2019.8.23【通貨安競争、本格化?ビットコイン相場の反発始まるか?】

2019-08-23 21:59[ 松田康生

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Review

最後は様子見

今週のBTC相場は横ばい圏でのレンジ取引。11,000ドルトライに失敗するも10,000ドル近辺では底堅さを見せ、概ね10,000~11,000ドルの範囲での取引となった。週末にBakktが9月開始との報に上伸するも続かず10,000ドルでサポートされると、香港デモの拡大やBinanceの地域版Libra、Venusの発表もあり上伸。米大統領の100bp利下げ要求やG7での共同声明見送り報道などもあり11,000ドルトライするも失敗。Huaweiへの猶予期間の90日延長や米国務相のBTC規制発言などで軟調に転じ、更に四川省の洪水で再び急落すると一時10,000ドルを割り込んだ。しかし洪水の被害は限定的との続報やCNHペッグのテザー開発などもあり10,000ドルを回復したが、連日にわたり米大統領が利下げを要求、市場も9月の利下げを100%織り込む一方で、FOMC議事録や地域連銀総裁コメントから連続利下げに消極的な姿勢が浮かび上がると、パウエル議長講演を前に様子見姿勢が強まった。

Outlook

レンジ取引

来週のBTC相場は底堅い展開を予想する。先週は、ジャクソンホールでの金融緩和を材料に底堅い展開を予想したが、確かに10,000ドル水準では底堅さを見せたが、一旦上がって、反落して、底堅さを見せる、やや変則的な展開となった。これは目立った材料がない中、ジャクソンホールへの期待でフライングしたロングが、イベント前に調整にあった形か。ポジション調整が主因であり、それぞれの材料もあくまできっかけを与えたに過ぎないと考えている。

洪水の影響は限定的

そうした中で、四川省の洪水に関しては緊張が走った。今回の報道で改めて認識したのは、BTCのハッシュパワーの5割が四川省由来であることだ。マイニングマシーンもほぼ中国製で、中のチップは韓国製であったりするので、グローバル化の中で気にすべきことではないという考え方もあるが、その国柄故、BTCの地政学的リスクとして認識する必要があろう。幸い、昨年6月27-28日の洪水の後も一旦ハッシュパワーも相場も落ちたがV字回復を見せている。今回は数万円の下落だったが、いずれ反発を迎えると考えている。

ビジネスマン出身のFRB議長

今朝のDailyでも申し上げた通り、市場の注目は本日23時からのジャクソンホールでのパウエル議長講演に集まっている。すなわち、大統領の要求と市場の期待、これらとFRBのスタンスに大きな隔たりがあり、仮にFRBが政治圧力に屈した場合、FRBへの信認は落ち、逆に市場の意向を無視し筋を通したとしても、おそらくは米株・債券とも暴落し市場の混乱を招いたとしてFRBへの信認は落ちるだろう。景気は悪くないと追加利下げに消極的なFRBに対し、トランプ大統領は利下げによりドル高を是正しろと主張していて隔たりが大きい。これはG7の合意事項である、通貨安を金融政策の目的にしない、競争力強化のために通貨安誘導をしないという合意に反している。即ち、法律で物価安定と最大雇用の実現を目標に定められ、通貨安競争に金融政策を使わないとのG7合意に縛られているFRBと、国民の支持、すなわち議会の支持も条件となるが、法律が実情に合わないなら変えればいいし、G7合意も破棄する権限を持った大統領とではそもそもの立ち位置が異なる。以前ご紹介した通り、一時マイナス圏からプラス圏に戻していた米2-10年債スプレッドは再びマイナス圏に突入しようとしている。この逆イールドが示すようにリセッション入りした場合、選挙で選ばれていないFRB議長では責任が取れない。学者出身のバーナンキ・イエレンと異なりビジネスマンであるパウエルはFRBのメンツを守りつつ、大統領の意向も受け入れる、うまく立ち回る方法を出してくるのではないだろうか。

