• TOP>
  • マーケット情報>
  • ジャクソンホールだけではない。G7サミットのビットコイン相場への影響

ジャクソンホールだけではない。G7サミットのビットコイン相場への影響

2019-08-20 20:25[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

今週はカンザスシティー連銀主催のジャクソンホールでのシンポジウムに注目が集まっている。特に、ホワイトハウスに押し切られる形で利下げした7月のFOMCで、利下げは米中貿易戦争に対する予防的利下げで連続利下げサイクルに入るものではないとしたパウエル議長だったが、市場はすでに9月利下げを100%、更に年内3回以上の利下げを6割織り込んでおり、またトランプ大統領が100bpの利下げが必要としている中、方向転換せざるを得ない状況に追い込まれており、その際のロジックやペースに注目されている。

一方で、若干、影が薄くなっているのがフランスで開催されるG7サミットだ。同国南西部、バスク地方の中心都市バイヨンヌ郊外、ビアリッツという王侯リゾートで開催される。オバマ時代にG20に重点が移り、更に2014年からロシアを参加停止にした結果、G7サミット自体、かなり注目度が下がっている。今回も本来であれば6月前後に開催すべきだったところ、大阪G20が6月末に開催されるため8月に押し出されてしまった経緯にある。そのせいか、日本の開催地を見ても、沖縄、洞爺湖、伊勢志摩と観光案内イベントになり果てた感もある。そうは言っても先進主要国の首脳が集まる意義は大きく、例えば2012年に安倍政権が誕生すると中韓両国はアベノミクスは円安誘導だとG20で避難しようとした。これに対し、当時財務次官だったブレイナード現FRB理事が緊急電話G7を開催、「財政・金融政策が、国内の手段を用いてそれぞれの国内目的を達成することに向けられてきていること、今後もそうしていくこと、そして我々は為替レートを目標にはしないことを再確認する」とG20の中で為替市場を自由化していない両国に当てこする形で援護射撃を行った経緯にある。即ち、重要なことはG20で決めるが、G7は先進国の利益代表的な役割を果たしている訳だ。

今回、仮想通貨市場とのかかわりで言えば、リブラに対する規制が頭によぎる。そこで、前回のG7財務相中央銀行総裁会議でのリブラに対するコメントを抜粋すると「リブラのようにグローバルで潜在的にシステミックな足跡を伴う取組を含め、ステーブルコイン及びその他の現在開発されている様々な金融商品は、深刻な規制上ないしシステミックな懸念とともに、幅広い政策上の課題を引き起こす」とし、「これらの懸念や課題はいずれも、こうした取組が実施される前に対処される必要がある」とし、懸念や課題がクリアされるまで始めてはいけないとしている。規制面では「ステーブルコインのイニシアティブ及びその運用者が、金融システムの安定や消費者保護を脅かすことのないよう、いかなる場合においても、特にマネーロンダリング及びテロ資金供与対策をはじめとする最高水準の金融規制を満たす必要がある」としている。更にG7ステーブルコイン作業部会に上記課題につき検討を深めるよう求め、10月にワシントンで開かれるIMF世銀年次総会までに勧告を含む最終報告を求めている。要は、このままではリブラは始めさせない、ルールの素案を10月に出すからそれまで待つように、という訳だ。勿論、現時点では何も法制化されていないので、この声明にリブラやFB社が拘束されるものではないが、「リブラのような取組が通貨主権や国際通貨システムの機能にも影響しうる」と勝手なことをしないように釘を刺している。従って、財相会議でこう決まって10月に作業部会が素案を出す形になっているので、今回の首脳会談でリブラに対してコメントが追加して出てくる可能性は低いと考える(「」内は財務省HPより抜粋)。

では、今回のG7は何が注目なのだろうか。既に通商問題や気候変動などでの隔たりが大きく共同声明を出さない方向で調整が進められており、これは1975年にサミットが始まって以来、初めてのことだとNHKが報じている。ある意味、歴史的なことなのかもしれない。即ち、先進国間で利害が一致できなければG7として集まる意味はない訳だ。少し似た話なのだが、歴史は常に動いていて、常識はいずれ常識ではなくなる。例えば、トランプ大統領は中銀の独立性を一顧だにしていない。選挙の洗礼を受けていない中銀総裁よりも、直接選挙で選ばれた大統領が優位だという考えが垣間見える。確かに中銀の独立性と言っても英国圏で数十年前から始まった考え方で、例えば中国などは中央銀行は役所の一つ、総裁は長官クラスだったりする。そのトランプ大統領は公然と金融緩和による通貨安競争を口にする。これは、G7の共通認識である、通貨安を金融政策の目的にしない、競争力強化のために通貨安誘導をしないという合意に反するコメントで、その結果、通貨安競争を本格化させる契機となるG7になりかねない。そうであれば、これを契機にBTCに買いが入る可能性は高い。声明として出る訳でないので、そうした見方が広がるレイバーデイ明け頃から本格的上昇が始まると考えている。

松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

アーカイブ