JVCEAの統計資料を読み解くと、XRPの不振の原因も見えてくる?

2019-09-11 18:53[ 松田康生

トピック 仮想通貨 暗号資産 ビットコイン リップル

昨日、日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)から国内仮想通貨交換業者の統計情報が公表された。今年2月に試験的に昨年末の詳細な情報が公表されて以来、7か月ぶりの満を持しての公開だったが、月次のデータも整備されるなど非常に有用で、協会には是非、毎月の公開をお願いしたいところである。信頼できるデータが少ないことがこの業界の課題の一つで、こうした動きが世界に広がることを切に願うばかりだが、日本から率先してこうした動きが出ることは喜ばしい。以下では、今回のデータを紐解きここ数か月の仮想通貨市場を振り返りたい。尚、特に断りがない限りJVCEAのHPのデータを参照している。


まず、各マスコミのヘッドラインを飾ったのが通貨別の預かり残高で1位だったXRPをBTCが逆転したことだ。第1図を見ると昨年12月時点ではオレンジのXRPが1000憶円弱だったのに対しBTCは600憶円強と劣後していたが、4月に約900憶円で並ぶと5月以降抜き去っている。これはBTC価格が上昇したのに対しXRP価格はむしろ下落している事が主因で、第2図の12月末を1とした数量ベースの増減を見ると、むしろXRPは残高を増やしている。

一方、出来高で見ると大きな動きが観察される。第3図を見ると昨年12月時点では共に月間3000憶円強と互角だったBTCとXRPとの出来高だが、7月時点ではBTCが7000憶円近くに達しているのに対し、XRPは750憶円程度と12月の1/4にまで減少している。この間、BTCは42万円から110万円に上昇、一方でXRPは42円から35円に下落している。その結果、これだけの出来高の差に結び付いたとの見方も出来るが、むしろ、この出来高の差が相場に影響しているのではないだろうか。即ち、昨今ではリップル社の売り圧力がXRP不振の主因として槍玉に挙がっているが、むしろ売り圧力は一定なのに、XRP人気が高い(かった?)日本での出来高の急減がこの冴えないXRP相場展開に繋がっている可能性が高い。この急減の背景はこの数字だけを見ても分からないし、やはり同社の売りが嫌気されているのかもしれないが、今になってその売りを主因と考えるのにはやや違和感がある。ただ、それだけの資金を得たはずの同社がそれに見合うヘッドラインを供給しきれていない、そう相場は採点を下している事には変わりはない。

BTCの出来高が急増している背景には証拠金規制が挙げられる。第3図は現物のみ比較しているが、第4図ではBTCの出来高を証拠金取引と現物取引を合わせて表示している。自主規制ルールでレバレッジ倍率の上限が25倍から4倍に引き下げ、最大手のbitFlyer社が5月28日から新規発注分を、7月30日には既存分も含め4倍に引き下げた結果、証拠金取引の出来高が1/4に減った一方で現物取引は増加、この結果、全取引における現物取引の出来高の割合が5%前後から20%強に上昇している。

今回のデータではその証拠金取引の建玉(ポジション)の推移も教えてくれる。今回は8か月間と比較的データ数が少なく、3月以外はロングがショートを上回っており傾向といったものは読み取り難い。ただ、まず証拠金取引の建玉に差があるという事は、その差額を交換所が自己ポジションで埋めている事を示唆しており、その額も多い時で100億円近くに達している事が分かる。交換所もこれだけのリスクを抱えきれないだろうから、どこかでヘッジを行っていると思われる。海外の証拠金取引でヘッジしている場合はいいが、現物でカバーする場合にはどこからか現物を借りてくる必要がある。かくして、BTCの貸借市場が拡大していくのも時間の問題かもしれない。また、レバレッジ規制後も建玉自体にはあまり影響がないどころかむしろ増えている。

最後に第6図で口座数の推移を挙げたが、変化がやや見難い本邦交換業者が新規営業を活発化させた3月以降で全口座数で15万口座、稼働口座数で9.5万口座増加しており、まだ増勢は止まっていない一方、爆発的な普及拡大とまでは至っていない。稼働口座数を全口座数で割った稼働率がほぼ63%近辺で安定していることも興味深い。

繰り返しになるが、こうした信頼できる統計からは様々な事が読み解くことが出来て有用であるばかりでなく、市場の透明性を向上させる上でも欠かせない。特に不確かな情報が行き交う仮想通貨業界では猶更だ。経済指標の様にJVCEAが毎月定時に発表する様になれば、大きな第一歩だと考える。



松田康生 (まつだやすお)

シニアストラテジスト

東京大学経済学部 国際通貨体制専攻 三菱銀行(本部、バンコック支店)ドイツ銀行グループ(シンガポール、東京)を経て2018年7月より現職。 短国・レポ・為替・米国債・欧州債・MBSと幅広い金融市場に精通

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