仮想通貨市場に機関投資家が参入するには (3)

2019-08-19 17:23[ れんぶらんと

金融リテラシーのお話 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

ここまで3回わたって仮想通貨市場に機関投資家が参入するための条件を、4つの視点から説明してきましたが、まとめると以下の通りとなります。

1.十分な流動性    → 昨年12月比で約8倍の取引量が必要。 
2.ヘッジ手法の確立  → スワップ、オプション市場の創設が必要。 
3.安全な保管先    → 米国はすでに開始、わが国でも準備が整いつつある。 
4.法制度・規制の充実 → わが国ではすでに充実。 

前回は機関投資家が仮想通貨市場に参入する条件として、「1.十分な流動性」、「2.ヘッジ手法の確立」が必要であることについて説明しました。今回は「3.安全な保管先」、「4.法制度・規制の充実」について説明します。

3.安全な保管先

5月14日付当欄「仮想通貨市場に機関投資家が参入するには (1)」で、機関投資家とは”個人投資家、企業等の顧客から預かった資金を基にポートフォリオを構築・運用するプロの投資家で、生保、投信、投資顧問、年金基金、信託銀行がそれに該当します。”と書きました。これら預かった資金や資産は多くの場合、資産管理を専門とする信託銀行に保管されます。信託銀行ではこれらの資産を自社の財産とは区別して保管・管理(分別管理といいます)します。

一方で仮想通貨の場合は、わが国においては仮に機関投資家がビットコインなどを購入して資産として保有するための信託銀行は当方の知る限り今のところありません。機関投資家が仮想通貨を購入した場合は、交換所に預けっぱなしにしておくか、自社で独自にウォレットを作成して保有することになります。ただし、機関投資家が顧客から預かった投資資金をこのようなリスクにさらす行動をとるというのは現実的ではありません。

であれば、信託銀行が仮想通貨を預かるサービスを行えば、機関投資家が仮想通貨に投資しやすくなるし、そのサービスをいち早く提供した信託銀行に大きなビジネスチャンスがあるのではと考えたくなりますが、話はそう簡単ではありません。

一般社団法人信託協会の大久保会長は昨年10月の記者会見において仮想通貨の信託について「信託銀行自体の受託のキャパシティ」と「法律上の位置づけが明確でない」ことを理由に、業界としては少し難しいとコメントしています。

前者については、マネー・ローンダリングやテロ資金供与対策等の整備や不正流出に備えてのセキュリティ対策など信託銀行サイドで準備することが山積であることが考えられます。

後者においては、仮想通貨が信託銀行で保管されるためにはそれが信託法上の”財産”であることが条件となるわけですが、現時点ではその整理がついていない(大久保会長 2018年4月) ため、動きづらいというものです。

海外の動きに目を向けると、米金融大手のフィデリティが子会社を設立して今年3月から仮想通貨の預かりを含めた資産管理サービスを開始しています。同社が今年5月に公表した調査によると、22%の機関投資家が仮想通貨などのデジタルアセットをすでに保有しており、47%が将来の投資対象とすることを考えているという結果が出ています。

わが国でも三菱UFJ信託銀行が”デジタルアセット信託事業"として仮想通貨を含む信託事業を検討していることを公表しており、今後もこのようなビジネスを手掛ける信託銀行も増えてくる可能性があります。わが国の機関投資家が安全な保管先を確保するのもそう遠くない将来であると考えられます。

4.法制度・規制の充実

仮想通貨に関する法律といえば、わが国では2017年4月に世界に先駆けて施行されたか改正資金決済法があります。この法律では仮想通貨の定義やそれを取り扱う仮想通貨交換業についての規制が定められました。

また、今年6月に成立した改正資金決済法と改正金融商品取引法においては、顧客資産をネットとつながっていないコールドウォレットなどの信頼性の高い方法で管理することや、証拠金取引を金融商品取引法の規制対象とすることを決められました。これらは他国に比べても進んだ動きであるため、わが国において仮想通貨に関する法制度・規制は充実しているといえます。

加えて、法律(資金決済法第87条)に基づき金融庁が認定する自主規制団体として一般社団法人日本仮想通貨交換業協会があります。この協会は利用者財産の管理などに関する自主規制規則や具体的な取り決めを定めたガイドラインを作成しており、協会に参加する交換業者はこれらに従うこととなっています。

このように、わが国の仮想通貨業界は法制度・規制、そして自主規制団体があることにより、他国と比べて充実した状況にあるといえるでしょう。

まとめ

ここまで3回わたって仮想通貨市場に機関投資家が参入するための条件を、4つの視点から説明してきましたが、まとめると以下の通りとなります。

 1.十分な流動性    → 昨年12月比で約8倍の取引量が必要。
 2.ヘッジ手法の確立  → スワップ、オプション市場の創設が必要。
 3.安全な保管先    → 米国はすでに開始、わが国でも準備が整いつつある。
 4.法制度・規制の充実 → わが国ではすでに充実。

つまり、市場参加者のすそ野が広がり、スワップ、オプション市場が創設されれば、機関投資家が市場に参入しやすくなる、ということになります。

以 上

 

れんぶらんと

17世紀に活躍したオランダの画家レンブラント・ファン・レインの作品をこよなく愛する自称アーチスト。 1980年代後半のバブル期に株式および外貨資産投資を始め、いい思いをしてから投資の世界にどっぷりつかっている。

アーカイブ