2019.8.16【ビットコインに対しアルトコインが不振な訳を考える】

2019-08-16 17:07[ 松田康生

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Review

米中摩擦に翻弄

今週のBTC相場は軟調な展開。米中貿易戦争や香港情勢に振り回されつつも、週を通して値を下げる展開。9月再協議の線で纏まるかに見えた米中問題だが、トランプ大統領が合意の準備が出来ていないとし、中国側も通貨安競争の長期化を示唆したが12000ドル水準での定着に失敗すると反落、VanEck分ほかのETF判断延期もあり値を落としたが、GSが強気の予想を出したことや香港での空港占拠、アルゼンチンペソの暴落などもあり11500ドル近辺で底堅い展開となった。しかし目立った材料がない中、じりじりと値を下げ始めると、米国がスマホやPCなどの追加関税を12月に延期した事から円や金などリスクオフポジションの巻き戻しが始まると、BTCの下げ足を速めていった。独GDPがマイナス成長となり米イールドカーブが不況を示唆する逆イールドとなったがBTCの下げは止まらず、一部で中国で発生した巨額BTC詐欺からの売りが出ているとの噂も出回っている。

Outlook

ステルス緩和不発

来週のBTC相場は底堅い展開を予想する。先週は、米中摩擦に振り回されるも実は中国からのフローは増えておらず、短期のスペックが先回りしたロングのポジション調整や夏休みシーズン本番で出来高が減少する中、マイナーの売りは一定でその分、上値が重くなると予想するも、金融緩和へ関心が移り特に日本のステルス緩和などが効く結果、「上値が重く調整が来そうだが、下がったところは底堅い、横ばい圏での推移」と申し上げた。調整に関してはその通りだったが、日銀は10年債金利が-0.24%と目標水準の下限-0.2%を下回っている状況に鑑み、今朝の買いオペの金額を4800億円から4500億円に若干減額しつつ買い入れ最低金利は設定しないという市場に影響を与えない微妙なさじ加減で乗り切った。この件も含め、金融緩和にあまりフォーカスが当たらなかった事が、今週のBTC相場は下がったところでは底堅さを見せたが、思ったよりもディップが深かった一因かと考えている。      



逆イールド突入

為替やBTC市場は日替わりで状況が変化する米中摩擦動向に振り回されて十分に米金利低下を織り込んだとはいい難いが、債券市場では非常に重要な動きがあった。米2年債と10年債の利回りが逆転したのだ。これは逆イールドと呼ばれ、これが起こると1年から2年後にリセッションが到来するとされている。上図のここ30年以上の動きを見る限り例外は見られていない。この動きは市場関係者をショックに陥れたが、イエレン前FRB議長はこの数字は不況につながらないとした様に多くの人が目を背けた。米株もこの不吉なサインが出た14日には前日比で800ドル急落したが、翌日、下げ止まっている。

ジャクソンホールでの翻意

しかし、ここに一人、見て見ぬ振りが出来ない人がいる。パウエルFRB議長だ。同議長は前回FOMCで25bpの利下げをした際に、これは長期利下げサイクル入りではなく、予防的利下げだとし、トランプ大統領の不興を買った。しかし、市場はすでに議長が否定した9月利下げを100%織り込んだうえに50bp利下げも4割織り込んでいる。このままFOMCで何もしないと市場は混乱し、株が大暴落しかねず、通常は早い段階で市場の織り込みを修正する必要がある。それをせずに容認する場合でも、一旦は連続利下げしないと啖呵を切った以上、修正に至った経緯を説明する必要がある。それが22日から開催されるジャクソンホール(議長講演は23日)だ。このイベントには日米欧(黒田総裁の出欠は不明)など各国中銀や連銀総裁が一堂に会し金融政策を話し合う。議長が翻意を示すに絶好の舞台だろう。

予想レンジ BTC 110万円~130万円

Altcoin



今週のアルトコインは、週前半は軟調なBTCを尻目に概ね横ばい推移も、週後半BTCが下げ足を速めるとアルトコインも総崩れする展開、BTCのドミナンツも7割近くまで上昇している。この背景として、米CTAなど小規模な機関投資家といったBTC中心の投資家が増えた事やデジタルゴールドとしての地位を固めつつあるBTCに対してアルトコインは選別が始まっている事などが挙げられている。要は、アルトのパフォーマンスが悪いのはBTCのせいか、アルトが悪いせいなのか。

上図はこの1年間の主要アルトコインの対BTC価格推移を標準化したもの。これを見ると今年の春頃までは各通貨特有の事情でまちまちな値動きをしていたことが伺える。まずxRapid実用化でXRPが急騰、一方でICOバブルの崩壊でETHが冴えず、分裂騒動でBCHが急落。今年に入ると半減期でLTCが上昇した。ただ4月の初めころからは、ほぼ一貫して下がっている。4月と言えば今回のBTCの上昇が始まった時期で、BTCが上昇したからアルトは不振だと言えるか。ただ、これはコインの裏表でBTCが上がったのはデジタルゴールドとして認知度が上がったからだが、それはアルトの認知度が上がっていない事でもある。例えば、1年前と比べてビットコインという言葉を知っている人は増えただろうが、イーサリアムを知っている人が何人増えただろうか。

もう一つ考えられるのは本邦における証拠金規制だ。証拠金取引は信用創造で、流通スピードを上げることで供給量が増えるので価格の下落要因となる。その倍率の縮小はBTCの価格上昇要因と申し上げた。一方で、この1年でアルトコインの証拠金取引の普及が広がった。これが両者のパフォーマンスの差に表れている可能性はある。要はアルトでショートから入りやすくなった訳だ。

ETH:今週のETH相場は軟調に推移。週前半は目立った材料の無い中、22000円近辺で動意のない展開を続けていたが、BTCの下落に急落すると20000円を若干割り込んで推移している。




XRP:今週のXRP相場は前半堅調だったが、週後半にかけてじりじり値を下げる展開。2018年1月のバブル後の最安値を更新する勢いだ。リップル社CEOがマネーグラムとの提携はリブラより重要としたが、当面実現しないリブラより、今すぐ送金業界を変革する前者の方が重要かもしれない。一方でXpringが少額決済のCoilに10億XRPの補助金支出が発表された。こうした資金は潜在的なXRP売り要因となる。その分、売りを跳ね返すだけの材料を運営側は用意する必要があるが、現時点では市場は不十分と判断している。





BCH:今週の上下に行って来いの展開。ロジャー・バー氏によるエアドロップ機能の紹介および示唆もあり上昇するもBTCの下落に大きく値を下げたが、BTCの反発に値を戻しほぼ先週末の水準に戻している。




LTC:今週のLTC相場は軟調な展開。開発が止まっているとの噂にチャーリー・リー氏が反論、若干値を上げたが、BTCの下落もあり値を下げている。リー氏が指摘する様に、半減期後のハッシュレートが高水準だったため初回の調整でDifficultyが十分に下がらず、2回目で大きく調整したのだが、LTCに比べ調整に4倍要するBTCの場合は2回の調整に4週間を要し、混乱が生じる可能性もあることは来年に向け教訓とすべきか。



FXcoin Weekly Report 2019.08.16.pdf

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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