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2019.9.2【食欲の秋、投資の秋。何故ビットコインは秋に買われるのか?】

2019-09-02 23:00[ 松田康生

Monthly Report 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン ビットコインキャッシュ イーサリアム リップル ライトコイン



Review

10,000ドルの攻防

8月のBTC相場は横ばい推移。特に後半は10,000ドルを中心に揉み合う展開となった。米25bpの利下げに続き、中国の北戴河会議に合わせてか3000憶ドル分の対中報復関税第4弾、更にドル人民元が7を超えると為替操作国認定をするなど米国が矢継ぎ早にカードを切る中、BTCは130万円台まで上昇。しかしVanEck分のETF判断の再延期や一部輸入品の関税引上げの12月への延期もあり急落。中国からのフローが細っているとの指摘も見られた。100万円近辺でサポートされるとBakktが9月23日に開始するとの報や一時参加者の減少が報じられていた香港デモが170万人規模に拡大したことも有り値を上げるも出来高が減少する中、116万円で反落。ジャクソンホールでの追加利下げ示唆、オフショア人民元が急落するなど買い材料に上昇するも上値が重く、クレイグ・ライト氏敗訴により相続税支払い売りに対する懸念もあり、一時100万円を割り込んだ。

Outlook

想定通りの展開だったが

先月は「底堅いが上値も重い、揉み合い推移」の展開をとし「夏枯れ相場でマイナーの売りが上値を重くする一方、下がったところは押し目買いが出やすい」と予想した。実際8月のBTC相場は130万円まで上昇したが100万円まで反落。その後も上値は重く、下値も堅い展開が続いた。アノマリー的に5か月以上の連騰の後は、6回中5回までが1か月の反落後に反発していたこともあり若干の上昇を見ていたが、小幅下落という結果となった。しかし「本格的な回復相場は米国が戻ってくる9月のレイバーデイ明け」と申し上げた通り、今週にも8月初めにつけた110万円をトライするものと考えている。

アノマリー的にも上

上図の黒枠で囲んだ部分がBTCが5か月(黒字)ないし6か月(黄色字)連騰した期間だ。その6回のうち5回までが反落は1か月で、残り1回も2か月で反発している。そもそも8月は税金支払い売りがある3月と並んで上り難い月だ。9月は半々だが、10月、11月とパフォーマンスが向上する。この傾向は株などにも共通していて、感謝祭と続くクリスマス商戦に向けて財布の紐が緩むせいなのか、あるいは来るべき冬に向け食料を貯めこもうとする本能によるものか、なぜかこの時期になると人間はアセットを買おうとするらしい。いずれにせよ、ここから年末にかけての4か月で、前回の高値150万円を上抜け、200万円をトライするというのは、6月のピークを超えるのに約半年を要すとした修正年間見通しとも整合的だ。いわばBTC相場のクセだと考えている。

買い材料が続く

9月のBTC相場は堅調な展開を予想する。米中相互関税引上げから始まった9月だが、BTCにフローが流れるイベントが続く。金融政策では12日のECB理事会での大規模緩和が噂され、17日の米FOMCでも利下げが確実視される。10月1日の建国70周年までに香港情勢を落ち着かせたいとされる中国だが、その前の11日から香港で予定されている一対一路サミットをどうするかという問題がある。クレイグ問題は気がかりだが23日にはBakktも開始され、BTCの買い材料に事欠かない。

予想レンジ:95万円~135万円


Topic

意外と不発だったかもしれない中国からの買い。ビットコイン相場のフローの分析。
5月に同じくトランプ大統領が2000憶ドル分の関税を10%から25%に引き上げるとした際には中国からの逃避買いが相場上昇を演出した。人民元建てステーブルコインQC(Qcash)の出来高に表れている。しかし、7月後半から8月上旬に向け、QCの出来高はあまり増えていない。8月の米中摩擦激化により、5月の例を経験した中国以外の投資家が先回りして買いに走ったケースもいくらかはいると考える。そうしたポジションはいずれ売りに転じることから、ごく短期的には上値が重くなると見ている。
なぜ昨日からビットコインキャッシュだけ買われているのか?
米中摩擦の緩和、お盆シーズンで出来高減による閑散に買い無し状態など仮想通貨相場全体が上値を重くする中、13日頃からBCHのパフォーマンスが目立っている。背景には11月のアップデートへの期待もあるが、ロジャー・バー氏がBCHによるエアドロップの実施方法を解説、自らも実施を示唆した事から一時的に買いが入ったものか。従って、この上昇は一過性のものと考える。
ジャクソンホールだけではない。G7サミットのビットコイン相場への影響
金融市場ではジャクソンホールでのシンポジウムに注目が集まっているが、続いて週末に開催されるG7サミットにも注目が必要だ。リブラに関しては10月に作業部会が素案を出すことになっており、今回出てくる可能性は低い。むしろ、今回は何も合意できない事により、G7の共通認識である、通貨安を金融政策の目的にしない、競争力強化のために通貨安誘導をしないという合意に反するコメントで、その結果、通貨安競争を本格化させる契機となるG7になりかねない。これを契機にBTCに買いが入る可能性は高い。声明として出る訳でないので、そうした見方が広がるレイバーデイ明け頃から本格的上昇が始まると考えている。
速報、四川省洪水でマイニングに被害。ビットコイン急落も一時的か?
朝方に11000ドルトライに失敗したBTC相場だが、お昼過ぎに10500ドルの水準を下抜けると10000ドル近辺まで急落、マイニング施設が集中する中国四川省で洪水が発生、一部マイニング施設が流されているSNSの画像が紹介されている。弊社はハッシュパワーがBTCを価格を決定するという立場は採らないが、月に入ってのBTC相場は米中問題激化を理由に買い上げたが、中国からのフローが続かず不発。Bakktの9月開始も思ったほどの買い材料とならず、次はジャクソンホールでの利下げ追認かと先回りしたロングポジションが切らされるきっかけに、今回の洪水がなったに過ぎないと考えている。ただ、9月2日の次回Difficulty調整までは承認遅延など混乱が続く可能性があり注意が必要か。
G7サミットで見えた?ビットコイン相場の9月の反騰
G7といえばサミットにせよ財相中銀総裁会議にせよ、発表される共同コミュニケにおける為替に関するコメントを探すことが風物詩となっている。かつては人民元に関するコメントによりドル円が1週間で7円動いたことも有る。2013年頃より「通貨の競争的切下げを回避し、競争力のために為替レートを目標としない」ことが毎回謳われているが、それはこの合意が非常に弱く、また施政者にとって通貨安競争の誘惑が強いからだ。米大統領は再三にわたり競争力回復させるためにドル高を是正し、その為にFRBに利下げを求めてきたし、少なくとも7月にFRBもそれに応えてしまったが、そのことに歯止めをかけることに失敗している。今回のG7サミットでも現行のコミットメントを破っていいとも、通貨安競争を解禁したとも、言ってはいない。ただ、毎回何らかの形でコミットしているのに変に文章を出してそこに記載しないと、今回コミットはしなかった、出来なかったと市場が解釈することも可能となる。

