られやすい期間であると言えよう。こうした中、上値が重く調整が来そうだが、下がったところは底堅い、横ばい圏での推移を予想する。

予想レンジ BTC 110万円~130万円

Altcoin



今週のアルトコインの注目はLTCの半減期とBTCのドミナンツの上昇再開だろう。特に前者は来年5月に控えるBTCの半減期の予行演習として何が起こったのか記憶しておいて損はないだろう。上はLTCのこの1年の推移。日付は半減期の8/5をT+0とし、それより何日前かで表している。以前、半減期は売り圧力の減少という形で買い要因と申し上げたが、半減期の様にそうなることが事前にわかっている場合、相場は予め織り込みに行くので、従来は1-2か月前から上昇、半減期後1-2か月は横ばいもしくは売り込まれる傾向を見出していた。しかし、今回を見ると180日前から120日前、そして90日前から45日前まで上昇、そこからは寧ろ下がっている。半減期の付近で言えば、半減期直前に価格が上昇、その後反落している。またハッシュレートは半減期を超えても減少することは無かったが、最初の難易度調整後、減少している。8/5時点では458テラハッシュ(TH)だったものが、8/6でも444THにしか減少しなかったが、8/8時点で381THに減少している。

因みに未だにハッシュレートやネットワークの価値をベースにBTCの価格を計ろうとする人が見られるが、岩井教授によれば、貨幣の価値を投入された労力やコストに見出そうとする貨幣商品説や労働価値説は誤りで、それ自体に価値がないことが貨幣の必要条件としている。弊社もコスト自体は無視できないが、それを価値の源泉と考えるのは因果関係を逆に考えてしまっていると考える。

ETH:今週のETH相場は揉み合い推移。週前半はBTCの上昇もあり23000円から25000円近辺まで値を上げたが、BTCが上値を重くすると値を下げる展開。BTCのドミナンツが69%に上昇する中、若干劣後するも、週後半にかけてアルトコインが総崩れする中、週を通せばほぼ横ばい圏での取引となっている。やはり、BTCプラスワンとして選好されていることが伺える。ETHベースのゲーム上でBTCのライトニングネットワークを搭載する提案にブテリン氏がゴーサインを出したことも若干プラスに取られているか。

XRP:今週のXRP相場は前半堅調だったが、週後半にかけてじりじり値を下げる展開。先日Xpringが出資したマネーグラムが決算発表でxRapidによる今後の増収をアピール、マスターカードの決済企業買収に際し、以前リップル社の広告担当だったコリー・ジョンソン氏がXRPの得意とする即時決済の時代が到来したとしたが、運営側などからの一定の売り圧力があるXRPにはリップル社がそれを跳ね返すへッドラインを供給する必要があるが、10億ドルを割り込む出来高では上値の重さは仕方ないか。日本がお盆に入る来週は更に上値を重くするか。

BCH:今週のBCH相場は横ばい圏の取引。ETH同様、前半はBTCにつれ高、BTCの上昇が一服した後半は値を落としている。ロジャー・バー氏がBitcoin.comのCEOを退任、BSVの分裂などもあったが影響は限定的。ただ、BTCのハッシュレートの8000京乗せに際しBCHはその1/40と話題になったが、50%攻撃等の不安は残る。

LTC:今週のLTC相場は上に行って来い。5日の半減期の直前に急騰を見せ、報酬が半減したにもかかわらずハッシュレートも横ばいで、むしろブロック生成時間が短くなる局面もあった模様だが、落ち着くにつれじりじり値を下げ、7日の難易度調整で1割程度の減少に止まった事を嫌気してか、ハッシュレートは2割近く減少した。


FXcoin Weekly Report 2019.08.09.pdf


松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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