通貨安競争本格化

ここに来てドルインデックスが上昇、まだ韓国ウォンは今年の安値を更新していないが人民元は2008年以来の安値を更新している。こうした中、G7で上記合意が破棄される可能性は低いだろうが、75年来初めて共同声明が見送られればG7の無力が示され、いよいよ通貨安競争が本格化する可能性が高いとみている。BTCの本格的回復はレイバーデイ以降と見るが、来週辺りから反発相場が始まるのではないかと見ている。

予想レンジ BTC 100万円~130万円

Altcoin



今週のアルトコインは、概ね横ばい圏での推移。BTCのドミナンツも70%を前に横ばい推移となっており、全体としてBTCに連れた値動きに終始した。しかし、このところ、BTCの独歩高、アルトコインの不振が目立っている。これを相関係数の面から分析してみた結果が上図だ。上位5通貨のそれぞれに対する相関係数(サンプル20個)を示している。これが0.5を越えれば相関関係があるとされ、1に近いほど相関関係が強くなる。

これを見ると、意外なことにBTCはETH以外の3通貨に対し0.5台とかろうじて相関関係を保っている程度となっている。同じくBTCの相関係数0.75の人民元や0.62の韓国ウォンより関係が薄いこととなる。勿論、この数字は最近の傾向を表すためにデータを直近20個に絞っており、長い期間で見れば人民元などの法定通貨より仮想通貨同士の方が圧倒的に相関係数は高くなる。一方で、アルトコイン同士で見ると、実は高い相関係数を保っており、中でもXRPは0.8台が2つと高い相関関係を見せている。

こうしてみると、デジタルゴールドとしての地位を確立したBTCがアルトコインを引き離しにかかっている姿が垣間見え、BTCプラスワンとしてETHが何とか付いて行っている構図が浮かび上がる。そしてこのところパフォーマンスが悪いXRPだが、ETHがBTCを追随する中、アルトコインの代表格として機能していることが分かる。すなわち、アルトコインの不振は、アルトコインの淘汰という側面もあるが、金融緩和などでBTCが買われる中、放っておかれているだけという事を示しているのかもしれない。中でもXRPの不振は、XRPに問題があって売られているというよりも、単に買い材料が不足しているから買われていないという事なのかもしれない。

ETH:今週のETH相場は横ばい推移。BTCに連れて上昇、下落を繰り返した格好。ただ、材料的にはイスタンブール・アップデートの変更点が承認され一歩前進、楽天ウォレットやディーカレットなどで取り扱いが開始、イーサリアムベースの世銀債が昨年に続き発行、HyperledgerでパブリックチェーンとしてETHの利用が計画されるなどポジティブなものが続いた。それでも上値を重くしたのはバテリック・ブテリンのイーサリアムは殆ど満杯だという発言か。BinanceのCZがそれでも改善しているとコメントしてもブテリン氏は首を縦に振らず、天才故の融通の利かなさのようなものが足を引っ張っている形か。

XRP:今週のXRP相場は横ばい推移。フィデリティーの募金プラットフォームでのXRP受入れ開始やブラジルのサンタンデール銀行のxCurernt採用など明るいニュースが続いた。更に英送金会社Xendpayのリップルネットへの参加やリップル社幹部によるxRapidの使用によりXRPMXN取引の拡大など好材料が続いたが上値が重かった。一部では先日のCoilへの10億XRPの支援が投資家の失望売りに繋がっているとの指摘も聞かれた。

BCH:今週のBCH相場はほぼ横ばい推移。ロジャー・バーと著名ツイッターとの仲間割れや香港デモでの募金への利用など硬軟材料が交錯したが目立った方向性は見られなかった。

LTC:今週のLTC相場は横ばい推移。チャーリー・リーがBTC開発企業カーサへ出資していたと明らかにしたこと以外、目立った材料もなく動意の薄い展開となった。



FXcoin Weekly Report 2019.08.23.pdf


松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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