Altcoin


上記は主要通貨の出来高を今年1-3月の平均を1として、その後、どれだけ増えて、足元減ってきたかを示している。BCHは倍率が大き過ぎ、他の通貨の現況が見え難くなっているので除いている。これを見ると4月に2倍程度だったものが5月から6月と大きく伸び、それが8月後半に減って、1倍台に戻している様子が伺える。8月後半の相場の低迷の一因だ。その中でもXRPの上昇と、その後の減少が目立っている。これを見ると、特に8月に入っての低迷は出来高の減少によるところが大きいと言えよう。これをリップル社の売り圧力と見るか、投資家の買いが細ったと考えるか。ただ、気になるのは5月半ばや6月下旬とXRPの出来高が飛躍的に伸びており、XRP価格も上昇したが、その後、さえない値動きとなっている。リップル社は独自のルールにより売却額を決めているとしているが、もし価格が上昇、もしくは出来高が増えたときに、売却額増やすルールにしていると、よほどのことがない限り相場の上抜けが難しいこととなる。この点については別稿で分析することにしたい。

ETH:8月のETH相場は上値の重い展開。BTCプラスワンとしてアルトコインの不振の中、比較的BTCとの相関を増していたETHだが、夏枯れで仮想通貨全体の動意が細る中、上値の重い展開が続いた。また、夏場でETHのユースケースを示すヘッドラインが少なかった事も上値を重くしたか。今月は、ETHのスケーラビリティーが話題となり、その結果、テザーの取引活発化、すなわちETHの有用性の向上が寧ろ容量逼迫要因として嫌気される事態を読んでいる。この一因はブテリン氏のスケーラビリティーへの不満やイスタンブールなどアップデートの遅延が挙げられる。ただ、9月に入ればBTCへの逃避買いが復活することが予想され、ポジティブなヘッドラインも期待され、基本的にETHは底堅い展開を予想する。

XRP:8月のXRP相場は上値の重い展開。マネーグラムによるxRapid増収アピール、サンタンデール銀のxCurrent利用、米銀の初めてのリップルネット参加など好材料が続いたが、相場の上値は重く、一部の投資家がリップル社に対し売却中止を求め、それに対しリップル社のCEOが反論するという事態に陥っている。何よりも投資家の不満に油を注いだのは元CTOが設立したスタートアップCoil社への10億XRPの助成金だろう。リップル社の売却自体に非難が集中しているが、マイニング報酬の代わりに一定額を売却してXRPの有用性を高める費用に充てるという考え自体はそう違和感はない。中央集権的トークンであれば大なり小なり似た構造をもつだろう。問題は、通常の企業では売上げや収益、株価により企業活動の是非が評価されるのに対し、同社の売却にはそうした牽制が働いていない。少なくとも市場参加者の多くが現状に満足していない事を相場は物語っているだろう。

BCH:8月のBCH相場は上値の重い展開。ロジャー・バー氏による交換所設立やエアドロップ、11月15日の次回アップデートへの期待などもあり比較的か堅調に推移したが、クレイグ氏の敗訴の影響もあり、月末にかけ値を崩した。同氏は、判決通りに55万BTCを原告に引き渡し、その40%が納税売りとなってもBCHは適用外との趣旨を述べている模様だが、裁判所でも証言が採用されなかったように、同氏に関しては何が真実か判断がつかず、漠然とした不安となっている。

LTC:8月のLTC相場は軟調な展開。半減期までの上昇を受け、反落した形。エアドロップなどもあり半減期まで堅調に推移、報酬半減後もしばらくは下げ渋っていたハッシュレートが初回の難易度調整を経るごとに下がっていくと価格も下落、4月の安値65ドル水準で何とかサポートされている。







松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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