【第3回】 オプションディーラーの視点 ~リスクリバーサルはBTC高を示唆~

2019-08-14 10:03[ SF

オプションディーラーの視点 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

■BTCオプション市場の動向
直近1週間のフロントエンド・オプション(オランダの仮想通貨オプション取引所Deribitで9月末までに行使期日を迎えるオプション)の建玉変化を確認すると、11,000ドル(前週比▲332BTC)や、12,000ドル(前週比▲470BTC)のストライクが減少する一方、14,000ドル~16,000ドル(前週比+898BTC)のトップサイド・コールの建玉が増加している事が分かります(添付グラフご参照)。



先週金曜日に8/9行使期日のオプションが落ちたタイミングで、個人投資家によるトップサイド・コールの新規購入(或いはATM近辺の既存足を売却してトップサイド・コールに飛ばす動き)が強まったことが背景と考えられます。事実、12,000ドル以下のオプション建玉が前週比で急減する一方、14,000ドル以上のオプションは軒並み増加しました。つまり、オプション市場における需給は上方向に傾いていると整理できます。Deribitと双璧をなす米国の仮想通貨オプション取引所LedgerXでは、この1週間で8月行使期日の15,000ドル・コールが100BTCトレードされた他、2020年12月(約1年3ヶ月後)行使期日の100,000ドル・コール(日本円で約1,060万円)が複数回取引されるなど、ビットコインの上昇を織り込む動きが足元で広がりを見せつつあります。以前より申し上げている通り、個人投資家によるトップサイド・コールの買いは、マーケットメイカー(MM)によるデルタヘッジの現物買いを通じて、ビットコイン相場を押し上げる効果が期待されますので、今週もオプション市場の動向に注意が必要でしょう(※但し、ダウンサイド・オプションの建玉減少は、相場が下落した際の「買い支え」圧力の低下と言い換えることもできる為、市場の相場観に反してビットコインが下落した際は走りやすくなる点に注意が必要です)。

尚、米LedgerX社が公表する「向こう30日間のインプライドボラティリティ(IV)」は、ここ数日間で急落しました(95.6%→89.6%)。足元では心理的節目となる90%台を割り込むなど、フロントエンド・オプションを投げる動きが確認されます。背景には、注目材料だったビットコインETFの承認可否が延期となったことで、イベントプレミアムの剥落がIVを押し下げたと推察されます。

とはいえ、まだまだ高ボラティリティであることには変わりはありません。スポット前提11,398ドルで計算すれば、IVから逆算した向こう1週間の予想レンジは9,984ドル~12,812ドル(105.3万円~135.1万円)となります。また、ATMデルタニュートラルストラドルのプレミアムで逆算した予想レンジも10,270ドル~12,526ドル(108.3万円~132.1万円)と大きな値動きを織り込んでいる状態です。足元で静かな動きが続いていますが、突発的な乱高下には引き続き注意が必要でしょう。

■リスクリバーサルは市場参加者の傾きを映す鏡
本日はリスクリバーサル(RR)について、少し触れておきたいと思います。リスクリバーサルは、同一delta(≒確率)のアウトオブザマネー・コールと、アウトオブザマネー・プットのIVの差を表しており、市場参加者の相場観が上下どちらに向いているかを測る尺度として注目されます。

Deribitで取引されている9月27日行使期日のオプションを例に挙げると、25deltaコール(25%の確率で到達できるBTC高方向の距離)が15,000ドル(IV94.6%)、一方、25deltaのプット(25%の確率で到達できるBTC安方向の距離)が10,000ドル(IV91.1%)となっており、両者のIVの差である3.5%(94.6%-91.1%)がリスクリバーサルとなります。この例のように、同一deltaのBTCコールのIVが、同一deltaのBTCプットのIVより高い状態のことを、一般的に、「リスクリバーサルがBTCコール・オーバーに傾いている」と言います。尚、25deltaリスクリバーサルを略して25RR、10deltaリスクリバーサルを10RRと記載することも併せて覚えておきましょう。

本稿執筆時点では、25RRが3.5%のBTCコール・オーバー、10RRが6.5%のBTCコール・オーバーとなっていることから、オプション参加者の相場観は「上方向(BTC高方向)」に傾いていると整理できます。リスクリバーサルは、ATMやバタフライと併せて、ボラティリティのスマイルカーブ(別の機会に説明予定)を作る上で重要なファクターとなりますので、日常的にウォッチしておいた方が良いでしょう。

SF

赤色メガバンクの市場部門出身。英国ロンドンでチーフFXオプションディーラー → 東京本部でFXマーケットアナリスト → FinTechベンチャーで取締役チーフアナリスト → FXcoinでPM(現職)。為替一筋17年。G10通貨・新興国通貨・仮想通貨まで幅広くカバー。日本経済新聞社やテレビ東京などマスメディアへの寄稿・出演実績多数。Twitter:https://twitter.com/HelloDerivative

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