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【第5回】 オプションディーラーの視点 ~相場膠着はガンマロングが原因か~

2019-08-28 15:08[ SF

オプションディーラーの視点 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン

直近1週間のフロントエンド・オプション(9月末までに行使期日を迎えるオプション)の建玉変化を確認すると、行使価格10,500ドル以下(前週比+1,554BTC)の建玉が増加する一方、行使価格11,000ドル(前週比▲406BTC)以上の建玉が減少する結果となりました(添付グラフご参照)。ビットコイン価格が伸び悩む中、個人投資家を中心にダウンサイド・オプションを物色する動きが広がっている様子が伺えます。

尚、最大ピンは行使価格10,000ドルの3,306BTC、2番目は行使価格8,000ドルの3,253BTC。第2回目のコラムでお伝えし致しました通り、ビットコイン・オプション市場では、1,500BTCを超えると「巨大ピン」としての分類が妥当となります。よって、既に3,000BTCを超えるこれらのオプションは、現物市場に大きな影響を与え得る「超巨大ピン」として警戒しておく必要があるでしょう。




ダウンサイド・オプションの建玉増加の背景
ダウンサイド・オプションの建玉増加の背景としては、第4回目のコラムで示した通り、①個人投資家による「ダウンサイド・プットのネイキッド買い」と、②個人投資家によるターゲット・バイイング(ターバイ)を目的とした「ダウンサイド・プットのネイキッド売り」の双方が考えられます。

①については、ビットコイン価格の下落を見越したシンプルな「プット買い」戦略です。個人投資家によるダウンサイド・プットの買いは、マーケットメイカー(以下MM)によるデルタヘッジの「現物売り」を通じて、ビットコイン価格を押し下げる効果が生まれます。先週半ばにかけて、ビットコイン価格が11,000ドル近辺から10,000ドル割れへと振るい落とされた背景に、こうしたオプション絡みのフローがあったと推察できます。

②については、個人投資家によるターゲット・バイイングを目的とした「プット売り」が考えられます。特に、8,000ドルや9,000ドルなど、実勢相場から離れた行使価格のプット・オプションの建玉増加は、ターゲット・バイイングを目的とした「プット売り」である可能性が高いと考えられます。


個人投資家のオプション・ポジションの類推
以上のことから、個人投資家のオプション・ポジションは、下記のような状態と推察されます。

①10,000ドル近辺にガンマロング
個人投資家が10,000ドルプットをロングにしていることから、10,000ドルを割り込むと、当初は利食い目的の「現物買い」が入り、その後再び10,000ドルを突破すれば利食い目的の「現物売り」が入る状態です。よって、相場が膠着し易くなります。一概には言えませんが、10,000ドル以下では潜在的な3,306BTCの買い圧力、10,000ドルより上では潜在的な3,306BTCの売り圧力が想定されます。

②8,000-9,000ドルエリアにガンマショート(但し、実質的にはニュートラル)
個人投資家が8,000-9,000ドルゾーンにターゲット・バイイングを目的とした「プット売り」を作っていると仮定すれば、当該ゾーンはガンマショートと考えられます。この為、本来であればビットコイン価格が下落するとストップ・セルを誘発し、相場を走らせる効果が生まれます。しかし、当該ポジションが作られた背景がターゲット・バイイングであることに鑑みれば、ストップ・セルが生じる可能性は低いと判断できます。なぜなら、ビットコインの現物を買っても良いと思う水準(指値=行使価格)に合わせてプット・オプションを売却しているからです(詳細は第4回目のコラムをご参照)。従って、個人投資家サイドの8,000-9,000ドルゾーンのポジションは、本質的には「ニュートラル(オプションに絡むデルタ売買の影響が出難い)」であると考えられます。




マーケットメイカーのオプション・ポジションの類推
次に、マーケットメイカー(MM)のオプション・ポジションを類推してみましょう。MM側のポジションは基本的に個人投資家のポジションの裏側となります。

①10,000ドルゾーンはガンマショート
個人投資家のプット買いのカウンターに立っている為、MMのポジションはガンマショートとなります。

②8,000-9,000ドルゾーンはガンマロング
個人投資家のターゲットバイイングを目的としたプット売りのカウンターに立っている為、MMのポジションはガンマロングとなります。

つまり、マーケットメイカー側のポジションは、実勢相場近辺(10000ドル前後)にガンマショート、ダウンサイドにガンマロングを有していると考えられます。本来であれば、ガンマショートを有する10,000ドル付近を大きく割り込んでくると、MMはビットコイン価格の下落に合わせて現物売り(ストップ・セル)を行う必要性が出てきますが、8,000-9,000ドルゾーンにガンマロングを有していることで、その切迫度合が軽減します。つまり、ダウンサイドのガンマロングをバックに、デルタのロスカットを我慢する余裕が生まれるわけです。


オプション市場全体(個人投資家+マーケットメイカー)のポジションの類推
個人投資家とMMのポジションを合成して、現物市場に与え得る影響を考察すると、10,000ドル近辺は純粋にガンマロングと考えられます。10,000ドルより上側では「現物売り」圧力が加わり、10,000ドルより下側では「現物買い」圧力が加わる状態です。結果として、ここ数週間見られたように相場が膠着し易くなります。また、市場がガンマロングであることを証明する方法として、インプライドボラティリティの低下が挙げられます。事実、米LedgerX社が公表する期間30日のビットコイン・インプライドボラティリティはここ数日で急低下しています(下記チャートをご参照)。つまり足元のビットコイン相場の膠着は、オプション市場におけるガンマロングが原因である可能性が考えられます(あくまで筆者の類推です)。ガンマロングから脱する為には、インパクトの強い材料が必要となります。当方では9/23のBakktローンチがその引き金になると期待しております。

SF

赤色メガバンクの市場部門出身。英国ロンドンでチーフFXオプションディーラー → 東京本部でFXマーケットアナリスト → FinTechベンチャーで取締役チーフアナリスト → FXcoinでPM(現職)。為替一筋17年。G10通貨・新興国通貨・仮想通貨まで幅広くカバー。日本経済新聞社やテレビ東京などマスメディアへの寄稿・出演実績多数。Twitter:https://twitter.com/HelloDerivative

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